Author Archives: 井上 慎也

井上 慎也

About 井上 慎也

上級食品表示診断士。生物化学を専門とし、主に原材料、添加物、表示基準の調査業務に従事しています。FOODS CHANNELにて食品表示コラムを連載(2012年)、各地の産業振興財団イベントにおいて食品表示相談員としても活躍しています。
趣味は自転車。

日本農林規格に新しく「フードチェーン情報公表農産物」が制定されました


 「フードチェーン情報公表農産物の日本農林規格」が令和5年3月30日に制定され、同4月29日をもって施行されました。

背景


 今回のJAS規格は農産物の⽣産から販売までの⼀貫したデータ情報連携基盤「スマートフードチェーンプラットフォーム(SFP)」の構築により可能となった背景があり、海外市場も含めた農産物の競争力の増強が目的に含まれています。有機JAS規格生産情報公表JAS規格等、生産段階の取組の規格はありますが、生産後の流通プロセスを対象とする規格はこれまで存在しておらず、今回が初めてとなります。

対象となる農産物と表示されるフードチェーン情報


 現在、流通行程管理基準が設定されている品目は「レタス」、「メロン」、「ぶどう」の3品目で以下のような基準があります。

品目 事項 流通行程管理基準(概要)
レタス 予冷・低温管理 出荷前:中心温度(0~10℃)
流通行程:配送・保管温度の設定・管理※1
朝採れ 収穫時間:午前0時~午前9時まで
販売:収穫当日まで
メロン 低温管理 流通行程:配送・保管温度の設定・管理※1
衝撃管理 出荷前:輸送箱底面への衝撃緩和が証明された緩衝材の適用
(緩衝材を適用しない場合は許容される衝撃の上限および回数の設定・管理)
湿度保持・追熟抑制管理 流通行程:湿度保持・追熟抑制が行える条件の設定・管理※2
ぶどう 低温管理 流通行程:配送・保管温度の設定・管理※1
衝撃管理 出荷前:輸送箱底面への衝撃緩和が証明された緩衝材の適用
(緩衝材を適用しない場合は許容される衝撃の上限および回数の設定・管理)
出荷前:果房への緩衝材(フルーツキャップ)の適用
湿度保持・防カビ管理 流通行程:湿度保持・防カビが行える条件の設定・管理※2

※1 低温管理できない状況における許容温度と滞留時間の設定・管理を含める
※2 出荷後、小売店まで3日以上の流通行程がかかる場合

 要求事項を満たした上で必要な表示(要求事項・表示は下図参照)を行うことになりますが、特徴としてはフードチェーン情報についてはHPアドレス、QRコード等、外部媒体を利用する点が挙げられます。

(「日本農林規格等に関する法律施行規則の一部を改正する省令」パブリックコメント関連資料より引用)

まとめ


 現時点では対象となる農産物はレタス、メロン、ぶどうの3品目のみですが、今後いちごなど対象品目の拡張に向けた準備が行われる見込みです。
 また、現時点ではこれらを原材料として使用した加工食品の表示については、食品表示基準等では触れられていませんが、同じ特色JAS規格である有機JAS規格については「特色のある原材料」として記載する際のルールが設けられているため、今後どのように扱われるべきか検討がなされるのではないかと思われます。


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「みそ」の日本農林規格が制定されました


 2022年3月31日、農林水産省から「みそ」の日本農林規格(JAS規格)が新規に制定されました。そこで、その内容についてご紹介させていただければと思います。

 意外かもしれませんが、みそについてはこれまでJAS規格はありませんでした。その理由としては、国内の各地には様々な種類のみそがあり、その多様性に対し品質の標準化を図ることが困難だったことが挙げられます。(今回のJAS規格は成分規格は設けられず、みその生産方法について規定した規格となっています。)
 また海外市場に目を向けた際、和食文化の広がり等を受け、みその輸出は増加基調にあり、重点品目と目されていますが、一方でみそを模した海外製品が日本のみそと並べられて販売されている状況や、中国の豆板醤、韓国のテンジャンの製品に「みそ」や「Miso」など、日本のみそと混同を受ける表示がされている実態から、海外においてはみそとはどのようなものかというのが十分認識されていない現状があります。こうした現状の中、日本のみその海外市場における競争力を強化するために、伝統的な生産方法を規定したみその規格の制定を図ったことが今回のJAS規格制定の背景になります。

