シンガポールにおけるNutri-Grade(栄養グレード)表示義務対象の拡大

By | 2025年7月4日

 シンガポール保健省(MOH)は4月6日、2027年半ばよりNutri-Grade表示義務対象を、既に施行されている飲料に加えて塩、ソース、調味料、インスタントラーメン、食用油にも拡大することを発表しました。Nutri-Grade表示とは、製品を特定の栄養素含有量によって評価し、栄養成分義務表示に加えてその評価を包装前面に表示することで、栄養表示に関して消費者にわかりやすく訴求する取り組みです。

 背景にはシンガポールが抱える国民の健康状態への懸念があります。2022年度の国家栄養調査によると、国民の一日当たりの平均ナトリウム摂取量が推奨量の2倍に近いほか、飽和脂肪酸の摂取割合が推奨割合を超過しているという現状があります。これらの物質は高血圧等の慢性疾患の原因となるため、その主な摂取源である塩、ソース、調味料、インスタントラーメン、食用油にもNutri-Grade表示規則を適用することで、消費者がより健康的な選択を行えるよう支援することが目的です。既に糖類と飽和脂肪酸の含有量に基づく飲料へのNutri-Grade表示規則は2022年より施行されており、この規則の対象を拡大した形です。

 対象は小売店で販売される包装済みの塩、ソース、調味料、インスタントラーメン、食用油の5品目23サブカテゴリ―です。カテゴリーごとに評価対象となる栄養素(ナトリウム、飽和脂肪酸、糖類)の組み合わせと基準値が設定されており、これらの含有量が少ない方からA、B、C、Dのグレードに分類されます。例えばしょうゆの評価対象はナトリウムと糖類で、マスタードの評価対象はナトリウム、飽和脂肪酸、糖類です。評価対象栄養素が複数ある製品の最終評価には、そのうち最も低いグレードが適用されます。

 CまたはDのグレードに分類された製品はNutri-Grade表示をパッケージ前面に表示する義務が課されます。さらに、Dのグレードに分類された製品の広告は実物、オンラインを問わず禁止されます。なお、AまたはBのグレードに分類された製品のNutri-Grade表示は任意です。

 今回の発表に伴い、既に施行されている飲料への表示も含めて表示方法が更新され、グレードの表示に加えてその最終評価を決定する懸念栄養素の名称が明記されることになります(図1)。

図1(出典

 Nutri-Grade表示を含む「容器包装前面栄養表示(FOPNL)」は、消費者に分かりやすく栄養情報を提供することによって消費者の栄養摂取への理解と選択を広げる狙いで日本を含む世界的なトレンドとなっています。明確な施行時期は未発表ですが、シンガポールへの輸出を既にされている、または新たに検討されている事業者の方は、製品が対象品目に該当するのかどうかご確認の上、対応されることをお勧めします。



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関 珠海

農学を専門とし、主に国内から海外に輸出される原材料や添加物の調査業務のほか、食品規格、添加物、食品表示に関するコンサルティング業務に従事しています。
趣味は読書と猫と過ごすこと。