「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」の一部改定(案)の意見募集が開始されました。

By | 2022年9月2日


 2022年8月9日、消費者庁は「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」の一部改定(案)を作成し公表しました。また同日より9月7日まで、パブリックコメントにて意見を募集しています。一部改定の目的は、「本留意事項の全部改定から年数が経過し、景品表示法及び健康増進法上問題となるおそれの表示への考え方について、より明示的に示すことにより、事業者の適正な広告活動に資するものとする」とされています。以下に、主な改定内容の部分について引用してみたいと思います。

主な改定について(新旧対照表より)


1) 改正により修正または補足されたもの(一部を抜粋)(赤文字下線が改定箇所)

◆明らか食品について、本留意事項の対象となる旨の追記
健康増進法第65条第1項は、錠剤やカプセル形状の食品のみならず、野菜、果物、調理品等その外観、形状等から明らかに一般の食品と認識される物を含め、食品として販売に供する物1に関し、健康保持増進効果等について虚偽誇大な表示をすることを禁止している。

◆「表示」の該当性に係る留意点を補足
・特定の食品や成分の健康保持増進効果等に関する広告等に記載された問合せ先に連絡した一般消費者に対し、特定の食品や成分の健康保持増進効果等に関する情報が掲載された冊子とともに、特定の商品に関する情報が掲載された冊子や当該商品の無料サンプルが提供されるなど、それら複数の広告等が一体となって当該商品自体の購入を誘引していると認められるとき、
・ 特定の食品や成分の名称を商品名やブランド名とすることなどにより、特定の食品や成分の健康保持増進効果等に関する広告等に接した一般消費者に特定の商品を想起させるような事情が認められるとき

◆アフィリエイト広告の表示主体性に係る留意点を補足
このようなアフィリエイトサイト上の表示について、広告主がその表示内容を具体的に認識していない場合であっても、広告主自らが表示内容を決定することができるにもかかわらず他の者であるアフィリエイターに表示内容の決定を委ねている場合など、表示内容の決定に関与したと評価される場合には、広告主は景品表示法及び健康増進法上の措置を受けるべき事業者に当たる。(中略)必要がある。

2) 改正により新規に追加されたもの(一部を抜粋)

◆健康の保持増進効果に係る例示の追加
(1) 「健康の保持増進の効果」
ア 疾病の治療又は予防を目的とする効果:「コロナウイルスの予防に」、「認知症予防」の追加
イ 身体の組織機能の一般的増強、増進を主たる目的とする効果:「アンチエイジング」、「細胞の活性化」、等の追加
ウ 特定の保健の用途に適する旨の効果:「体脂肪を減らすのを助ける」等の追加
エ 栄養成分の効果:「ビタミンDは、腸管でのカルシウムの吸収を促進し、骨の形成を助ける栄養素です」の追加
(3) 「健康保持増進効果等」を暗示的又は間接的に表現するもの
ア 名称又はキャッチフレーズにより表示するもの
「妊活」、「腸活」、「スリム○○」、「減脂〇〇」、「デトックス○○」、「カラダにたまった余分なものをスッキリ」の追加
エ 身体の組織機能等に係る不安や悩みなどの問題事項を例示して表示するもの
「最近、体力の衰えを感じるのは、○○が不足しているせいかもしれません。」、等の追加

◆表示された効果と実証された内容が適切に対応していない例示を追記
例:痩身効果を標ぼうする商品に関し、商品を用いたヒト試験の報告書が提出されたが、内臓脂肪や体重の減少について、実証された内容と表示された効果が著しく乖離していた。
例:特段の運動や食事制限をすることなく摂取するだけで痩身効果が得られることを標ぼうする商品に関し、商品を用いたヒト試験の報告書が提出されたが、ヒト試験の被験者に対して運動や食事制限の介入指導が行われていた。等の追加

◆機能性表示食品事後チェック指針の広告パートの考え方を追記
(2) 機能性表示食品
ア 届出内容を超える表示
例:届出表示の内容が「肥満気味の方の内臓脂肪を減らすのを助ける機能性がある。」であるにもかかわらず、表示全体から、あたかも、特段の運動や食事制限をすることなく、誰でも容易に腹部の痩身効果が得られるかのように表示すること
エ 表示の裏付けとなる科学的根拠が合理性を欠いている場合
なお、機能性表示食品については、「機能性表示食品に対する食品表示等関係法令に基づく事後的規制(事後チェック)の透明性の確保等に関する指針」に景品表示法上問題となるおそれのある広告その他の表示として虚偽誇大表示等に当たるおそれのある考え方が詳細に示されているので、参照されたい。

◆「健康保持増進効果等」の例示を追記
2 保健機能食品以外の健康食品(いわゆる健康食品)において問題となる表示例
(1) 解消に至らない身体の組織機能等に係る不安や悩みなどの問題事項等の例示
健康食品が有する健康保持増進効果等では解消に至らない疾病症状のような身体の組織機能等に係る不安や悩みなどの問題事項を例示して表示すること(中略)。また、健康食品が有する健康保持増進効果等ではおよそ得られない身体の組織機能等の変化をイラストや写真を用いることなどにより表示すること(中略)。
(4) 最上級又はこれに類する表現を用いている場合
(中略)例えば「ダイエット部門売上No.1」、「顧客満足度ランキング第1位」などと強調する表示(いわゆる「No.1表示」)が行われることがあるが、その商品等の内容の優良性又は取引条件の有利性を表すNo.1表示が合理的な根拠に基づかないなど、事実と異なる場合(中略)。
(5) 体験談の使用方法が不適切な表示(赤文字下線部分の追加)
また、「個人の感想です」、「効果を保証するものではありません」、「軽い運動を併用した結果です」等の表示をしたとしても、虚偽誇大表示等に当たるか否かの判断に影響を与えるものではなく、本件商品に含まれる成分の効果を強調する表示や、体験談等を含む表示内容全体から、当該商品に健康保持増進効果等があるものと一般消費者に認識されるにもかかわらず、実際にはそのような効果がない場合(中略)。

◆打消し表示に係る留意点を補足
体験談において健康食品の効果に言及されている場合において、一般消費者の誤認を招かないようにするためには、当該体験談を表示するに当たり事業者が行った調査における①体験者の数及びその属性、②そのうち体験談と同じような効果が得られた者が占める割合、③体験者と同じような効果が得られなかった者が占める割合等を明瞭に表示することが推奨される。

今後の予定について


 2022年9月7日までの意見募集期間ののち、結果の公示を経て、12月1日には公表される予定です。健康や機能性に関する強調表示をされている食品を取り扱いの方には重要な改定になると思われます。まずは意見募集の一部改定案について、事前に確認しておかれるとよいと思います。


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川合 裕之

川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2023年12月『食品と開発』(健康メディア.com)「海外の栄養プロファイリングシステムと栄養表示制度」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
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