日本版「包装前面栄養表示」の検討が始まりました

By | 2023年12月5日


 2023年10月26日、消費者庁は日本版「包装前面栄養表示」の基本的な方向性を検討すると公表しました。今回は、11月2日に開催された「第1回分かりやすい栄養成分表示の取組に関する検討会」(以下「検討会」)で公表された資料等をもとに、現在検討されている「包装前面栄養表示」について整理してみたいと思います。

検討の背景


 諸外国では各国の健康・栄養政策を踏まえ、消費者が食品の栄養価や食品の選択に対する理解を高めるため、義務的表示に加え、包装の前面に栄養表示に関して分かりやすく消費者に訴求する「包装前面栄養表示」を導入しています。また令和3年11月のコーデックス委員会においても、包装前面栄養表示のガイドラインが採択されています。こうした状況を受け、国際整合性の観点から、国際機関が公表するガイドラインの内容を踏まえつつ、日本版の包装前面栄養表示の在り方について、検討が開始されています。なお検討にあたり、「表示の見にくさや分かりづらさを補足する取組み」という観点が方向性として示されています。

包装前面栄養表示とは


 諸外国の「容器包装前面栄養表示(Front of Pack Nutrition Labeling:FOPNL)」については、検討会資料「【資料2】栄養成分表示制度をめぐる事情について」に事例が掲載されています。図はオーストラリア連邦、フランス共和国、英国の例(任意表示)です。

オーストラリア連邦 フランス共和国 英国

 なおカナダでは2022年7月に、飽和脂肪酸、ナトリウム、糖類の全て、もしくはいずれかを一定の閾値以上含む全ての食品にFOPNLが義務化され、話題となりました。(『義務化された容器包装前面表示の重要なポイント(カナダ)』

WHOおよびコーデックス委員会のガイドライン


 同検討会資料(資料2)にガイドラインの主な内容が整理されています。例えば「FOPNLの効果を高めるように、単一の取組を開発すべきである。(WHO)」、「各国で政府が推奨するFOPNLは1つだけであるべきである。(コーデックス委員会)」、「FOPNLの一部として、モニタリングや評価する仕組みについても開発すべきである。(WHO)」といった内容です。なおコーデックス委員会のガイドラインについては、検討会資料「【参考資料】コーデックス委員会における包装前面栄養表示ガイドライン」より詳細を確認することができます。
 

今後の予定について


 検討会では「資料4分かりやすい栄養成分表示の取組の推進に向けた検討の方向性及び主な論点(案)」において、主な論点を以下のとおりとしています。

  • 我が国の健康・栄養政策との整合を踏まえた上で、包装前面栄養表示として取り組むべき栄養課題
  • 消費者が普段の食生活において栄養成分表示が利活用しやすくするために効果的な方策
  • 消費者のための取組であることを優先しつつも、「健康的で持続可能な食環境づくり」の推進の観点から食品関連事業者の実行可能性が担保される方策

 

 今後検討会において、今年度中に基本的な方向が示される予定です。すべての食品に関わる改正になると思いますので、公表された資料に一度目を通しておかれるとよいと思います。


メールマガジン配信登録

こちらのブログに毎月投稿している食品表示に関するニュースやセミナー情報を、ご登録されたメールアドレス宛に送付させていただきます。

関連サービス

【国産食品(国内流通)】食品表示調査:配合表、製品規格書等をもとに、原材料名や栄養成分等の食品表示案との適合性を検証します。各方面からの原材料詳細や表示内容の確認などの対応業務をサポートします。新商品や改版の確認業務、膨大な規格書情報の確認業務にご利用いただいております。

【輸入食品】原材料調査&食品表示調査:配合表、原材料規格書をもとに、原材料及び添加物の使用基準との適合性を検証します。また配合表、製品規格書等をもとに、原材料名や栄養成分等の食品表示案との適合性を検証します。様々な国から輸入される場合の確認業務効率化などにご利用いただいております。

The following two tabs change content below.
川合 裕之

川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2023年12月『食品と開発』(健康メディア.com)「海外の栄養プロファイリングシステムと栄養表示制度」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

>> 寄稿の詳細はこちら

【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
 一般財団法人食品産業センター様主催。
・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
 千代田保健所様主催。
・2023年11月8日 添加物の不使用表示について
 株式会社インフォマート様主催。
・2023年10月12日~13日 海外輸出向け食品の表示(添加物、栄養成分等)について
 公益社団法人日本食品衛生学会様主催。
・2023年6月15日 添加物の不使用表示について
 株式会社インフォマート様主催。

>> 講演・セミナーの詳細はこちら