定義について


 従前より食品表示基準において、下記の定義を満たすことで名称に「みそ」の名前を関して販売することができます。

次に掲げるものであって、半固体状のものをいう。
一 大豆若しくは大豆及び米、麦等の穀類を蒸煮したものに、米、麦等の穀類を蒸煮してこうじ菌を培養したものを加えたもの又は大豆を蒸煮してこうじ菌を培養したもの若しくはこれに米、麦等の穀類を蒸煮したものを加えたものに食塩を混合し、これを発酵させ、及び熟成させたもの
二 一に砂糖類(砂糖、糖蜜及び糖類をいう。)、風味原料(かつおぶし、煮干魚類、こんぶ等の粉末又は抽出濃縮物、魚醤油、たんぱく加水分解物、酵母エキスその他これらに類する食品をいう。以下別表第四のみその項において同じ。)等を加えたもの
※ 以降に「米みそ」「麦みそ」「豆みそ」「調合みそ」が続く

 JAS規格におけるみその定義は記載されている内容は注釈として「半固体状」について「皿に出したときに流れて崩れない程度のもの」と補足などが加えられていますが、食品表示基準と一致しています。そのため、食品表示基準の定義に従いみそとして販売している場合は後述の要求事項を満たすことで、JAS規格の認定を検討できるものと考えられます。
 一方、みそそのものの定義の他、「米、麦等の穀類を蒸煮してこうじ菌を培養したものを加えたもの又は大豆を蒸煮してこうじ菌を培養したもの」いわゆる「こうじ」については日本の伝統的なみその製造工程の根幹となるため、より詳細な定義が設けられ、これが後述の要求事項に関係していきます。

種こうじ
米等にこうじ菌を接種・培養し、生成した胞子(分生子)を付着した米等とともに乾燥させたもの、又は、これをふるいにかけて胞子のみを分離したものであって、こうじを製造する際にこうじ菌を供給する目的で加えるもの

※1 一般的に、前者を“粒状種こうじ”、後者を“粉状種こうじ”という。
※2 種こうじにはでん粉等の賦形剤が混合されることがある。

こうじ
米、麦等の穀類、大豆又はこれらの副産物[ふすま(麬)、ぬか(糠)等]に微生物を繁殖させたもの
ばらこうじ
こうじのうち、米、麦等の穀類を蒸煮したものに種こうじを加え、こうじ菌を培養したものであって、粒状の原形を留めているもの
米こうじ
ばらこうじのうち、米を蒸煮したものに種こうじを加え、こうじ菌を培養したもの
麦こうじ
ばらこうじのうち、大麦又ははだか麦を蒸煮したものに種こうじを加え、こうじ菌を培養したもの
豆こうじ
こうじのうち、大豆を蒸煮したものに種こうじを加え、こうじ菌を培養したもの

※ 粒状の原形を留めているもの(大豆ばらこうじ)と、潰して玉状の塊にしたもの(みそ玉こうじ)がある。

規格表示に求められる要求事項


 みそのJAS規格において、求められている要求事項は以下のとおりです。

使用するこうじ菌
みその生産に用いられるこうじ菌は、Aspergillus oryzaeでなければならない。

こうじ
みその生産に用いられるこうじは、ばらこうじ又は豆こうじでなければならない。

種こうじ及び生産行程中のみその管理
1 種こうじの管理
種こうじは、受け入れた種こうじの管理が開始された時点からみその生産に使用されるまでの間、Aspergillus oryzae以外のこうじ菌を培養したものと混合しないように管理されなければならない。
2 生産行程中のみその管理
生産行程中のみそは、Aspergillus oryzae以外のこうじ菌を培養したもの又はそれを用いて発酵させたものと混合しないように管理されなければならない。

