Author Archives: 川合 裕之

川合 裕之

About 川合 裕之

食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2023年12月『食品と開発』(健康メディア.com)「海外の栄養プロファイリングシステムと栄養表示制度」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

>> 寄稿の詳細はこちら

【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
 一般財団法人食品産業センター様主催。
・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
 千代田保健所様主催。
・2023年11月8日 添加物の不使用表示について
 株式会社インフォマート様主催。
・2023年10月12日~13日 海外輸出向け食品の表示(添加物、栄養成分等)について
 公益社団法人日本食品衛生学会様主催。
・2023年6月15日 添加物の不使用表示について
 株式会社インフォマート様主催。

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「食品表示基準について」「食品表示基準Q&A」が改正されました~アレルゲン表示推奨品目へのマカダミアナッツの追加、まつたけの削除等~


 2024年3月28日、消費者庁は「食品表示基準について」「食品表示基準Q&A」の改正を発表しました。主な改正内容としては、アレルゲン表示推奨品目へのマカダミアナッツの追加と、まつたけの削除、その他となります。今回は、マカダミアナッツのアレルゲン表示推奨品目への追加について、詳細を以下に整理してみたいと思います。

「食品表示基準について」の主な改正点


 特定原材料に準ずるもの(表示推奨品目)に“マカダミアナッツ”が追加され、“まつたけ”が削除されました。品目数は20品目のまま変わりません。特定原材料等(義務表示含む全て)の品目数も、28品目のままです。

改正後(新) 改正前(旧)
アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、マカダミアナッツ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン

別表1 特定原材料等の範囲

特定原材料等 分類番号(1) 分類番号(2) 大分類 中分類 小分類
マカダミアナッツ 69 8599 殻果類 その他の殻果類 他に分類されない殻果類

別表2 特定原材料等由来の添加物についての表示例

特定原材料に準ずるものの名称 区分 添加物名 特定原材料に準ずるものの表示 備考
マカダミアナッツ

別表3(特定原材料等の代替表記等方法リスト)

通知で定められた品目 代替表記 拡大表記(表記例)
表記方法や言葉が違うが、特定原材料に準ずるものと同一であるということが理解できる表記 特定原材料に準ずるものの名称又は代替表記を含んでいるため、これらを用いた食品であると理解できる表記例
マカダミアナッツ マカデミアナッツ  

「食品表示基準Q&A」の主な改正点


 マカダミアナッツの範囲に関するQ&A(D-18)が追加されました。

(D-18)特定原材料に準ずるものの「マカダミアナッツ」の範囲を教えてください。
(答)
 「マカダミアナッツ」は、日本標準商品分類において個別の殻果類として分類されておらず、「他に分類されない殻果類」に該当します。「マカダミアナッツ」はヤマモガシ科マカダミア属に属するもので、品種は主に、インテグリフォリア種、テトラフィラ種及びそのハイブリッド種があり、これらが対象となります。また、マカダミアナッツオイル、マカダミアナッツミルク等もアレルゲンとなるので注意が必要です。

 また表示対象範囲の情報提供について、Q&A(E-23)に追記がなされています。今回の改正では品目数が変わっていませんので、注意しておかれるとよいと思います。

(E-23)表示の対象範囲(表示義務のない特定原材料に準ずるものについても、表示対象としているかどうか等)について情報提供を行うべきですか。
(答)(中略)
 対象範囲について、特定原材料8品目のみを対象としているのか、特定原材料に準ずるものを含む28 品目を対象としているのかが明確となるように一括表示枠に近接した箇所に表示するよう努めてください。
 また、表示対象品目については、内閣府令や通知の改正に伴う経過措置期間等により、上記のような表示のみでは改正前後のいずれの品目を対象としているのか判然としないことも考えられます。表示対象としている品目の一覧やイラスト等から判断できる場合には問題ありませんが、そうでない場合には、いつ時点の内閣府令又は通知に基づく表示か判断できるような記載をすることも可能です。

