「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」の啓発チラシ・ポスターが発表されました

By | 2022年8月9日


 先月のことではありますが、消費者庁が「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」の啓発チラシ・ポスターを同庁ウェブサイト上で発表しています。合わせて「10類型イラスト」も掲載されていますので、今回のコラムはこれらを取り上げてみたいと思います。

 啓発チラシ・ポスターは、2022年6月22日に発表されています。消費者向けに作成されたものではありますが、具体的な表示例もあることから、食品を製造する方にとっても同ガイドラインの理解に役立つと言えると思います。ただし、この啓発チラシ・ポスターには「片面」版と「両面」版の2種類があり、使用されているイラストの内容に少し違いがあります。まずは記載された3つの例より分かることを整理したいと思います。

啓発チラシ・ポスター(片面)

啓発チラシ・ポスター(片面)


啓発チラシ・ポスター(両面)

啓発チラシ・ポスター(両面)

  1. いちごジュースの例
    • 何を添加していないのかが不明確な場合は、ガイドラインに抵触するおそれがある。
    • 例1として、着色料や着色料と類似機能をもつ原材料・添加物を使用していない場合は、「着色料無添加」等と表示できる。(ただし、クランベリー抽出エキスなどは「着色料と類似機能をもつ原材料」に該当する。)
    • 例2として、『ジュースの赤色はいちごそのものの色です』等と表示できる。
  2. ドーナツの例
    • 人工甘味料不使用の表示は、ガイドラインに抵触するおそれがある。
    • 例1として、甘味料や甘味料と類似機能をもつ原材料・添加物を使用していない場合は、『甘味料不使用』等と表示できる。(ただし、カンゾウ抽出物などは「甘味料と類似機能をもつ添加物」に該当する。)
    • 例2として、『ラカンカという植物から抽出した甘みを使っています』等と表示できる。
  3. おにぎりの例
    • 酸化防止剤を使用した食品に「保存料無添加」の表示は、ガイドラインに抵触するおそれがある。
    • 例1として、保存料や保存料と類似機能をもつ原材料・添加物を使用していない場合は、『保存料無添加』等と表示できる。(ただし、酸化防止剤やpH調整剤などは「保存料と類似機能をもつ添加物」に該当する。)
    • 例2として、『保存効果を持たせるため、酸化防止剤を使用しています』等と表示できる。

 なお、この啓発チラシ・ポスター内では、例1(不使用表示)と例2(同一機能・類似機能を有する原材料又は食品添加物)が共に明示される可能性までは言及されていません。

 2022年11月頃、啓発チラシ・ポシターの内容に修正がありました。主な修正点は、以下のとおりです。

  • いちごジュース 例2『ジュースの赤色はいちごそのものの色です』を削除
  • ドーナツ 例2『ラカンカという植物から抽出した甘みを使っています』を削除
  • おにぎりから「※酸化防止剤やpH調整剤など」を削除

 次に、「10類型イラスト」の資料にも具体例が掲載されているものがありますので、こちらに抜粋してみたいと思います。


 おにぎりの例では、「日持ち向上効果が期待されるグリシンが使用されている」食品に、「保存料無添加」と表示することは、類型4(同一機能・類似機能を持つ食品添加物を使用した食品への表示)に該当するとされています。ガイドラインの説明では『日持ち向上目的で保存料以外の食品添加物を使用した食品に、「保存料不使用」と表示』のみであったことから、具体的な例としてグリシンについては注意が必要である(保存料と類似機能をもつ添加物に該当する)ことが分かります。

 また白だしの例では、「アミノ酸が主成分である酵母エキスが使用されている」食品に、「調味料(アミノ酸等)無添加」と表示することは、類型5(同一機能・類似機能を持つ原材料を使用した食品への表示)に該当することが分かります。ガイドラインの説明では『原材料として、アミノ酸を含有する抽出物を使用した食品に、添加物としての調味料を使用していない旨を表示』のみであったことから、具体的な例として酵母エキスについては注意が必要である(調味料(アミノ酸等)と類似機能をもつ添加物に該当する)ことが分かります。

 啓発チラシ・ポスターや「10類型イラスト」より、添加物不使用に関する表示をしようとする際に注意すべきポイントは「何が無添加なのか、何が使われているのかを明確にする」ことであるといえます。今後の表示の見直しに向け、以下の参照URLより一度確認されておかれるとよいと思います。


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川合 裕之

川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2023年12月『食品と開発』(健康メディア.com)「海外の栄養プロファイリングシステムと栄養表示制度」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
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