Author Archives: 関 珠海

About 関 珠海

農学を専門とし、主に国内から海外に輸出される原材料や添加物の調査業務のほか、食品規格、添加物、食品表示に関するコンサルティング業務に従事しています。
趣味は読書と猫と過ごすこと。

EU、代替肉食品への食肉用語の表示を実質的に禁止へ

 EUにおいて「肉」など食肉用語の定義を制定し、定義を満たさない食品への食肉用語表示を禁止する改正規則が採択され、2029年8月19日より適用される運びとなりました。実質的にプラントベース食品や培養肉食品も食肉用語の表示禁止対象となります。これは食品市場における農家の地位向上を目的とした広範な規制の一環であり、消費者がプラントベース食品などを食肉製品と誤認してしまうのを避けることが目的です。

 この改正規則により、農産物市場に関する規則であるRegulation (EU) No 1308/2013に以下の規定が追加されます(一部抜粋):

  • 「肉(meat)」とは動物の食用部分を意味する。
  • 「食肉製品(meat products)」とは食肉から派生した製品を意味する。その製造に必要な物質は添加可能だが、それらの物質は食肉製品の全部または一部を代替する目的で使用されてはならない。
  • 「肉」という用語および指定する31種類の食肉用語は、細胞培養または組織培養から構成、分離、生産される食品を指すために使用してはならない。

 改正規則で指定された31種類の食肉用語にはbeef(牛肉)、pork(豚肉)、poultry(家禽肉)、steak(ステーキ)、liver(レバー)などが含まれる一方で、burger(バーガー)、sausage(ソーセージ)、ham(ハム)などは含まれず、規制対象外となっています。

 食肉用語に関する表示規制についてはEU内部でも賛否両論があり、特にフランス国内ではこれまでも独自の法案の公布と取り下げを繰り返してきました(2023年までの動向についてはこちらをご参照ください)。

 2024年2月、フランス政府はプラントベース食品に対して21種の肉製品関連用語の使用を禁止または制限する政令(2022年に公布後、中断されていた)を再公布しました。しかし同年10月にEU司法裁判所がその政令を容認しない旨の判断を下し、無効となりました。その際、EU司法裁判所は判断の理由として「法令で内容を定義している名称でなければ、伝統的に動物由来と連想する食品名称をプラントベース食品に使用することを禁止することはできない」としていました。

 なお、日本では「プラントベース食品等の表示に関するQ&A」により、表示全体から食肉であるかのように誤認する表示でない(例:「大豆を使用しています」「お肉は使用していません」)限りは景品表示法上で問題とはならないこと、そして原材料名は食品表示法に基づく食品表示基準により「最も一般的な名称」(例:大豆ミートの場合は「代替肉」ではなく「大豆加工品」と表示)とすることとされています。EUやフランスと比較すると表示規制の枠組みが異なることがわかります。

 今回取り上げたEUの食肉の定義を満たさない食品をはじめとして、プラントベース食品などの表示要件は国によってさまざまであり、議論が進んでいる段階の国もあるため、輸出をお考えの際は十分な注意が必要です。



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シンガポールにおけるNutri-Grade(栄養グレード)表示義務対象の拡大

 シンガポール保健省(MOH)は4月6日、2027年半ばよりNutri-Grade表示義務対象を、既に施行されている飲料に加えて塩、ソース、調味料、インスタントラーメン、食用油にも拡大することを発表しました。Nutri-Grade表示とは、製品を特定の栄養素含有量によって評価し、栄養成分義務表示に加えてその評価を包装前面に表示することで、栄養表示に関して消費者にわかりやすく訴求する取り組みです。

 背景にはシンガポールが抱える国民の健康状態への懸念があります。2022年度の国家栄養調査によると、国民の一日当たりの平均ナトリウム摂取量が推奨量の2倍に近いほか、飽和脂肪酸の摂取割合が推奨割合を超過しているという現状があります。これらの物質は高血圧等の慢性疾患の原因となるため、その主な摂取源である塩、ソース、調味料、インスタントラーメン、食用油にもNutri-Grade表示規則を適用することで、消費者がより健康的な選択を行えるよう支援することが目的です。既に糖類と飽和脂肪酸の含有量に基づく飲料へのNutri-Grade表示規則は2022年より施行されており、この規則の対象を拡大した形です。

 対象は小売店で販売される包装済みの塩、ソース、調味料、インスタントラーメン、食用油の5品目23サブカテゴリ―です。カテゴリーごとに評価対象となる栄養素(ナトリウム、飽和脂肪酸、糖類)の組み合わせと基準値が設定されており、これらの含有量が少ない方からA、B、C、Dのグレードに分類されます。例えばしょうゆの評価対象はナトリウムと糖類で、マスタードの評価対象はナトリウム、飽和脂肪酸、糖類です。評価対象栄養素が複数ある製品の最終評価には、そのうち最も低いグレードが適用されます。

 CまたはDのグレードに分類された製品はNutri-Grade表示をパッケージ前面に表示する義務が課されます。さらに、Dのグレードに分類された製品の広告は実物、オンラインを問わず禁止されます。なお、AまたはBのグレードに分類された製品のNutri-Grade表示は任意です。

 今回の発表に伴い、既に施行されている飲料への表示も含めて表示方法が更新され、グレードの表示に加えてその最終評価を決定する懸念栄養素の名称が明記されることになります(図1)。

図1(出典

 Nutri-Grade表示を含む「容器包装前面栄養表示(FOPNL)」は、消費者に分かりやすく栄養情報を提供することによって消費者の栄養摂取への理解と選択を広げる狙いで日本を含む世界的なトレンドとなっています。明確な施行時期は未発表ですが、シンガポールへの輸出を既にされている、または新たに検討されている事業者の方は、製品が対象品目に該当するのかどうかご確認の上、対応されることをお勧めします。



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