今後について


 今回はアーモンドの追加(2019年9月)と同様に義務化ではないことから経過措置期間は示されておらず、可能な限り速やかに対応することになりますが、原材料規格書にて確認できることが前提となりますので、原材料供給をされる方は早めの対応が求められると思われます。また原材料に輸入食品が使用されている場合、海外では「Tree Nuts(木の実)」といった総称で管理されていることも多いため、くるみ、カシューナッツ、アーモンドに加え、マカダミアナッツは含まれるかどうか等、個別に確認する必要がある点に留意が必要です。
 表示切替の際は、上記Q&Aなども参考に、情報提供の方法について検討する機会にしていただければと思います。


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個別品目ごとの表示ルールについて


 2024年1月30日、第3回「令和5年度食品表示懇談会」において、個別品目ごとの表示ルールの見直しについて検討がなされました。その際の資料「【参考資料】個別品目ごとの表示ルール」に、現状の課題を分かりやすく整理したものがありますので、こちらで取り上げてみたいと思います。

概要


別表第3 食品の定義
別表第4 個別の表示ルール(名称、原材料名、添加物、内容量)
別表第5 名称の規制
別表第19 追加的な表示事項(使用上の注意、調理方法、形状、特定の材料の含有率など)
別表第20 表示の様式
別表第22 表示禁止事項

 例えば食品表示基準別表第4「マカロニ類」の規定では、形状や大きさ、太さの違いによって表示できる名称が異なるため、いわゆる「パスタ」については、「マカロニ類」と表示することになります。

表示の違いの例


 同様の製品であっても製品形態によって使用できる「名称」が異なります。例えばフェットチーネでは、乾めんは「マカロニ類」の個別ルールに従い「名称:マカロニ類」と表示します。そして冷凍食品は「調理冷凍食品」 の個別ルールを参考に表示 (名称:フェットチーネ等)し、生パスタについては個別ルールがないため横断ルールにより一般的名称で表示(名称:フェットチーネ等)します。
 また同じ原材料を用いた製品であっても容器包装によって使用できる「名称」が異なります。例えば和風味のミートソースでは、レトルトパウチ包装 (遮光性あり)の場合はレトルトパウチ食品の定義に当てはまるため、レトルトパウチ食品の個別ルールを参考に「名称:ミートソース」と表示。透明パウチ包装 (遮光性なし)の場合はレトルトパウチ食品の定義に当てはまらないため、横断ルールにより一般的名称で表示(名称:和風パスタソース)します。
 さらに同じ原材料を用いた製品であっても、保存温度、流通形態によって「原材料名」の表示方法が異なる場合もあります。例えばぎょうざでは、冷凍の場合は「調理冷凍食品」に該当し、 個別ルールに従い表示(「皮以外の原材料」と「皮」の重量を比較し、重量順に表示)します。チルドの場合「チルドぎょうざ類」に該当し、 個別ルールに従い表示(①食肉、②魚肉、③野菜、④つなぎ、 ⑤皮、⑥その他のものの重量を比較し、重量順に表示)し、上記以外(冷蔵・常温など)は個別ルール「皮以外の原材料」と「皮」の重量がないため横断ルールにより表示します。
 
 これらは旧JAS法で定められたものがそのまま食品表示府令に移行したものであるため、今日的にみて、消費者の合理的な選択という観点からの意義や、事業者への負担などの検討課題が提起されている状況です。同懇談会では、これら個別品目ごとの表示ルールの制定の経緯や背景を踏まえつつ、国際整合性等の観点により全体としては横断的なルールに寄せていく方向で議論が進められていますので、今後の具体的な表示方法については引き続き注目しておきたいと思います。(なお栄養強化目的で使用した添加物の表示についても、原則すべての加工食品に表示する方向が再確認されています。こちらの改正案や時期については、今後の検討会等により明らかになると思われます。)


