「ベジタリアン又はヴィーガンに適した加工食品」の日本農林規格が制定されました

By | 2022年10月12日

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2022年9月6日に公表された「ベジタリアン又はヴィーガンに適した加工食品」JAS規格をはじめ、「プラントベース食品(代替肉、代替乳等)」の表示とこれに関連する「クリーンラベル(天然、添加物不使用、遺伝子組換え不使用等)」について日本の関連基準を整理のうえ、海外各国の動向についてお伝えします。

 2022年9月6日、ベジタリアン又はヴィーガンに適した加工食品の日本農林規格(以下「JAS規格」)が制定されました。同日に農林水産省ホームページのJAS一覧に追加されていますので、以下に概要と表示上のポイントを整理してみたいと思います。

背景と概要


 2021年5月頃にJAS規格化に向けた検討(検討主体:認定特定非営利活動法人 日本ベジタリアン協会)を開始し、その後2022年6月のJAS規格案の意見募集を経て、現在の制定に至ります。ベジタリアン又はヴィーガンに適した加工食品の「規格」の制定に合わせて、「認証の技術的基準」「検査方法」が示されています。規格には、「卵及び乳製品を摂食するベジタリアンに適した加工食品」「卵を摂食するベジタリアンに適した加工食品」「乳製品を摂食するベジタリアンに適した加工食品」「ヴィーガンに適した加工食品」の4食品の要件が定義されています。

各食品の基準(箇条4)


 同規格より、各食品の定義を整理すると以下のようになります。

  卵及び乳製品を摂食するベジタリアンに適した加工食品 卵を摂食するベジタリアンに適した加工食品 乳製品を摂食するベジタリアンに適した加工食品 ヴィーガンに適した加工食品
4a)   ・動物由来の 1 次原料及び2 次原料(2 次原料における加工助剤については、動物の骨炭及び甲殻類から得られるキトサンに限る。)を用いてはならない。
・ただし、1 次原料及び 2 次原料に限らず、いかなる段階における原材料及び添加物について、動物由来であることが当該原材料及び添加物の名称等から容易に判断される場合にあっては、当該原材料及び添加物を用いてはならない。
動物由来のうち、用いることのできる原材料 動物の卵又はその加工食品

×

×

動物の乳又はその加工食品

×

×

蜂蜜又は蜜蜂製品(蜜ろう、プロポリス等)

×

ラノリンを含む羊毛脂

×

4b)

上記食品に関するいかなる動物試験も製造業者等によって実施されていてはならない。
※「〇」の箇所は、その成分又はその派生物を含む

原料受入及び保管、製造について(箇条5)


 同規格より、生産行程管理に関する基準を整理すると以下のようになります。

 

卵及び乳製品を摂食するベジタリアンに適した加工食品 卵を摂食するベジタリアンに適した加工食品 乳製品を摂食するベジタリアンに適した加工食品 ヴィーガンに適した加工食品
1次原料の受入れ及び保管 調達した1次原料の受入れ時に、各食品の4a)を満たしていることの根拠を入手し、4a)を満たしていない原材料及び添加物と混合しないよう区分して管理されなければならない。
製造 ・各食品に適さない原材料及び添加物の意図せざる混入を防止するため、適切な予防処置が講じられていなければならない。
・各食品に適さない原材料又はこれを使用した加工食品を揚げた油が使用されていてはならない。
・各食品に適した加工食品の製造ラインが、各食品に適さない加工食品の製造と共用である場合は、各食品に適した加工食品の製造開始前に十分な洗浄が行われていなければならない。これは、関連する機械、機器、用具及び原材料が接触するあらゆる表面にも適用される。

表示について(箇条6)


 同規格より、表示に関する基準を整理すると以下のようになります。

用語

“卵・乳製品摂食ベジタリアン”

“卵摂食ベジタリアン”

“乳製品摂食ベジタリアン”

“ヴィーガン”
“ベジタリアン”
表示事項 ・上記の用語を表示する場合は、箇条4(ベジタリアン又はヴィーガンに適した加工食品に関する基準)及び箇条5(ベジタリアン又はヴィーガンに適した加工食品の生産行程管理に関する基準)の該当する要求事項を満たさなければならない。
・各食品に適さない原材料及び添加物の意図せざる混入の可能性がある場合であっても、適切な予防処置が講じられた場合には、上記の用語を表示してよい。
・各食品に適さない原材料及び添加物の意図せざる混入の可能性に基づくアレルゲンの注意喚起を表示する場合であっても、上記の用語を表示してよい。
表示方法 上記の用語を表示する場合は、動物由来の類似の加工食品との区別を容易にするため、加工食品の商品名と同じ視野に入るように表示しなければならない。
表示の方式等 -(設定なし)
表示禁止事項 -(設定なし)
※これらに類似する意味の用語を含む

今後の国際的な動向にも注視


 なお、2021年3月にベジタリアン又はヴィーガンに適した食品の国際規格(ISO 23662:Definitions and technical criteria for foods and food ingredients suitable for vegetarians or vegans and for labelling and claims)が発行されており、今回のJAS規格制定の参考となっています。
 一方で「プラントベース」、「プラントベースドフード」などの用語については、パブリックコメントの結果において、「国内にも国際的にも定義が存在しておらず、今後の国際的な動向も注視し対応する」とされています。ベジタリアン又はヴィーガンに適した食品に関する用語はもとより、プラントベース(植物由来)など関連する用語の表示を検討する際にも、まずは今回のJAS規格から確認されるとよいでしょう。

現時点での参考情報として、「プラントベース食品等の表示に関するQ&A(消費者庁)」では、「本Q&Aでいう「プラントベース(植物由来)食品」とは、主に植物由来の原材料(畜産物や水産物を含まない。)で肉などの畜産物や魚などの水産物に似せて作った商品をいいます。動物由来の添加物が含まれている場合でも、主な原材料が植物由来である場合は、「プラントベース(植物由来)食品」に含めることとします。」とされています。

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川合 裕之

川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2023年12月『食品と開発』(健康メディア.com)「海外の栄養プロファイリングシステムと栄養表示制度」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

>> 寄稿の詳細はこちら

【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

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