生産の方法
みその定義に適合するように生産されなければならない。

 みそにはAspergillus oryzaeやAspergillus sojae、Aspergillus tamariiなどのこうじ菌が製造に関わりますが、JAS規格ではそのうちの1種のみを指定し、他のこうじ菌が混合しないように管理されることが求められます。

 以上、みそのJAS規格について見てまいりましたが、背景として、海外市場での競争力強化が挙げられていますので、みその輸出などを検討されている場合は、規格申請を検討されてみてはいかがでしょうか。今回の情報がお役に立ちましたら幸いです。


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「食品表示の全体像」について検討が始まりました

 2018年8月30日、内閣府消費者委員会食品表示部会において、「食品表示の全体像」について議論が始まりましたので、こちらにとりあげてみたいと思います。新しい原料原産地表示をはじめ、義務表示が増えてきたために、表示の在り方などあらためて検討がされています。まずは背景からお伝えしたいと思います。

検討の背景


 「新しい原料原産地表示制度検討会」の答申書(2017年8月10日)に記載された付帯意見をきっかけに、2018年5月31日開催の消費者委員会にて議論が了承されたという流れです。

加工食品の原料原産地表示制度にかかる答申書(平成 29 年 8 月 10 日付け)における付帯意見(抜粋)
1.義務表示の増加に伴い、製品上に表示する文字がかなり多くなっている。加工食品の原料原産地表示も含めて、今後、義務化される表示が増えれば、状況は更に深刻化し、消費者が安全性に係わる表示を見落としてしまう要因にもなりかねない。現在の食品表示は製品上への表示が対象であるが、インターネットでの表示を表示制度の枠組みに組み入れて活用する方策検討も含めて、今後、表示の在り方や食品表示間の優先順位について総合的に検討すべきである。

第 275 回消費者委員会(平成 30 年 5 月 31 日開催)において、以下のとおり了承された。

○食品表示を取り巻く現状等について整理しつつ、消費者のニーズにも十分留意した上で、食品表示の全体像について検討。
○この調査審議のテーマについては、例えば、表示事項間の優先順位並びにインターネットを活用した表示の可能性を含むWeb上における情報提供と従来の容器包装上の表示との組み合わせなどが挙げられるが、食品表示の専門的知見が必要なため、専門家が揃っている食品表示部会において検討。

現状の表示事項と区分について


 どのような表示事項が必要であるか、現状を確認してみましょう。日本の表示制度では、以下のような表示事項、区分とされています。

名称 一般的名称。商品名ではない。

原材料名

 アレルギー物質

食品添加物以外の原材料(食品)を重量割合の多い順に記載

卵、乳、小麦、そば、落花生、えび、かに、の7品目は義務表示

添加物

 アレルギー物質

使用した食品添加物、原材料に含まれる食品添加物を記載

卵、乳、小麦、そば、落花生、えび、かに、の7品目は義務表示

内容量 重量(g、kg)、体積(ml、L)、数量(個数等)
賞味期限 年月日で記載。製造者が設定
保存方法 期限設定時の保存方法を記載。開封後の注意ではない
販売者 表示内容に責任を有する者の氏名又は名称及び所在地
製造所 製造者の氏名又は名称及び所在地
栄養成分の量及び熱量 食品単位当たりの熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウム(食塩相当量に換算して表示)の量をそれぞれ決められた単位で記載

(出典:「食品表示に関する資料」(消費者委員会事務局))

「安全性にかかわる主な事項」

  • アレルゲン
  • 消費期限
  • 保存方法
  • L-フェニルアラニン化合物を含む旨

「消費者の選択に資する主な事項」

  • 原材料名
  • 原産地・国
  • 添加物
  • 内容量
  • 食品関連事業者
  • 栄養成分
  • 遺伝子組換え

(出典:「食品表示に関する資料」(消費者委員会事務局))