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各国の栄養成分および健康に関する表示の動向について


 今回は、各国の栄養成分および健康に関する表示の動向について、整理していきたいと思います。

米国 包装前面栄養表示


 2023年12月14日、米国上院下院議員より包装前面栄養表示(FOPNL)の義務化に関する法案についての報道発表がありました。法案全文(PDF)では、①主要表示面の一定の場所に表示されること、②既存の表示と視覚的に対照的で目立つデザインであること、③容易に判別できる十分な大きさであること、等を主な要件としています。また同報道発表の事前調査によると、75%の回答者が包装前面栄養表示の義務化を支持しているとされています。今後米国に食品を輸出する際の、消費者ニーズについて参考になると思われます。
 なお、日本では2023年11月2日より、「包装前面栄養表示(FOPNL)」の検討が開始されたところです。

オーストラリア 添加糖類の任意表示


 2023年11月14日、オーストラリア・ニュージーランド食品基準局(FSANZ)は添加糖類の任意表示に関する基準改正案を承認したと公表しました。改正案では、①基準で定義される添加糖類を含んでいる場合、②添加糖類は含まれなくとも、10.0g/100g(固形)、7.5g/100ml(液状)を超える糖類(例:単糖類、二糖類)を含む場合は、「no added sugar(s)」(糖類不使用)の表示をしてはならないとされています。
 日本では添加糖類の表示基準はありませんが、「糖類を添加していない旨」(例:糖類不使用)の表示ができる基準(①いかなる糖類も添加されていない、②糖類に代わる原材料又は添加物を使用していない、③当該食品の糖類含有量が原材料及び添加物に含まれていた量を超えていない、④糖類の含有量を表示している)は定められています。

韓国 「無糖」と「甘味料が使用されている旨」の表示


 2023年12月28日、韓国食品医薬品安全省(MFDS)は食品表示基準改正案を公表しました。改正案のうち栄養成分に関する基準として、 甘味料が使用されている製品に「無糖」等の強調表示する場合は、熱量に関する情報と甘味料が使用されている旨を表示しなければならない、とされています。(その他、酒類の熱量の表示サイズを大きくし太字にするなどの改正案が提示されています。)
 日本では甘味料が使用されている旨に関する表示基準はありません。(なお、「甘味料不使用」と表示する場合には、「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」に注意する必要があります。)

英国 「健康的でない」食品や飲料への広告規制


 2023年12月13日、英国の広告関連団体ASAおよびCAPは、英国政府の方針にもとづき健康的でない商品に関する広告規制を2025年10月より開始すると発表しました。「HFSS(High in fat, sugar, salt)」(脂質、糖分、塩分が高いもの)に分類される製品を対象とし、5:30~21:00の広告が禁止されます。
 日本では同様の規制はありませんが、酒類などの広告には自主基準が運用されています。

 各国で様々な動向がありますが、こうした改正案の資料にはその背景などが記載されていることがよくあります。食品の輸出入では、その国の関心について知ることも大事だと思いますので、機会をみて読んでいただければと思います。


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アレルゲン推奨品目に「マカダミアナッツ」追加、「まつたけ」削除の改正案が公表されました


 2023年12月23日、「第6回 食物アレルギー表示に関するアドバイザー会議」資料として、「食品表示基準について」を年度内に改正する予定(「資料1~4」)が消費者庁より公表されました。

  • 「特定原材料に準ずるもの」について、マカダミアナッツの追加、まつたけの削除を行う。
  • 改正後、食品関連事業者等は可能な限り速やかに表示の見直しを行う。
<改正後> <改正前>
特定原材料に準ずるもの(通知で措置) 特定原材料に準ずるもの(通知で措置)
アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、マカダミアナッツ【削除】、もも、やまいも、りんご、ゼラチン アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、【新設】まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン

 マカダミアナッツの対象品目への追加は、下記の要件を満たしていることによるものです。

  • 直近2回の全国実態調査の結果において、即時型症例数で上位20品目に入っているもの。

 一方でまつたけの対象品目からの削除は、下記の要件をいずれも満たしているためです。

  • 直近4回の全国実態調査の結果において、即時型症例数で上位20品目に入っていないもの。
  • 直近4回の全国実態調査の調査結果において、ショック症例数が極めて少数であること。

