食品添加物公定書の改正案について

By | 2023年3月9日


 令和5年2月9日厚生労働省より、第10版食品添加物公定書(案)が公表されました。食品添加物公定書は、食品衛生法第21条の規定に基づき、食品添加物の成分規格や使用基準等を収載することとされています。昭和35年に第1版が作成されて以来、令和4年7月の第9版食品添加物公定書追補2の作成まで、逐次改正が行われてきました。今回は、第10版食品添加物公定書の主な改正案について整理したいと思います。

第10版食品添加物公定書に係る検討経緯・方針


 平成30年6月以降、12回の食品添加物公定書作成検討会が開催されています。その検討結果に係る意見募集が行われ、寄せられた意見について検討をした上で第 10 版食品添加物公定書(案)が作成されました。
 今回の改正では、第 10 版食品添加物公定書作成検討会で検討を行い、意見募集の機会を増やし、より販売等の実態を踏まえた内容とされています。

主な改正案


 現行の第9版食品添加物公定書追補2からの主な改正案は以下(1)~(9)のとおりです。

(1) 既存添加物45品目に係る成分規格(45項目)を新たに設定すること。

「アグロバクテリウムスクシノグリカン」、「アスペルギルステレウス糖たん白質」、 「うに殻焼成カルシウム」、「ウルシロウ」、「エレミ樹脂」、「塩水湖水低塩化ナトリウム液」、「カワラヨモギ抽出物」、「カンゾウ油性抽出物」、「グァーガム酵素分解物」、「クエルセチン」、「グルコサミン」、「くん液」、「ゲンチアナ抽出物」、「香辛料抽出物」、「酵素処理レシチン」、「コメヌカロウ」、「サトウキビロウ」、「サバクヨモギシードガム」、「シェラックロウ」、「ジェルトン」、「シタン色素」、「ジャマイカカッシア抽出物」、「植物炭末色素」、「精油除去ウイキョウ抽出物」、「セイヨウワサビ抽出物」、「造礁サンゴ焼成カルシウム」、「粗製海水塩化カリウム」、「チクル」、「チャ抽出物」、「トウガラシ水性抽出物」、「トレハロース」、「生コーヒー豆抽出物(ペースト品、液体品)」、「乳清焼成カルシウム」、「ヒアルロン酸」、「フィチン(抽出物)」、「分岐シクロデキストリン」、「ヘプタン」、「没食子酸」、「ミルラ」、「メバロン酸」、「モクロウ」、「レイシ抽出物」、「ロシン」、「ローズマリー抽出物(水溶性)」、「ローズマリー抽出物(非水溶性)」

(2) 指定添加物2品目、既存添加物5品目及び添加物製剤2品目に係る成分規格について、
一つの品目あたり複数の子規格として設定されているものをそれぞれ個別規格として規定すること。
※該当の成分については、「第10版食品添加物公定書作成について」をご参照ください。(以下同様)

(3) 指定添加物106品目に係る成分規格(129項目)、既存添加物58品目に係る成分規格(85項目)及び添加物製剤2品目(3項目)について、試験の操作性の改善及び精度の向上、IUPAC命名法に基づく名称及び構造式、用語・用例・計算式等の記載の統一、使用試薬の変更等を行うこと。

(4) 元素分析法等の試験法を新たに一般試験法として「B 一般試験法」の項に規定すること。既存の一部の一般試験法に関しては、技術の更新、使用器具又は試液の変更、記載整備等を行うこと。メトキシ基定量法を削除すること。

(5) 「C 試薬・試液等」の項において、新たに設定された一般試験法や成分規格の規定に伴った試薬の追加、試薬の旧名称の記載削除、各試薬の項目を追加、改正又は削除すること。

(6) 参照赤外吸収スペクトルの項を「C 試薬・試液等」から削除し、「D 成分規格・保存基準各条」の項の各条に規定すること。

(7) 「A 通則」、「B 一般試験法」及び「C 試薬・試液等」の項について、試験の操作性の改善及び精度の向上、有害試薬の他の試薬への代替、IUPAC 命名法に基づく名称及び構造式の記載法や用語、用例等の記載の統一等を行うこと。

(8) 「E 製造基準」及び「F 使用基準」の項において、「砂」を削除、「不溶性の鉱物性物質」を明記すること。

第9版食品添加物公定書 第10版食品添加物公定書案
製造基準 …タルク、、ケイソウ土、二酸化ケイ若しくは炭酸マグネシウム又はこれらに類似する不溶性の鉱物性物質 …タルク、ケイソウ土、二酸化ケイ素、炭酸マグネシウム、パーライト、花こう斑岩、活性白土、クリストバル石、ゼオライト又はひる石
使用基準 …酸性白土、カオリン、ベントナイト、タルク、、ケイソウ土及びパーライト並びにこれらに類似する不溶性の鉱物性物質 …酸性白土、カオリン、ベントナイト、タルク、ケイソウ土、パーライト、花こう斑岩、活性白土、クリストバル石、ゼオライト及びひる石

(9) 第9版食品添加物公定書追補2作成以降に新規指定や使用基準の改正が行われた指定添加物について「D 成分規格・保存規格各条」「F 使用基準」に収載すること。

今後の予定


 引き続きパブリックコメントの募集等が行われる予定ですので、今後の改正動向に注目していただくことをおすすめいたします。

参照

第10版食品添加物公定書作成について
第10版食品添加物公定書案


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中西 知奈海

中西 知奈海

栄養学を専門とし、主に海外から国内に輸入される原材料や添加物の調査業務のほか、食品規格、添加物、食品表示に関するコンサルティング業務に従事しています。
趣味はパン作り。