FOP(容器包装前面)、GMO、小型包装食品の表示に関する各国の食品表示規制の最新情報について

By | 2023年3月9日


 食品業界における製品とその資源は、驚くほど急速に多様化しています。その結果、政府機関は消費者が十分な情報を得た上で食品を選択できるよう、日々努力を続けています。
 今回は、世界各国の食品表示規制の主なものをご紹介したいと思います。

1. ブラジルのFOP(容器包装前面)表示


 食品表示規制での注目すべき流れとして、各国で積極的に取り組みがされている「Front of Pack」表示があります。
 シンガポール(Nutri-grade)、オーストラリア(Health Star Rating)、イギリス(Color-coded GDA)、ヨーロッパ地域(Nutri-score)など、それぞれ異なる名称で採用されています。現在、他の国もこの「健康的」な流れに追随しており、例えばブラジルでは昨年2022年10月に同様の表示規制が施行されました。
 このような法律は、健康に関連する特定の栄養素が多く含まれていることを、消費者にわかりやすく伝えることを目的としています。
 食品が以下の量の栄養素を含む場合、パッケージの前面や上部に、場合に応じて1つまたは複数の栄養素を示す「虫眼鏡」マークを表示する必要があります。

多く含む栄養素 固体もしくは半固体の食品 液体の食品
添加糖 食品100g当たり15g以上 食品100ml当たり7.5g以上
飽和脂肪酸 食品100g当たり6g以上 食品100ml当たり3g以上
ナトリウム 食品100g当たり600mg以上 食品100ml当たり300mg以上

 以下は、使用可能な「虫眼鏡」マークのモデルです。

A.栄養素が1つの場合 B.栄養素が2つの場合
C.栄養素が3つの場合

 上記以外にも、栄養成分表示パネルの変更、FOP表示との矛盾を回避するための栄養強調表示に関する基準の変更などが提案されています。
 企業が既存の表示を調整するための移行期間は、食品全般で2023年10月9日までとなっています。

2. GMO表示の最新情報


 高度な技術がスムーズに私たちの食卓に取り入れられていますが、食することを控える消費者もいるようです。しかし、遺伝子組換え生物の科学は、より速く、より広く発展し続けています。そのため、各国政府は遺伝子組換え食品に関する考え方をさらに簡素化し、その利点を明確化するとともに、法律の起草にさらなる注意を払おうとしています。

A. マレーシア

‘Guidelines on Labelling of Food and Food Ingredients Obtained Through Modern Biotechnology’(現代のバイオテクノロジーによって得られた食品および食品原材料の表示に関するガイドライン)について

 2023年1月16日、遺伝子組換え食品・原材料の表示に関するガイドラインが発表され、現代のバイオテクノロジーによって得られた食品・原材料の由来を以下のようにラベルに表示する必要性が強調されました。

“gene derived from (common name of such animal)” (○○由来の遺伝子)
“gene derived from (origin)”(○○由来の遺伝子)
“genetically modified (name of the ingredient)”(遺伝子組換え(○○))

 また、遺伝子組換え生物から製造された食品・原材料で、遺伝子組換え生物を含まない場合であっても、次のような表示が義務づけられていますので、ご注意ください。

“produced from genetically modified (name of the ingredient)”(遺伝子組換え○○から製造されています。)

 
 上記の表示義務は食品の原材料表示における上位3位にのみ適用され、遺伝子組換え生物を含む、またこれにより構成される、或いはこれにより製造される食品で、遺伝子組換え生物を含む割合が3%以下の、個別と見なされる食品原材料、または単一成分からなる食品を含むものについては、その存在が不測の事態であるか、技術的に不可避である場合に限り、その表示義務は適用されないものとしています。
 また、このガイドラインでは、単一原材料や複数原材料からなる製品のどこに記載するかなどの表示要件や、表示の免除についても詳しく説明されています。

表示例
法律該当箇所

(d) 複合原材料の場合、遺伝子組換え情報は、原材料リスト中の該当する原材料のすぐ後に記載すること。
(e) 「“contains genetically modified ingredient”(遺伝子組換え原材料を含む)」という文言を、主要表示面に食品名と近接して、10ポイント以上の文字で記載すること。