 また同資料には、各対象品目別の「即時型症例・ショック症例数の推移(P7)」のほか、「マカダミアナッツ等の症例数及び輸入量の推移(P9)」も掲載されています。過去10年間で、くるみとカシューナッツとともに、マカダミアナッツの症例数が増加している様子が分かります。その他、「諸外国における木の実類の指定状況(P8)」(米国、EU、スイス、オーストラリア・ニュージーランド、カナダでは「マカダミアナッツ」が指定されている等)や、「マカダミアナッツを使用した加工食品に関する実態調査結果(P11)」(販売開始時期は2020年代に入り増加していること、2022年以降は原型がない状態での使用が増加している等)の情報も整理されています。

 見直しの際には、各品目の症例数や関連情報をあわせて確認できるよう、同資料を読んでおかれるとよいと思います。


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食品表示作成とチェック業務について


 先日、「食品表示基準と実務上の大切なポイント」と題した外部講演にて、食品表示基準全体の概要(基準、通知、ガイドライン等)や構造(横断的、個別的等)について把握することの大切さをお伝えしました。その際に、「知らなくてもなんとなくできてしまう」業務の難しさについて触れましたが、この場を借りてもう少しお伝えしたいと思います。以下に、先日発売された「新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック」より関連する部分を引用いたします。

『予定されている商品パッケージや販売方法を知らなくても、食品表示の作成自体はできてしまう』(第3部第1章)


ここで初めてパッケージデザイン案に書いてある商品特徴の表示「こだわりの〇〇県産原料使用!〇〇の栄養が豊富で、天然志向だから美容によい!」を見て、びっくりして社長に進言することになるでしょう。原材料を変更するか、パッケージデザインの商品特徴の表示を変更するか、どちらかを検討する必要があると。「販売日も目前に迫っているこの状況で今さら」、と社長は怒るかもしれません。しかし怒られること以上に困るのは、ここで社長が決断を誤る可能性があることです。社長の誤った決断とは、「今さら原材料もパッケージデザインも修正できないからそのまま販売してしまう」ということです。そしてあなたにとっての誤った決断があるとすれば、その可能性に気付きながら何もしないことでしょう。

『チェックのほうが難しい』(第3部第2章)


作成は1 つ1 つの事実を積み上げていく作業であるのに対し、チェックとは1 つ1 つの要素に分解していく作業に似ています。作成の仕事は作業者が意思決定を積み上げることであるのに対し、チェックは少し異なってきます。チェックとは、自分が作成していない食品表示を確認することですので、その食品表示がどのような意図をもって積み上げられたのかといった経緯までは持ち合わせていません。そこで、作成者の意図について仮説を立てるなど、想像を広げる必要があります。この点で、チェック作業は、作成よりも難しいといえます。作成は1 点を目指して仕事を進めるのに対し、チェックは様々な可能性まで追求する仕事の進め方をしなければならないためです。

 前者の例は、本来は食品表示を作成する前に商品企画の概要を把握しておくことで、事前に強調表示に関する基準や根拠を調べておくことができる、という内容の説明です。実際には様々な事情により、事前に情報が入手できない場合も多く、企画の概要情報がなくてもできてしまうのですが、本来はそうであると考えておくことが大切だと思います。
 後者は原則のような話です。作成者の意図を伏せた状態での客観的なチェックが有効な場面は多いですし、また意図に縛られずマニュアルに沿って機械的に確認することも重要ですので、ともかくチェックできてしまうことになるのですが、本来は「チェックは難しいものである」と考えておくことが大切だと思います。

 「なんとなくできてしまっていること」は、他の仕事でも同じようなことが言えるかもしれません。リスクがあるなどの面もそうですが、とりわけ言語化や仕組化を必要としないままできてしまっているものについては、組織的な改善の機会が失われていないかを考える必要があると思います(言語化や仕組化がされている場合も、定期的な見直しは大切ですが)。
 私も今回の新訂2版の原稿を加筆修正するにあたり、これまでの経験や慣れでできている業務について、しっかり基本から見直していくことが大切だとあらためて思いましたので、講演や本稿で皆様にもお伝えしていきたいと思います。


