酒類表示の国際規格化:食品規格への統合と視覚化対応の動向

By | 2026年5月8日

 長年にわたり、酒類は各国の法体系において「文化遺産」や「嗜好品」としての特殊性を認められ、原材料や栄養成分の表示が免除されてきました。しかし2026年現在、主要市場において酒類を一般食品の表示規格に統合する動きが進んでいます。輸出実務においては、各市場の要件を個別に把握したうえで対応する必要があります。

米国(Alcohol and Tobacco Tax and Trade Bureau (TTB)/Food and Drug Administration (FDA))

 2026年3月公表の指針により、ABV 0.5%未満の製品はTTBの管轄から外れ、FDA管轄のノンアルコール製品として再分類されました。これに伴い、一般食品と同等のカロリー・原材料表示が義務付けられます。ABV 0.5%が管轄の分岐点となるため、該当製品の分類確認が必要です。

欧州連合(EU)

 規則2021/2117および2026/471に基づき、ワイン製品(脱アルコール製品を含む)への食品表示規格(規則1169/2011)の適用が義務化されました。原材料および栄養成分の表示が必須です。ビール・蒸留酒は現時点で対象外ですが、欧州委員会は酒類全般への透明性強化方針を維持しています。

オーストラリア・ニュージーランド(Food Standards Australia New Zealand)

 提案P1059により、全アルコール飲料へのエネルギー表示義務化が最終段階に入っています。2028年8月の完全義務化に向けた移行期間に入っており、施行後は一般食品規格(Food Standards Code)の枠組みに基づく表示対応が必要となります。

警告表示の視覚化

 成分情報の開示と並行して、健康リスクの伝達手段としての視覚的警告シンボルの採用も各市場で進んでいます。英国では、政府推奨の『Portman Group』指針に基づくアルコール単位(Units)とピクトグラムの併用が事実上の業界標準となっており、現在は完全義務化に向けた最終合意が進められています。オーストラリアの三色刷り妊婦禁飲マークや上海市の赤色三角形シンボルを含め、これら仕向け先ごとの規格化された視覚的警告への対応は、輸出実務における重要な課題となっています。

 日本国内では、アルコール度数 1.0度(v/v%)以上の飲料が酒税法の対象となり、未成年者飲酒防止に関する警告表示は国税庁告示に基づく義務表示です。ただし、栄養成分・原材料の表示および妊婦・授乳期の方への警告については法令上の義務はなく、業界団体の自主基準にとどまっています。1.0度未満の製品は食品表示法が適用され、一般食品と同等の表示が求められます。輸出実務においては、仕向け先ごとの義務化要件と自国の枠組みとの差異を、製品設計の早い段階で把握しておくことが不可欠です。

※アルコール度数の測定基準温度は国によって異なります(日本:15℃、米国:約15.6℃、EU:20℃)。通常の製品では実務上の影響は軽微ですが、度数が管轄の境界値付近にある製品については、仕向け先の測定基準を個別に確認することをお勧めします。



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黄 怡寧

台湾出身。微生物学および免疫学を専門とし、主に海外から国内に輸入される原材料や添加物の調査業務のほか、添加物物質名や基準値などの法令検索システム向けデータベース管理業務に従事しています。
趣味は音楽鑑賞と旅行。