表示例
法律該当箇所

(c) 単一原材料の場合、遺伝子組換え情報は主要表示面に食品名と近接して、10ポイント以上の文字で記載すること。

B. アメリカ

‘Feed Your Mind’に見る FDAのスマートな動き

 遺伝子組換え食品は、1990年代から私たちの市場に登場し、その種類と品質のバリエーションを増やし続けています。FDAは、これらの製品の安全性を確保し、消費者にできるだけ多くの情報を提供するために、いくつかの措置をとっています。
 例えば、FDAは新たな教育活動を開始し、2022年7月にGMOを説明し、健康やアレルギーについて消費者を安心させるためのパンフレットを発行しました。
 GMOという言葉自体が、遺伝子操作に由来する食品を指すものとして消費者に知られているため、この取り組みでは、代わりに「バイオエンジニアリング(bioengineered)」という言葉を導入しています。
 バイオ工学食品を「特定の組換え技術によって変更された検出可能な遺伝子物質を含む食品、また従来の育種では作成できない、もしくは自然界に存在しない食品」と定義する新しい国家基準が2022年1月に施行されました。
 バイオ工学食品に該当する場合、その表示が義務化されています。

3. レストランで食事と一緒に提供される加工食品の表示について


 今年1月12日、台湾の食品薬物管理署は、レストランで食事と一緒に提供される包装済加工食品について、パブリックコメントを求める条文の草案を発表しました。
 食品安全衛生管理法第22条によると、食品表示における義務表示項目をすべて中国語で表示することが義務づけられています。
 ただし、最大表面積が20cm2未満の食品ラベルについては、「小包装食品免一部標示」の規定に基づき、以下のいずれかの方法で表示することができるとしています。

A.商品名、賞味期限、台湾国内の製造責任者の名前と電話番号、製品の原産国および当局が定める原料原産地、アレルギー表示などの注意事項の表示のみをパッケージに表示する。

または

B.製品名、賞味期限のみパッケージに表示し、残りの表示情報は「QRコード」もしくはその他電子的方法を用いることができ、電子マークの上または下に「製品ラベル情報はここをスキャンして入手してください。」または同等の文言を表示する。

 上述の通り、ケチャップや醤油など外食で提供される包装済食品について、外装の最大表面積が20cm2未満の場合は、消費者への情報開示のため、上記の法律に基づいて表示する必要があります。
 従って、以前発表された、レストランで食事とともに提供される小型の包装済食品に対する個別表示を対象外とする書簡は、現在保留にされています。

おわりに


 食品に関する十分な情報を得たいという消費者の関心が、いかに各国政府にとって大きな重要性を持つものと考えられているかは明らかです。その背景には、人々の健康問題の深刻化や情報のデジタル化など、様々な理由があります。

 次回は、本年2月22日にFDAから発表された’Draft Guidance for Industry: Labeling of Plant-Based Milk Alternatives and Voluntary Nutrient Statements’(プラントベース(代替乳)製品の表示に関するガイダンス(案))について、その概要をお伝えします。
 このほかにも、世界各国の食品表示規制に関する重要な最新情報をお伝えして参ります。

参照

Nutrition labelling: new rules take effect in 120 days(ブラジル)
Guidelines on labeling of food and food ingredients obtained through modern biotechnology(マレーシア)
Agricultural Biotechnology(アメリカ)
Regarding the labeling of packaged food served with meals(台湾)
Plant-Based Milk Alternatives (PBMA)(アメリカ)


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イクラム

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海外調査担当株式会社ラベルバンク
チュニジア出身。生物学を専門とし、海外の原材料、添加物、表示基準の調査業務に従事しています。また海外のお客様とのコミュニケーションを円滑にするサポート業務にも取り組んでいます。
趣味は料理。

【寄稿】
・2023年12月『食品と開発』(健康メディア.com)「海外の栄養プロファイリングシステムと栄養表示制度」