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日本版「包装前面栄養表示」の検討が始まりました


 2023年10月26日、消費者庁は日本版「包装前面栄養表示」の基本的な方向性を検討すると公表しました。今回は、11月2日に開催された「第1回分かりやすい栄養成分表示の取組に関する検討会」(以下「検討会」)で公表された資料等をもとに、現在検討されている「包装前面栄養表示」について整理してみたいと思います。

検討の背景


 諸外国では各国の健康・栄養政策を踏まえ、消費者が食品の栄養価や食品の選択に対する理解を高めるため、義務的表示に加え、包装の前面に栄養表示に関して分かりやすく消費者に訴求する「包装前面栄養表示」を導入しています。また令和3年11月のコーデックス委員会においても、包装前面栄養表示のガイドラインが採択されています。こうした状況を受け、国際整合性の観点から、国際機関が公表するガイドラインの内容を踏まえつつ、日本版の包装前面栄養表示の在り方について、検討が開始されています。なお検討にあたり、「表示の見にくさや分かりづらさを補足する取組み」という観点が方向性として示されています。

包装前面栄養表示とは


 諸外国の「容器包装前面栄養表示(Front of Pack Nutrition Labeling:FOPNL)」については、検討会資料「【資料2】栄養成分表示制度をめぐる事情について」に事例が掲載されています。図はオーストラリア連邦、フランス共和国、英国の例(任意表示)です。

オーストラリア連邦 フランス共和国 英国

 なおカナダでは2022年7月に、飽和脂肪酸、ナトリウム、糖類の全て、もしくはいずれかを一定の閾値以上含む全ての食品にFOPNLが義務化され、話題となりました。(『義務化された容器包装前面表示の重要なポイント(カナダ)』

WHOおよびコーデックス委員会のガイドライン


 同検討会資料(資料2)にガイドラインの主な内容が整理されています。例えば「FOPNLの効果を高めるように、単一の取組を開発すべきである。(WHO)」、「各国で政府が推奨するFOPNLは1つだけであるべきである。(コーデックス委員会)」、「FOPNLの一部として、モニタリングや評価する仕組みについても開発すべきである。(WHO)」といった内容です。なおコーデックス委員会のガイドラインについては、検討会資料「【参考資料】コーデックス委員会における包装前面栄養表示ガイドライン」より詳細を確認することができます。
 

今後の予定について


 検討会では「資料4分かりやすい栄養成分表示の取組の推進に向けた検討の方向性及び主な論点(案)」において、主な論点を以下のとおりとしています。

  • 我が国の健康・栄養政策との整合を踏まえた上で、包装前面栄養表示として取り組むべき栄養課題
  • 消費者が普段の食生活において栄養成分表示が利活用しやすくするために効果的な方策
  • 消費者のための取組であることを優先しつつも、「健康的で持続可能な食環境づくり」の推進の観点から食品関連事業者の実行可能性が担保される方策

 

 今後検討会において、今年度中に基本的な方向が示される予定です。すべての食品に関わる改正になると思いますので、公表された資料に一度目を通しておかれるとよいと思います。


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「予防的アレルゲン表示(PAL)」について


 2023年9月4日、英国食品基準庁(FSA)は「アレルゲン表示に関する情報技術ガイダンス」の最新情報を公表しました。ガイダンスでは食品企業に対し、とりわけ「予防的アレルゲン表示(Precautionary Allergen Label (PAL))」の使用の見直しを推奨しています。
(※PALとは、「May Contain Nuts(ナッツが含まれる可能性がある)」といった表示のことを指します)

  • PALは、分離や洗浄では十分に制御できないアレルゲンの相互汚染のリスクが避けられない場合にのみ使用すること。
  • 「ナッツが含まれる可能性がある」ではなく、「ピーナッツが含まれる可能性がある」など、PAL が 14 種類の主要アレルゲンのうちどれを指すのかを明示すること。
  • 「ビーガン」表示がありながら、アレルゲンとの相互汚染のリスクが特定されている場合は、PALを組み合わせて使用すること。
    「不使用」といった安全情報に関する表示と「ビーガン」表示は、それぞれ異なる消費者に異なる情報を伝えているため。

