くるみの義務表示化の動きについて

By | 2021年3月5日

 0-21アレルギー表示についての消費者庁における新たな動きとして、このほど第1回食物アレルギー表示に関するアドバイザー会議(2021年2月15日)において、専門家によるくるみの義務表示化に向けた意見交換が行われました。そこで、今回行われた会議の内容から、くるみの義務化に至るまでの経緯を振り返りながら、義務化に向けて打ち出された今後の検討課題を見ていきたいと思います。

 アレルゲンを含む食品に関する表示について、特定原材料に準ずるものとしてアーモンドが追加されてから1年半(令和元年9月19日付 消食表第322号)、皆様におかれましても、これに伴い、取り扱い商品に対する原材料の配合やそれに伴う表示への対応を進められたことと存じます。
 以下の表の通り、アーモンドについては、これまでの特定原材料に準ずるもの20品目へ、21品目目として追加されました。これに対しくるみは、現在は特定原材料に準ずるもの21品目の一つとしてとしてリストアップされているものが、既存の特定原材料7品目に次ぐ8品目目として検討されていることになります。

分類・規定 品目 備考 表示について
特定原材料(7品目)
(+1品目を検討中)
えび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ)
(+くるみを検討中)
特に発症数、重篤度から勘案して表示する必要性の高いもの 表示は義務
特定原材料に準ずるもの(21品目)
(-1品目=くるみを特定原材料として検討中)
アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン 症例数や重篤な症状を呈する者の数が継続して相当数みられるが、特定原材料に比べると少ないもの 表示を奨励
(任意表示)

 まず、くるみを義務表示対象品目として追加することに至った経緯としては、くるみが原因とされるアレルギーによる症例数のここ数年の急増がある様です。会議資料として、以下の情報が挙がっていますが、確かにその数は顕著に増加しています。
 また、同資料内の詳細データによると、その平成30年度の症例数は、即時型症例・ショック症例とも鶏卵、牛乳、小麦に次いで4番目で、落花生やえびなどの他の特定原材料より増えている結果となっていました。

(「【資料2】 くるみの義務表示化の経緯等について」より抜粋)

5. くるみの義務表示対象品目への追加に係る検討
令和元年7月の消費者委員会食品表示部会において、これまでの全国実態調査報告及び平成30年度の全国実態調査報告書を踏まえて、くるみの義務表示対象品目への追加に向けた検討に着手することについて報告を行った。

原因物質 区分 24年度 27年度 30年度 対応

くるみ

即時型症例数

40

74

251

義務化を視野に入れた検討

ショック症例数

4

7

42

 こちらの情報は、以前に以下の投稿でもご紹介させて頂いておりますので、併せてご覧頂ければと思います。
アレルゲンの推奨表示対象に“アーモンド”を追加 “くるみ”は推奨から義務化へ

 また、義務化に当たっての留意事項としては上記報告が令和元年7月になされた時点では、以下の点が挙げられておりました。

  • 今回の症例数が一過性のものでないかの確認が必要
  • 義務表示対象品目に指定する場合、実行担保の観点から、試験方法の開発と妥当性評価が必要

 上記の経緯に基づき、今回の会議で検討課題が下記の通り挙げられ、最優先事項として取り組んでいくこととなりました。

1. くるみの義務表示化に向けた検討

  1. 必要な調査事業の洗い出し
  2. 調査事業等の結果の解析と方針のとりまとめ

 会議資料に記載されていた令和元年7月5日の議事録を見る限り、今後の課題として、まずくるみによるアレルギーを検知する為の試験方法の開発とその検証が急務とされたものと思われます。

 上述の通り、今回の会議では、くるみの義務表示化の具体的な時期は示されませんでした。まずは義務化に向けての調査がこれからスタートする段階の様です。
 しかしながら、各食品への原材料としてくるみを配合されている、若しくは配合を検討されていく皆様におかれましては、今回の会議でくるみの義務化の検討がスタートしたことを機に、レシピの再検討や表示内容の見直し等、早めに対応を開始されてはどうでしょうか。特に既存の特定原材料7品目のみのアレルギー表示を行われている場合は表示の検討が必要かと思います。
 また、アーモンドを含めた特定原材料に準ずる品目を含めた表示の再検討にもよい機会かもしれません。


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亀山 明一

亀山 明一

翻訳・調査担当株式会社ラベルバンク
添加物製剤の業界に長く在籍した経験を活かし、添加物の調査業務を中心に、調査結果の英文と日本語との整合性確認業務に従事しています。また原材料の使用基準や食品表示基準などについて、英語でのセミナー講師も担当しています。
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