主な論点について


 具体的にどんな議論をするのかについてですが、こちらは消費者委員会事務局より提示された資料に整理されています。

食品表示の全体像を議論するにあたっての論点(たたき台)

○表示事項間の優先順位
○インターネットを活用した表示
○容器包装上の表示と Web による情報提供の組み合わせ方
○容器包装上の表示におけるデザイン、レイアウト上の工夫
(文字サイズ、マークの活用など)
○外国語表示への対応

 主には「個食化が進み、容器方法が小さくなってきている」「しかし義務表示事項は増えている」「このままでは消費者が安全性に係わる表示を見落としてしまう」といった懸念があり、上記のような論点について議論がされていくことになると思います。

今後の流れ


 8月30日に議論ははじまったばかりで、まずコーデックス規格と日本の表示制度について再確認がされ、第46回は10月10日に開催されました。「わかりやすい表示」に関する議論もされ、「文字サイズ」だけではなく、ユニバーサルデザインなどの工夫についても、他分野の商品や海外などいろいろな事例をもとに今後検討されていくのではと思われますので、食品表示ご担当の方は一度読んでおかれるとよいと思います。

特別用途食品に「乳児用液体ミルク」が追加されました

 2018年8月8日、「特別用途食品の表示許可等について」(平成29年3月31日消食表第188号)が一部改正され、特別用途食品に「乳児用液体ミルク」が追加されました。特別用途食品について再確認できるよう、制度の概要とあわせて改正内容をとりあげてみたいと思います。

改正の背景について


 消費者庁報道発表資料に、改正背景とポイントが掲載されていますので、こちらに抜粋します。

平成30年8月8日
特別用途食品における乳児用液体ミルクの許可基準設定について

特別用途食品の販売に当たっては、健康増進法に基づき、その表示について国の許可を受ける必要がありますが、これまで乳児用液体ミルクについては、母乳代替食品としての用に適する旨を表示するための許可基準が設定されていませんでした。
本日、乳児用液体ミルクの普及実現に向けて、「健康増進法施行令第3条第2号の規定に基づき内閣総理大臣が定める区分、項目及び額(消費者庁告示)」及び「特別用途食品の表示許可等について(消費者庁次長通知)」を改正し、特別用途食品における乳児用液体ミルクの許可基準を設定・施行したので、公表します。

改正のポイント


○ 特別用途食品における乳児用調製乳の区分追加
乳児用液体ミルクの名称を乳児用調製液状乳とした上で、新たに「乳児用調製乳」の区分を追加し、その下に「乳児用調製粉乳」及び「乳児用調製液状乳」の区分を設定。

○ 乳児用調製液状乳の必要的表示事項を規定
当該食品が母乳の代替食品として使用できるものである旨(ただし、乳児にとって母乳が最良である旨の記載を行うこと。)、標準的な使用方法等の必要的表示事項を新たに規定。

○ 乳児用調製乳の許可基準にセレンを追加(平成34年4月1日から適用)
食品衛生法に基づく食品添加物の規格基準の改正に係る検討状況を踏まえ、新たに成分組成の基準に、セレンを追加。

特別用途食品とは


病者用食品、妊産婦、授乳婦用粉乳、乳児用調製乳及びえん下困難者用食品について、特区別の用途を表示されたものをいいます。許可制の表示であり、こちらのマークを貼付することができます。

「特別用途食品とは(消費者庁)」より

  • 乳児の発育や、妊産婦、授乳婦、えん下困難者、病者などの健康の保持・回復などに適するという特別の用途について表示を行うもの。
  • 特別用途食品として食品を販売するには、その表示について消費者庁長官の許可を受けなければならない。
  • 表示の許可に当たっては、規格又は要件への適合性を審査し、許可。