 同ガイダンスは、企業の適切なアレルゲン表示の実効性をサポートする一方で、アレルゲンをもつ消費者の食品選択を不必要に制限しないことを目的に作成されています。今回の最新版では、「不使用」といった安全情報に関する表示とPALを併用しないことや、「グルテン含有成分不使用(No Gluten Containing Ingredient(NGCI))」表示に関する注意事項などもあわせて情報提供がなされています。

 PALについては、その他の国でも運用に注意がなされているケースがあります。例えばシンガポール食品庁(SFA)では「PALの使用」について、「相互汚染に関する徹底的なリスク評価を伴うこと」「消費者の食品選択が制限されるため、必要な場合にのみ行うこと」としています。また同庁は、アレルゲンの相互汚染のリスク評価に関する支援だけでなく、相互汚染のレベルに応じた適切な予防的アレルゲン表示が示唆するものとして、オーストラリア・ニュージーランドのアレルゲン局が提供するVITAL(Voluntary Incidental Trace Allergen Labelling)プログラムの参照を推奨しています。

 そして国際的なガイダンスの策定ですが、現在、コーデックス食品表示部会でも予防的アレルゲン表示についての議題が取り上げられています。「第105回コーデックス連絡協議会」(農林水産省)の「資料5-(2) 第 47 回 食品表示部会(CCFL)主な検討議題」(2023年5月開催)より、「第45回部会において(中略)予防的アレルゲン又は注意表示(PAL)に係るガイダンスを策定することで合意した」「PAL 使用に係るガイダンス原案については、FAO/WHO 合同専門家会議による議論の結果を待って策定作業を進める必要があるとされた」といった経緯を確認することができます。(その他、通常のアレルゲン表示の議題では木の実類の範囲について個別品目が明記されています)

 なお、日本では「May Contain ○○」にあたるアレルゲンの可能性表示は禁止されており、コンタミネーション防止対策の徹底を図ってもなおコンタミネーションの可能性が排除できない場合は、注意喚起表記(例:「本品製造工場では○○を含む製品を生産しています。」)が推奨されているところです(「食品表示基準について」 別添 アレルゲンを含む食品に関する表示 第1-3-(5),(6))。

 海外のこうした動向を見ると、品目毎の公定検査法と10㎍/gの閾値の設定、そして「判断樹」の運用など、日本のアレルゲン表示制度は世界的に見ても厳格であると、改めて気づくことができます。食品の海外輸出の実務においては、日本の制度を踏まえたうえで対象国との違いを確認することが求められるといえますので、国際的な動向を調査する際には、国内の制度についてあらためて確認できる機会にもしていただくとよいのでは思います。


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【海外輸出】原材料調査&食品表示調査:配合表、原材料規格書をもとに、原材料及び添加物の使用基準との適合性を検証します。また配合表、製品規格書等をもとに、原材料名や栄養成分等の食品表示案との適合性を検証します。輸出対象国の基準情報整理と確認業務の構築などにご利用いただいております。

「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」が一部改正されました


 2023年9月29日、「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」の一部改正が消費者庁より公表されました(【食品関連事業者向け】機能性表示食品の届出について)。概要は「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」の一部改正案について(概要)」にも整理されているとおりですが、システマティックレビューの「PRISMA声明(2020年)」への準拠と、その施行期日が示されたことが大きな改正点といえます。

主な改正内容


(赤文字下線部分は「新旧対照表1」「新旧対照表2」を参照)

