“くるみ”のアレルゲン表示、推奨から義務化への動きについて(その2)~令和3年度即時型食物アレルギーによる健康被害に関する全国実態調査報告書~

By | 2022年7月15日
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 2022年6月6日に開催された第67回消費者委員会食品表示部会において、”くるみ”のアレルゲン表示の義務化についての見通しが発表されました。また、その背景となった「令和3年度即時型食物アレルギーによる健康被害に関する全国実態調査報告書」について、あわせて取り上げてみたいと思います。

ポイント

  • 今回調査(2020年)より、木の実類が小麦を抜いて主要3大原因食物の1つとなった
  • 木の実類の中でもくるみの増加が著しく、次いでカシューナッツが増加している
  • くるみを義務表示対象品目へ指定する改正案は、今年度内に諮問される見通し

これまでの経緯について


 消費者庁が「くるみの義務表示対象品目への指定」の方針を公表したのは、2019年7月5日に開催された第56回消費者委員会食品表示部会においてです。当時の調査(「2018年度即時型食物アレルギーによる健康被害の全国実態調査」)の結果をとりまとめた報告書において、過去2回と比較して、アーモンドとくるみの症例数が増加していたことが背景にあります。
 その後、アーモンドは同年(2019年)9月に推奨表示品目に追加され、くるみについては「今回の症例数が一過性のものでないかの確認が必要」「義務表示対象品目に指定する場合、実行担保の観点から、試験方法の開発と妥当性評価が必要」と検討課題が整理されました。また、その後2021年2月より始まった「食物アレルギー表示に関するアドバイザー会議」において、調査などの準備と検討が進められました。
 そして調査の結果を受け、くるみの義務表示対象品目への指定時期について、具体的な目標(今年度内の諮問を目指す)が示されたという経緯です。

今回調査について


 第67回食品表示部会資料「アレルギー物質を含む食品の表示について」において、今回の調査の概要が以下のとおり整理されていますので、その一部をこちらに抜粋します。

調査方法

  • 調査対象は“食物を摂取後60分以内に何らかの反応を認め、医療機関を受診した患者”とし、食物経口負荷試験や経口免疫療法(OIT)により症状が誘発された症例は調査対象としていない。
  • 調査期間は令和2年1月から12月で、3か月毎にはがきを郵送する方法で行い、はがきでの報告又は要望に応じてメールでも報告を受けた。

調査対象
合計6,677例 ※なお、報告のあった症例のうち、原因物質が特定されていない414例、原因物質が食物以外のもの83例(アニサキス70例、ダニ13例)、年齢性別や治療・転帰、初発/誤食が不明な症例やOIT時の症例100例を除外し、6,080例を解析対象とした。

原因食物
鶏卵2,028例(33.4%)、牛乳1,131例(18.6%)、木の実類819例(13.5%)であった。前回の調査まで原因食物の上位3品目は鶏卵・牛乳・小麦であったが、今回の調査では木の実類の割合が増加し、第3位となった(前回8.2%、第4位)。木の実類の内訳は、くるみが463例で最も多く、以下、カシューナッツが174例、マカダミアナッツが45例であった。

ショック症状
ショック症状を引き起こした原因食物の上位3品目は、これまで鶏卵・牛乳・小麦であったが、木の実類の割合が増加し、第3位となった(前回12.8%、第4位)。木の実類の内訳としては、くるみが58例で最も多く、単独では落花生46例より上位であった。次いで、カシューナッツが30例であった。

考察と結論


 同じく、第67回食品表示部会資料「アレルギー物質を含む食品の表示について」において、考察と結論が以下のとおり整理されています。

木の実類の増加傾向について2005年以降の傾向をみると、上位品目の鶏卵・牛乳・小麦がほぼ横ばいであるのに対して2014年以降、木の実類は増加している。

木の実類の増加傾向について2005年以降の傾向をみると、上位品目の鶏卵・牛乳・小麦がほぼ横ばいであるのに対して2014年以降、木の実類は増加している。

木の実類の内訳をみると、クルミの増加が著しい。

木の実類の内訳をみると、クルミの増加が著しい。

  1. 今回の調査件数は6,080例であり、前回(4,851例)に引き続き増加傾向であった。
  2. 前回調査(2017年)まで原因食物の上位3品目は鶏卵・牛乳・小麦であったが、今回の調査では木の実類の割合が増加し、小麦を抜いて主要3大原因食物の一つとなった。
  3. 木の実類の中でもくるみの増加が著しく、次いでカシューナッツが増加している。
  4. 初発例の原因食物では、0歳群は鶏卵、牛乳、小麦の順であったが、幼児期、学童期では上位3位以内に木の実類が入っていた。
  5. 即時型食物アレルギーの原因食物としての木の実類の増加は一時的な現象ではない。

 以上より、くるみについて「今回の症例数が一過性のものでないかの確認が必要」とされていたところ、「くるみの増加が著しく、また一時的な現象ではない」と考えられることから、義務表示となる特定原材料に追加される方針になりました。

今後の予定について


  消費者庁は、少なくとも今年度内を目標に、消費者委員会に対し食品表示基準の改正にかかる諮問を行う予定としています。また以前に検討課題とされていた「試験方法の開発と妥当性評価」については、来年度には完成する目標で現在開発を進めているとされていることから、2023年3月末までにくるみの表示義務対象品目へ指定する食品表示基準改正がなされる予定であると推測することができるかと思います。
 食品表示の業務に関わる方には、それまでの間に今回の調査結果報告書に目を通しておかれることをお勧めしたいと思います。くるみ以外にも、カシューナッツの増加についても再確認することができるほか、初発と誤食のケースの割合や、誤食のうち食品表示ミスのケースの割合についても再確認することができます。今後の確認業務に活用していただければと思います。


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配合表等の規格書をもとに、原材料及び添加物の国内または海外各国における使用基準との適合性を検証します。また原材料名やアレルゲン、栄養成分等の表示案と表示基準との適合性を検証します。
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川合 裕之
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2019)

【寄稿】
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~

【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近のウェビナー実績
・2022年4月26日 添加物不使用表示ガイドラインについて(3)各類型(公表版)の再確認と海外の動向について
・2022年4月7日 プラントベース(植物由来)食品の表示について~国内および海外表示制度の動向~
・2022年3月24日 添加物不使用表示ガイドラインについて(2)
・2022年3月17日 遺伝子組換え”からしな”の追加と「遺伝子組換えでない」表示の経過措置期間について
・2022年2月24日 添加物不使用表示ガイドラインについて(1)

■最近の講演実績
・2021年12月10日 食品表示関連規則の改正状況と今後の「食品表示」実務上のポイント
 株式会社ウェルネスニュースグループ様主催。
・2021年9月16日 新たな原料原産地表示のポイント~経過措置期間終了(令和4年3月末日)に向けて~
 株式会社インフォマート様主催。
・2021年5月24日 諸外国における食品安全法規制の違いにどう対処するか
 NPO法人食の安全と安心を科学する会(SFSS)様主催。
・2020年9月17日 表示ミスを防ぐための食品表示実務のポイント~消費者の健康と安全・安心を守ろう~
 越谷市 保健医療部 保健所 生活衛生課様主催。


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