 許可制の表示ですので、消費者庁に申請が必要になります。現在許可されている商品は51商品※ですが、内訳の表を見ると特別用途食品の体系がわかりやすいので、こちらに抜粋します(「特別用途食品表示許可件数内訳(消費者庁)」より)。今回改正の「乳児用液体ミルク」は、以下表の「乳児用調製粉乳」の欄に追加される形となります。

《特別用途食品 表示許可件数内訳》 平成30年8月6日現在

食品群 表示許可件数
病者用食品 許可基準型 低たんぱく質食品 11
アレルゲン除去食品 6
無乳糖食品 4
総合栄養食品 5
個別評価型 8
妊産婦、授乳婦用粉乳 0
乳児用調製粉乳 8
えん下困難者用食品 えん下困難者用食品 12
とろみ調整用食品 0

※アレルゲン除去食品及び無乳糖食品として許可しているもの3件については、それぞれの食品群で計上しているため、許可品数は51件

 これらの発表資料は、消費者庁サイト「特別用途食品 許可制」に掲載されています。制度を通じてこうした食品分類のニーズをあらためて確認できる機会にもなると思いますので、関心のある方は一度目を通しておかれるとよいと思います。

改正食品衛生法が公布されました

 2018年6月13日、食品衛生法等の一部を改正する法律が公布されました。飲食店含むすべての食品事業者にHACCPによる衛生管理の義務化、食品容器包装に使用される物質のポジティブリスト化、特定の成分を含む食品の健康被害情報の届出の義務化など各方面で話題になっていますので、こちらでとりあげてみたいと思います。

改正の背景


 改正の背景は、「食環境の変化」と「国際化」です。前回の食品衛生法の改正から約15年が経過し、世帯構造の変化に伴い、調理食品、外食・中食への需要の増加等の食へのニーズが変化していること、輸入食品の増加など食のグローバル化の進展といった食を取り巻く環境が変化していること。また広域的な食中毒の発生など食品による健康被害への対応や、2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催や食品の輸出促進を見据えた、国際標準と整合する食品衛生管理が求められることなどが、改正の背景となっています。

改正の概要


 これらの背景をもとにした改正の趣旨は、「食環境の変化」と「国際化」への対応、ということになります。改正の概要として公表されているものは、以下のとおりです。

  1. 広域的な食中毒事案への対策強化
  2. 国や都道府県等が、広域的な食中毒事案の発生や拡大防止等のため、相互に連携や協力を行うこととするとともに、厚生労働大臣が、関係者で構成する広域連携協議会を設置し、緊急を要する場合には、当該協議会を活用し、対応に努めることとする。

  3. HACCP(ハサップ)*に沿った衛生管理の制度化
  4. 原則として、すべての食品等事業者に、一般衛生管理に加え、HACCPに沿った衛生管理の実施を求める。ただし、規模や業種等を考慮した一定の営業者については、取り扱う食品の特性等に応じた衛生管理とする。

  5. 特別の注意を必要とする成分等を含む食品による健康被害情報の収集
  6. 健康被害の発生を未然に防止する見地から、特別の注意を必要とする成分等を含む食品について、事業者から行政への健康被害情報の届出を求める。

  7. 国際整合的な食品用器具・容器包装の衛生規制の整備
  8. 食品用器具・容器包装について、安全性を評価した物質のみ使用可能とするポジティブリスト制度の導入等を行う。

  9. 営業許可制度の見直し、営業届出制度の創設
  10. 実態に応じた営業許可業種への見直しや、現行の営業許可業種(政令で定める34業種)以外の事業者の届出制の創設を行う。

  11. 食品リコール情報の報告制度の創設
  12. 営業者が自主回収を行う場合に、自治体へ報告する仕組みの構築を行う。

  13. その他(乳製品・水産食品の衛生証明書の添付等の輸入要件化、自治体等の食品輸出関係事務に係る規定の創設等)