(1)システマティックレビューの「PRISMA声明(2020年)」への準拠

  • PRISMA 声明チェックリスト(2020年)の改正(各チェックリスト項目の変更)
  • PRISMA 声明抄録チェックリスト(2020年)の追加

(2)届出内容の責任の所在の明確化

  • 「機能性表示食品の届出資料作成に当たってのチェックリスト」に、“届出内容について、届出者(法人にあってはその代表者)による確認を行っている。”の追加。

(3)その他の技術的事項

  • 研究計画の事前登録については、「特定保健用食品の表示許可等について」の別添2「特定保健用食品申請に係る申請書作成上の留意事項」第2の3(2)イ(ア)a に準拠することとする。
  • 最終製品を用いた臨床試験(ヒト試験)の結果を機能性表示食品の機能性に係る科学的根拠とする場合、登録した公開データベースの登録コードを記載すること。
  • 「totality of evidence」の観点から確実性(又は信頼性)の評価も踏まえて表示しようとする機能性について総合的に肯定されるとの判断をするに至った合理的な理由を届出資料に具体的に記載すること。

 

 また「機能性表示食品に関する質疑応答集」も改正され、『研究計画の事前登録について』、『内容を更新した場合、そのことが分かるように標題を記載すること』、『研究レビューを初めて作成する場合と、更新する場合でのフロー』の質問が追加されています。なお、「事業者団体等の確認を受けた届出について 30 日を超えない期間に公表又は差戻しを行うことを目標とする運用」は、本改正により廃止されました。

施行期日と経過措置について


 (1)システマティックレビューの「PRISMA声明(2020年)」への準拠については、①新規届出は令和7年4月1日以降、②既存の届出は「随時」とされています。(2)届出内容の責任の所在の明確化と(3)その他の技術的事項についての経過期間は設けられていません。既存の届出の経過措置については、パブリックコメントの「御意見の概要及び御意見に対する考え方」にもあらためて「随時」とされています。
 今後は多くの製品(既存の届出も含む)において、システマティックレビューの見直しが進むと思われますので、改正内容についてまずは慎重に確認されるとよいでしょう。


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【オーストラリア・ニュージーランド食品基準局】アルコール飲料への糖質、糖類の強調表示に関する 基準改正案を公表


 2023年7月24日、オーストラリア・ニュージーランド食品基準局(FSANZ)は、「アルコール飲料の糖質と糖類に関する強調表示」の要件を明確にするための改正案について意見募集を行いました。現状のFSANZコードの基準 1.2.7では、アルコール飲料における糖質の含有量についての自主的な表示を認めています。しかし同コードでは、糖類の含有量に関する強調表示の基準は明確にされていません。そのためFSANZは、1.15%を超えるアルコールを含む食品に対する糖質と糖類の表示の許容範囲を明確にするために基準を改正することを提案しています。

 意見募集の提案書(2023年9月4日まで)によると、過去10年間で糖質や糖類の栄養成分を強調表示するアルコール飲料が増加していることが背景とされています。FSANZは2020年に市場調査を行い、実際の製品の表示例(Table 2)として、糖質では「Low carb, Lower carb, X% less carbs, No carbs」、糖類では「Low sugar, Lower sugar, X% less sugar, No sugar, Zero sugar」などを挙げています。
 その後2022年に消費者行動に関する研究レビューを実施し、その結果、消費者はアルコール飲料の栄養特性について一般知識に基づいた十分な理解ができていないと結論づけました。また、これらの強調表示が消費者にアルコール飲料のアルコールやエネルギーについて不正確な推測を引き起こす可能性があるとしています。
 改正案(Attachment A)では、1.15%を超えるアルコールを含む食品に対する糖質と糖類の表示の許容範囲が明確化されており、例えば特定の糖類の名称(果糖等)および糖質・糖類以外の炭水化物成分 (食物繊維等) に関する強調表示は禁止されることになります。

sugar means, unless otherwise expressly stated, any of the following: (a) white sugar; (b) caster sugar; (c) icing sugar; (d) loaf sugar; (e) coffee sugar; (f) raw sugar.


(1) A nutrition content claim or health claim must not be made about:
(a) kava; or (b) an infant formula product; or (c) a food that contains more than 1.15% alcohol by volume, other than a nutrition content claim about: (i) salt or sodium content of a food that is not a beverage; (ii) carbohydrate content; (iii) energy content; (iv) gluten content; (v) sugar content; or (vi) sugars content.

(2) A nutrition content claim about sugars content of a food that contains more than 1.15% alcohol by volume must not name or refer to any specific sugars. Example A nutrition content claim that refers to fructose is not permitted.

