食品表示基準の一部改正案に関する意見募集が始まりました~くるみの特定原材料追加と特定遺伝子組換え農産物へのEPA・DHA産生なたねの追加~

By | 2022年11月8日

 2022年10月13日、消費者庁は「食品表示基準の一部改正案」に関する意見募集(パブリックコメント)の開始を公表しました。意見募集の受付締切は11月12日です。

改正の概要


 意見募集要領によると、改正案の概要は以下のとおりです。

  1. アレルギー原因物質を含む食品である「くるみ」については、現在、表示を推奨する品目としているが、即時型食物アレルギーによる健康被害に関する全国実態調査の結果等から表示が必要との方針を得たため、アレルギー表示の対象品目である特定原材料として「くるみ」を追加することとする。
  2. 今後、厚生労働省による安全性審査を経て、エイコサペンタエン酸(EPA)及びドコサヘキサエン酸(DHA)を産生させるために遺伝子組換えが行われたなたねに由来する食品が国内に流通することが見込まれることから、遺伝子組換え表示制度における特定遺伝子組換え農産物としての表示の対象に当該なたねを追加することとする。

アレルゲンの義務表示品目の改正


 アレルゲンの表示事項は、「特定原材料を原材料とする加工食品(当該加工食品を原材料とするものを含み、抗原性が認められないものを除く)及び特定原材料に由来する添加物(抗原性が認められないもの及び香料を除く)を含む食品」において必要となりますが、この特定原材料を定めている別表第十四が改正されます。(改正箇所は下線赤文字

別表第十四(改正前) 別表第十四(改正後)
えび
かに
小麦
そば


落花生
えび
かに
くるみ
小麦
そば


落花生

 くるみはこれまで「特定原材料に準ずるもの」として表示を推奨する品目とされていましたが、表示を義務とする品目に移行する形となります。

EPA・DHA産生なたねの追加について


 遺伝子組換え食品に関する事項は、「別表第十七(対象農産物と加工食品)及び別表第十八(対象形質と加工食品)」の対象において必要となりますが、そのうちの形質を定めている別表第十八が改正されます。(改正箇所は下線赤文字

別表第十八(改正前)

形質 加工食品 対象農産物
ステアリドン酸産生 1 大豆を主な原材料とするもの(脱脂されたことにより、上欄(左)に掲げる形質を有しなくなったものを除く。)
2 1に掲げるものを主な原材料とするもの
大豆
高リシン 1 とうもろこしを主な原材料とするもの(上欄(左)に掲げる形質を有しなくなったものを除く。)
2 1に掲げるものを主な原材料とするもの
とうもろこし

別表第十八(改正後)

形質 加工食品 対象農産物
ステアリドン酸産生 1 大豆を主な原材料とするもの(脱脂されたことにより、上欄(左)に掲げる形質を有しなくなったものを除く。)
2 1に掲げるものを主な原材料とするもの
大豆
高リシン 1 とうもろこしを主な原材料とするもの(上欄(左)に掲げる形質を有しなくなったものを除く。)
2 1に掲げるものを主な原材料とするもの
とうもろこし
エイコサペンタエン酸(EPA)産生 1 なたねを主な原材料とするもの(上欄(左)に掲げる形質を有しなくなったものを除く。)
2 1に掲げるものを主な原材料とするもの
なたね
ドコサヘキサエン酸(DHA)産生

 なたねは別表第十七に対象農産物として掲げられているものの、加工食品については設定がされていません。今回の改正により、「なたねを主な原材料とするもの(及び、これを主な原材料とするもの)」に該当するものについては、形質(EPA・DHA産生)の確認が必要になります。

今後について


 意見募集の改正案では、別表第十四(アレルゲン表示)に関する施行期日と経過措置期間は未定となっております。

(施行期日)
第一条 この府令は、公布の日から施行する。ただし、別表第十四の改正規定は、令和○年○月○日から施行する。
(経過措置)
第二条 前条ただし書に規定する改正規定の施行の日から令和○年○月○日までに製造され、加工され、又は輸入される加工食品(業務用加工食品を除く。)及び同日までに販売される業務用加工食品の表示については、当該改正規定による改正後の食品表示基準別表第十四の規定にかかわらず、なお従前の例によることができる。

 

2022年12月13日、改正案に対する答申が公表されました。経過措置期間は2025年3月31日までです。

(施行期日)第一条 この府令は、公布の日から施行する。
(経過措置)第二条 この府令の施行の日から令和七年三月三十一日までに製造され、加工され、又は輸入される加工食品(業務用加工食品を除く。)及び同日までに販売される業務用加工食品の表示については、この府令による改正後の食品表示基準別表第十四の規定にかかわらず、なお従前の例によることができる。

 現状でアレルゲン表示が7品目のみを対象としている場合は、新たに表示を追加するために原材料規格書の段階から確認が必要になると思います。とりわけ、輸入食品や輸入原材料を取り扱っている場合は、くるみが含まれるかどうかを慎重に確認する必要がある(多くの国では「ナッツ」と一括で管理しているため)といえます。

 くるみは、症例数の増加といった背景を受けての改正です。経過措置期間であっても、消費者からの問い合わせには対応できるよう、原材料規格書などの情報管理について改めて確認することが大切だといえるでしょう。


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川合 裕之

川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2023年12月『食品と開発』(健康メディア.com)「海外の栄養プロファイリングシステムと栄養表示制度」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

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