「食品期限表示の設定のためのガイドライン」の改正について

By | 2025年6月3日

 本年3月、消費者庁より「食品期限表示の設定のためのガイドライン」が改正されました。「食品ロス削減目標達成に向けた施策パッケージ」(令和5年12月)において、旧ガイドライン(平成17年2月)を期限表示の設定根拠安全係数の設定等の実態を調査し、食品ロス削減の観点から見直すことが示されたことが経緯です。

(1)消費期限又は賞味期限の設定

 実態調査において、消費期限と賞味期限の定義を考慮せず、「5日*」で区別する事例が認められたことから、定義に従い食品の特性等を十分に考慮した上でどちらかを表示する必要がある、としています。定義を考慮すると、消費期限は微生物試験等の安全性に係る試験・検査の結果を優先して設定する期限、賞味期限は理化学試験や官能検査等の品質の試験・検査の結果を優先して設定する期限となります。

*期限表示導入時(平成7年)に「5日」で区別する考え方が通知も平成20年に解消済み。

(2)食品の特性等に応じた客観的な項目(指標)及び基準の設定

 表示責任者は、安全性や品質等に関してその食品を最も理解し、食品の特性や保存状態等を勘案して期限を設定するための客観的な項目(指標)及び基準を科学的・合理的に自ら決定する必要がある、としています。実態調査では、食品の特性にかかわらず一般的な衛生指標である「一般生菌数」、「大腸菌群数」、「大腸菌数」等の項目を用いて評価し、必要以上に短い期限設定をしている例が報告されました。HACCPにより特定された危害要因を踏まえ、低温菌、嫌気性菌などその食品に適切な項目(指標)を決定する必要があります。

(3)食品の特性等に応じた「安全係数」の設定

 旧ガイドラインでは、食品の特性に応じ、1未満の安全係数をかけて、客観的な項目(指標)において得られた期限よりも短い期間を設定することが基本とされ、旧食品表示基準Q&A(加工-22)では、安全係数は「品質のばらつき等が少ないものは0.8以上を目安に設定する」とされていました。しかし、実態調査では0.8未満に設定している品目が約4割も存在し、安全性が十分に担保されている食品にもその特性に応じることなく安全係数を設定している事例が認められています。 新ガイドラインでは安全係数が1未満であることは同様も、食品の特性等によるが、安全係数は1に近づけること、レトルトパウチ食品や缶詰等については安全係数を考慮する必要はないとされています。(新食品表示基準Q&A(期限(事)-9))

(4)その他

 表示責任者は、消費者等から求められた際には、定められた方法に保存した場合にまだ食べることができる期限の目安について、できる限り情報提供するよう努める、としています。

 本ガイドラインを期限表示の設定、食品ロスの削減等にお役立てください。



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谷本 浩之

食品製造の業界に長く在籍した経験を活かし、主に国内と海外から国内に輸入される原材料や添加物の調査業務のほか、食品規格、添加物、食品表示に関するコンサルティング業務に従事しています。
趣味は野球観戦。