(3) A nutrition content claim about carbohydrate content of a food that contains more than 1.15% alcohol by volume must not name or refer to a component of carbohydrate other than sugar or sugars.

(Sugarsの定義は基準1.1.2の「sugars:」に記載されています。)

 なお、提案書にはEU、米国、カナダなど海外の関連基準の状況についても整理されています。日本から該当製品の輸出を検討される際には、自国の基準を再確認したうえで、慎重に比較と確認をされるとよいでしょう。

※食品表示基準第7条「栄養成分又は熱量の適切な摂取ができる旨」(および「別表第十三」)(無糖、低糖、糖類〇%オフ等)、同第7条「糖類(単糖類又は二糖類であって、糖アルコールでないものに限る)を添加していない旨」(糖類無添加、砂糖不使用等)


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機能性表示食品に係る届出資料の再検証に関する通知が発表されました


 2023年7月3日、消費者庁は機能性表示食品に関する関係団体に対し、すでに届出・公表をされている科学的根拠の再検証を随時行うよう文書で要請をしました(「機能性表示食品に係る届出資料の再検証等について(依頼)」)。また重要なお知らせとして、7月7日に「<機能性表示食品に対する景品表示法に基づく措置命令を踏まえた食品表示法における対応について>」を同庁WEBサイト上に公表しました。

通知の概要


 2023年6月30日、機能性表示食品として消費者庁に届出・公表された食品について、その機能性に係る科学的根拠に関する資料も含め、その表示に対応する合理的な根拠として認められないと判断がなされ、景品表示法に基づく措置命令が公表されました。この事案を踏まえ、関係団体に以下の周知を依頼しています。

  1. 届出した食品の安全性や機能性に関する科学的根拠を改めて再検証すること。
  2. 届出資料の作成・提出においては、最新の「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」及び「機能性表示食品に関する質疑応答集」並びに「機能性表示食品に対する食品表示等関係法令に基づく事後的規制(事後チェック)の透明性の確保等に関する指針」等に基づき、適切に行うこと。

背景


 通知で触れられた措置命令によると、「機能性に関する表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を求めたところ、提出された資料はいずれも表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められないものであった」とされています。対象とされた「機能性に関する表示」には届出されたものも含まれることから、科学的根拠の内容を不十分としたものであり、2015年の制度開始以来で初めてのケースといえます。そして今後は、消費者庁に届出された機能性表示食品であっても、その科学的根拠が適切なものであるかを再検証する必要がある、という経緯になっています。
 また同日に、措置命令の対象となった商品と同一成分であって科学的根拠が同一であるという他の商品88件(DHA・EPA、モノグルコシルヘスペリジン、オリーブ由来ヒドロキシチロソール)に対し、科学的根拠に疑義がある点を指摘し、届出者に回答するよう求めました。その後7月27日に、15件の撤回の申し出があった旨と、撤回の申し出がなかった73件の商品の届出情報とその問い合わせ先等の一覧が同サイトに公表されています。

ガイドライン等の再確認を


 通知では、最新の「ガイドライン」「質疑応答集」に加え、「機能性表示食品に対する食品表示等関係法令に基づく事後的規制(事後チェック)の透明性の確保等に関する指針」に基づいて適切に検証することとされています。この指針では、機能性表示食品の科学的根拠に関する基本的な考え方として「機能性表示食品は、表示される機能性について国が審査を行った上で消費者庁長官が個別に評価をしたものではない。したがって、表示の裏付けとなる科学的根拠が合理性を欠くと認められる場合には、その表示は事後チェックにおいて問題となるおそれがある。」と説明したうえで、科学的根拠として適切とは考えられない例などを掲載しています。
 なおガイドラインについては、7月24日より一部改正案の意見募集が始まっています。上記の届出関連資料に基づいて科学的根拠を再検証する際には、ガイドラインの一部改正案の内容(「システマティックレビューのPRISMA声明(2020年)への準拠」「届出内容の責任の所在の明確化」など)もあわせて確認されるとよいでしょう。


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