*HACCP(ハサップ)・・・ 事業者が食中毒菌汚染等の危害要因を把握した上で、原材料の入荷から製品出荷までの全工程の中で、危害要因を除去低減させるために特に重要な工程を管理し、安全性を確保する衛生管理手法。先進国を中心に義務化が進められている。

「特別の注意を必要とする成分等を含む食品」について


 これらの改正点のなかで、食品表示担当者の業務に直接的に影響があるものをあげるとすれば、おそらく「3.特別の注意を必要とする成分等を含む食品による健康被害情報の収集」であると思われますが、取扱商品が「健康食品」である場合に限られると考えてよいと思います。

 ただ、「特別の注意を必要とする成分等」は現時点では定められてないことから、念のために今後の発表に注視する必要がある改正点と言えるでしょう。以下に、対象となる食品についての記載を引用します。

「特別の注意を必要とするものとして厚生労働大臣が指定する成分等を含有する食品」

健康被害情報や文献等による生理活性情報を科学的な観点で整理し、薬事・食品衛生審議会や食品安全委員会における専門家の意見を聴き、パブリックコメント等を行った上で、特別の注意を必要とする成分等の指定を行う。
(検討対象となる成分等の例:アルカロイドやホルモン様作用成分のうち、一定以上の量の摂取により健康被害が生じるおそれのある成分等)

輸入食品と輸出食品について


  「7.その他(乳製品・水産食品の衛生証明書の添付等の輸入要件化、自治体等の食品輸出関係事務に係る規定の創設等)」の改正により、今後は輸入と輸出の両面で衛生管理体制が強化されることになります。

【輸入】
輸出国において検査や管理が適切に行われた旨を確認し、輸入食品の安全性を確保するため、HACCPに基づく衛生管理や乳製品・水産食品の衛生証明書の添付を輸入要件化する。

  • 一部の食品にHACCPに基づく衛生管理を輸入要件とする
  • 衛生証明書の添付義務対象食品に、乳、乳製品を追加する(これまでは肉、臓器、食肉製品のみ)
  • 衛生証明書の添付義務を法定化する(フグ、生食用カキを想定)

【輸出】
輸出先国の衛生要件を満たすことを示すため、国・自治体における衛生証明書の発行等の食品輸出関連事務の法規定を創設する。

 海外への輸出について各国と協議を進めるうえで、国際標準と同等の水準の衛生管理体制を構築しておくことが必要となるための改正と思われますので、今後輸出を検討される方は今回の改正(とりわけHACCPに基づく衛生管理)について、確認されておかれるとよいと思います。

今後について


 施行は、「公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日(ただし、1.は1年、5.及び6.は3年)」とされています。食品表示だけでなく品質保証全般を業務とされている方は、改正内容について一度目を通しておかれるとよいと思います。 


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「食品表示法に基づく栄養成分表示のためのガイドライン第2版」が公表されました

 2018年5月11日、消費者庁より「食品表示法に基づく栄養成分表示のためのガイドライン第2版」が公表されました。新しい食品表示基準と同時に公表された同第1版と比べ、大幅に構成が変わっていますので、こちらで取り上げたいと思います。

主な変更点


 第1版は表示値の計算方法や分析方法についてなど「栄養成分表示の設定方法」から説明が始まっている、やや専門的な内容のガイドラインでした。しかし第2版の目次を見ると、「表示しようとする食品はどのような食品か?」など、表現方法から大きく変わっています。

 主な変更は、以下のとおりです。

  • 手順別(対象食品→強調の有無→表示方法→表示根拠)に規則を掲載
  • 成分別(別表第九※、その他)、分類別(加工、生鮮、添加物、一般、業務用)に規則を掲載
  • 含まれる旨や栄養機能食品の基準値など、「食品表示基準」の別表を掲載
  • 詰め合わせ食品や表示可能面積など、「食品表示基準Q&A」の内容を掲載
  • 最小表示の位や有効数字など、通知「食品表示基準について」の内容を掲載
  • ※食品表示基準別表第九に定められている36の成分と熱量

 このように、食品表示基準内の栄養成分に関する記載と別表、そして「食品表示基準Q&A」、通知「食品表示基準について」に記載されている主な規則も盛り込まれており、栄養成分表示の作成やチェックに困ったときの、包括的なガイドラインに変更されたと言えるでしょう。

ガイドラインの構成


 修正されたガイドラインは、以下のような構成になっています。

第1 表示しようとする食品はどのような食品か?

