日本農林規格に新しく「フードチェーン情報公表農産物」が制定されました

By | 2023年6月2日


 「フードチェーン情報公表農産物の日本農林規格」が令和5年3月30日に制定され、同4月29日をもって施行されました。

背景


 今回のJAS規格は農産物の⽣産から販売までの⼀貫したデータ情報連携基盤「スマートフードチェーンプラットフォーム(SFP)」の構築により可能となった背景があり、海外市場も含めた農産物の競争力の増強が目的に含まれています。有機JAS規格生産情報公表JAS規格等、生産段階の取組の規格はありますが、生産後の流通プロセスを対象とする規格はこれまで存在しておらず、今回が初めてとなります。

対象となる農産物と表示されるフードチェーン情報


 現在、流通行程管理基準が設定されている品目は「レタス」、「メロン」、「ぶどう」の3品目で以下のような基準があります。

品目 事項 流通行程管理基準(概要)
レタス 予冷・低温管理 出荷前:中心温度(0~10℃)
流通行程:配送・保管温度の設定・管理※1
朝採れ 収穫時間:午前0時~午前9時まで
販売:収穫当日まで
メロン 低温管理 流通行程:配送・保管温度の設定・管理※1
衝撃管理 出荷前:輸送箱底面への衝撃緩和が証明された緩衝材の適用
(緩衝材を適用しない場合は許容される衝撃の上限および回数の設定・管理)
湿度保持・追熟抑制管理 流通行程:湿度保持・追熟抑制が行える条件の設定・管理※2
ぶどう 低温管理 流通行程:配送・保管温度の設定・管理※1
衝撃管理 出荷前:輸送箱底面への衝撃緩和が証明された緩衝材の適用
(緩衝材を適用しない場合は許容される衝撃の上限および回数の設定・管理)
出荷前:果房への緩衝材(フルーツキャップ)の適用
湿度保持・防カビ管理 流通行程:湿度保持・防カビが行える条件の設定・管理※2

※1 低温管理できない状況における許容温度と滞留時間の設定・管理を含める
※2 出荷後、小売店まで3日以上の流通行程がかかる場合

 要求事項を満たした上で必要な表示(要求事項・表示は下図参照)を行うことになりますが、特徴としてはフードチェーン情報についてはHPアドレス、QRコード等、外部媒体を利用する点が挙げられます。

(「日本農林規格等に関する法律施行規則の一部を改正する省令」パブリックコメント関連資料より引用)

まとめ


 現時点では対象となる農産物はレタス、メロン、ぶどうの3品目のみですが、今後いちごなど対象品目の拡張に向けた準備が行われる見込みです。
 また、現時点ではこれらを原材料として使用した加工食品の表示については、食品表示基準等では触れられていませんが、同じ特色JAS規格である有機JAS規格については「特色のある原材料」として記載する際のルールが設けられているため、今後どのように扱われるべきか検討がなされるのではないかと思われます。


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井上 慎也

井上 慎也

上級食品表示診断士。生物化学を専門とし、主に原材料、添加物、表示基準の調査業務に従事しています。FOODS CHANNELにて食品表示コラムを連載(2012年)、各地の産業振興財団イベントにおいて食品表示相談員としても活躍しています。
趣味は自転車。