  1. 食品表示基準の対象
    食品表示基準の対象となるものについて
  2. 表示が必要な栄養成分
    (1)食品表示基準に規定される栄養成分
    (2)加工食品、生鮮食品、添加物における栄養成分表示の規定
      
    1. 一般用加工食品
    2. 一般用生鮮食品
    3. 一般用の添加物
    4. 業務用加工食品、業務用生鮮食品、業務用の添加物

第2 栄養強調表示をするか?栄養機能食品として販売するか?

  1. 栄養強調表示
    (1)栄養強調表示の規定

    1. 栄養成分の補給ができる旨及び栄養成分又は熱量の適切な摂取ができる旨
    2. 糖類を添加していない旨又はナトリウム塩を添加していない旨
    3. 栄養強調表示の規定における留意事項

    (2)栄養強調表示をする場合の表示値

    1. 栄養成分の補給ができる旨及び栄養成分又は熱量の適切な摂取ができる旨の表示値
    2. 糖類を添加していない旨又はナトリウム塩を添加していない旨の表示値

    (3)栄養強調表示の表現例

    1. 栄養成分の補給ができる旨及び栄養成分又は熱量の適切な摂取ができる旨の表現例
    2. 糖類を添加していない旨又はナトリウム塩を添加していない旨の表現例
    3. 栄養強調表示の表現における留意事項

    (4)原材料やセットを構成する食品について栄養強調表示をする場合

    1. 原材料について栄養強調表示をする場合
    2. セットを構成する食品について個々のものに栄養強調表示をする場合

    (5)栄養強調表示の基準がない場合

    1. 栄養強調表示の基準がない成分
    2. 業務用食品に栄養強調表示をする場合
  2. 栄養機能食品
    (1)栄養機能食品の規定
    (2)栄養機能食品における義務表示事項
    (3)栄養機能食品における表示値
    (4)栄養機能食品における留意事項
    (5)栄養機能食品の表示が望ましくない食品

第3 適切な方法で表示されているか?

  • 栄養成分表示の方法等
    (1)栄養成分表示の様式(食品表示基準別記様式2又は3)
    (2)表示に用いる名称及び表示の単位
    (3)表示値の桁数

    1. 最小表示の位
    2. 最小表示の位に満たない場合であって、「0と表示することができる量」以上ある場合

    (4)表示の方式等における留意事項

    1. 栄養成分の量及び熱量の表示
    2. ナトリウムの量の表示
    3. 複数の食品が同じ容器包装に入っている場合の表示方法

第4 表示される値は適切か?

  1. 表示値の種類
    (1)表示値の種類

    1. 一定の値による表示
    2. 下限値及び上限値による表示
    3. 上記ア及びイを併用する場合

    (2)「範囲内にある値」の考え方
    (3)許容差の範囲

    1. 許容差の範囲の規定
    2. 栄養強調表示の基準値と許容差の範囲

    (4)合理的な推定により得られた一定の値

  2. 分析により表示値を求める場合
    (1)基本的な考え方
    (2)分析により表示値を求める際の留意事項
    (3)値の変動要因の例

    1. 自然要因
    2. 人為的な要因
  3. 分析以外の方法により表示値を求める場合
    (1)基本的な考え方

    1. データベース等の値を用いる方法
    2. データベース等から得られた個々の原材料の値から計算して表示値を求める方法

    (2)参照するのに適したデータベース等の例
    (3)データベース等の値を参照するのに適切ではない事例

 このように、第1版とは大きく異なる内容となっています。栄養成分表示の義務化に対応しようと、前回のガイドラインを見たものの難しいと感じた方にも、分かりやすくなっていると思いますので、一度確認されてみてはいかがでしょうか。 

【注】2018年5月18日に一部修正がありました。

第4 表示される値は適切か?

  1. 表示値の種類
    (3)許容差の範囲

    1. 許容差の範囲の規定
       『「許容差の範囲内にある一定の値」を表示する場合、販売されている期間中、どの商品を取っても、食品表示基準別表第9第3欄に掲げる方法により得られた値が表示値の許容差の範囲内にある必要があります。』

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糖質、糖類の表示


 2018年3月28日、機能性表示食品の対象成分に糖質、糖類が追加されました。これを受けて、日本の糖質、糖類に関する表示制度を整理してみたいと思います。

栄養成分表示


糖質の表示値は以下の計算式で求めます。(※当該食品の質量を100とした場合)

糖質=100※-(たんぱく質+脂質+食物繊維+灰分+水分)

糖類については、食品表示基準において以下のように定義されています。

糖類:単糖類又は二糖類であって、糖アルコールでないもの

栄養成分表示では、糖類は糖質より1字下げて表示することになります。

炭水化物 g
 糖質 g
  糖類 g
 食物繊維 g

 炭水化物、糖質、糖類、食物繊維すべて単位は「g」であり、最小表示の位は「1の位」です。炭水化物、糖質、糖類については、1の位に満たない場合であって、0と表示することができる量以上であるときは、有効数字1桁以上となります。

 なお輸出入の際は、各国の炭水化物の定義に違いがある点に注意が必要です。

日本 炭水化物=100-(たんぱく質+脂質+灰分+水分) ※炭水化物は食物繊維を含む
EU 炭水化物=100-(たんぱく質+脂質+灰分+水分+食物繊維) ※炭水化物は食物繊維を含まない
アメリカ 炭水化物=100-(たんぱく質+脂質+灰分+水分) ※炭水化物は食物繊維を含む

強調表示


 糖質、糖類に関する強調表示の制度を整理してみました。(食物繊維は含めていません)

表示制度 糖質、糖類に関する基準 表示例
高い旨、含む旨、強化された旨 糖質、糖類ともに基準値なし
含まない旨、低い旨、低減された旨 糖質には基準値なし
(ただし算出の結果が負の値の場合は「0」と表示できる)
糖類に基準値あり
例:含まない旨0.5g未満/100g 等
無糖、糖類控えめ、糖類〇〇%オフ等(低減された旨の表示には基準値の他に、低減割合に関する基準あり)
添加していない旨 糖質には表示基準なし
糖類に表示基準あり
例:糖類に代わる原材料または添加物を使用していないこと、当該食品の糖類含有量が原材料及び添加物に含まれていた量を超えていないこと等
糖類不使用等
栄養機能食品の栄養機能表示
(規格基準型)
糖質、糖類ともに対象外
(規格基準設定なし)
特定保健用食品の許可表示
(個別許可型)
糖質、糖類ともに個別許可事例あり
例:キシリトール、L-アラビノース等
虫歯の原因にならない甘味料、砂糖の消化・吸収をおだやかにする等
機能性表示食品の機能性表示
(届出型)
糖質、糖類ともに対象成分※
例:キシリトール、L-アラビノース等

(※主として栄養源(エネルギー源)とされる成分(ぶどう糖、果糖、ガラクトース、しょ糖、乳糖、麦芽糖及びでんぷん等)を除いた糖質、糖類)

2018年4月24日現在事例なし(2018年3月28日より開始のため)

 ざっとまとめましたが、消費者のニーズは多様であり、表示制度もまた多様であるとあらためて感じます。今回はここまでです。また、ときどきミニコラムを書いてみようと思います。


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