添加物不使用表示の類型項目案が公表されました

By | 2021年12月6日

【最終更新日:2021年12月13日】

2021年12月9日に「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン(案)」が公表されました。「前回検討会からの変更点」の資料も公表されていますので、ご確認ください。

 2021年11月18日、食品添加物の不使用表示に関するガイドライン検討会において消費者庁は「誤認を生じさせるおそれのある食品添加物の不使用表示の類型項目(案)」を公表しました。以下に、案の概要について整理してみたいと思います。

背景と目的


 2020年2月27日に公表された「食品添加物表示制度に関する検討会報告書(案)」において、「表示禁止事項に当たるかどうかのメルクマールとなるガイドラインを策定すること」と整理されたことが背景となっています。目的は、「食品表示基準で禁止されている表示すべき事項の内容と矛盾する又は内容物を誤認させるような“無添加”等の表示をなくすこと」です。

 そして今回の検討会において①~⑪の類型項目案が示され、これらが「食品表示基準第9条に規定された表示禁止事項に該当するおそれのある表示」として以下のいずれに該当するかが検討されている状況です。

(1)第9条第1項の規定に該当するおそれのある表示
(2)第9条第1項の規定に直ちに該当しないものの、消費者への誤認を生じさせるおそれのある表示

類型項目の案


 以下が、「誤認を生じさせるおそれのある食品添加物の不使用表示の類型項目(案)」として示された①~⑪の類型項目です。

No. 概略 詳細
単なる「無添加」 無添加となる対象が不明確
例:単なる「無添加」の表示
食品表示基準に規定されていない用語 無添加あるいは不使用と共に用いる用語が食品表示基準において規定されていない
例:「人工甘味料不使用」等、人工、合成、化学調味料、天然等の用語を使用
添加物の使用が法令で認められていない 当該食品に対して添加物の使用が法令上で認められていない
例:清涼飲料水に「ソルビン酸不使用」/食品表示基準別表第5において名称の規定をもつ食品であり、特定の添加物を使用した場合に、同別表第3の定義から外れる当該添加物を無添加あるいは不使用と表示
※清涼飲料水へのソルビン酸の使用は使用基準違反
一切の添加物の不使用を想起 添加物を使用しているのに、添加物が全く使用されていないことを想起させる
例:大きく「無添加」と表示した側に小さく「保存料、着色料」の表示(保存料、着色料以外は使用)
同一機能・類似機能(添加物) 「〇〇無添加」、「〇〇不使用」としながら、〇〇と同一機能、類似機能を有する他の添加物を使用している
例:「保存料不使用」としながら日持ち向上目的で添加物を使用/合成着色料不使用としながら既存添加物の着色料を使用
同一機能・類似機能(原材料) 「〇〇無添加」、「〇〇不使用」としながら、〇〇と同一機能、類似機能を有する原材料を使用している
例:化学調味料を使用していない旨の表示をしながら、原材料として、アミノ酸を含有する抽出物を使用/乳化剤を使用していない旨を表示しながら卵黄など乳化作用をもつ原材料を使用
健康、安全と関連付ける 無添加あるいは不使用を健康や安全の用語と関連付ける
例:体にいいことの理由として無添加あるいは不使用を表示/安全であることの理由として無添加あるいは不使用を表示
健康、安全以外と関連付ける 健康、安全以外の、賞味期限及び消費期限、添加物の用途、おいしい等と関連付ける
例:「保存料不使用なのでお早めにお召し上がりください」/製品が変色する可能性の理由として着色料不使用を表示/おいしい理由として無添加あるいは不使用を表示
添加物の使用が予期されていない 消費者が通常その食品に添加物が使用されていることを予期していない
例:食品元来の色を呈している食品に「着色料不使用」/同種の商品が一般的に当該添加物を使用していないことから、消費者が当該添加物の使用を予期していない商品に対して、当該添加物の不使用を表示
強調 過度に無添加あるいは不使用の文字等を使用している
例:場所を変えて複数回、〇〇を使用していない旨を記載する/一括表示欄よりも大きな文字や目立つ色を使用して「〇〇不使用」
加工助剤、キャリーオーバー 加工助剤やキャリーオーバーとして使用されている(又は使用されていないことが確認できない)
例:最終製品に「保存料不使用」の表示をしているが、原材料に保存料を使用している/原材料の製造工程において添加物が使用されていないことが確認できないため、自社の製造工程に限定する旨の記載と共に無添加あるいは不使用を表示

今後の注意点


 「食品表示基準第9条に該当するか否かの確認(案)」において、①②③⑤⑥⑦⑧⑨⑪は上記1(表示禁止事項に該当するおそれ)に該当し、④⑩は2(消費者への誤認を生じさせるおそれ)に該当するとして、それぞれの詳細について整理がされています。以下に、②と⑤⑥、⑦⑧について同資料の「消費者に誤認を生じさせるおそれが高いと考えられる表示の詳細」より注意点を抜粋したいと思います。

 【②食品表示基準に規定されていない用語】として、「化学調味料不使用」の用語は使用できなくなる見込みです。「食品表示基準において、添加物の表示は化学的合成品と天然物に差を設けず原則として全て表示することとし、次長通知でも、添加物の表示において“天然”又はこれに類する表現の使用を認めていない」点に注意が必要です。

 【⑤同一機能・類似機能(添加物)】と【⑥同一機能・類似機能(原材料)】については、分類の背景として「コーデックスにおいては、同程度に顕著な表現で明示されている場合を除き、当該品に同等な特質を与える他の物質により代替されている場合、強調表示を用いることができない」ことが引用されている点に注意が必要です。また今後、どの程度まで具体例が追加されるのかも、実務上のポイントになると思われます。

 【⑦無添加あるいは不使用を健康や安全の用語と関連付ける】類型は、「添加物は、安全性について評価を受け、人の健康を損なうおそれのない場合に限って国において使用を認めていることから、事業者が独自に健康及び安全について科学的な検証を行い、それらの用語と関連付けることは困難」とされています。

 最後に【⑧健康、安全以外の、賞味期限及び消費期限、添加物の用途、おいしい等と関連付ける】類型については、「おいしい理由として添加物不使用表示をする際に、おいしい理由と添加物不使用であることとの因果関係を説明できない場合には、実際のものより優良又は有利であると誤認させるおそれがある」とされている点に注意が必要といえるでしょう。

 2022年3月末までを目処に、ガイドラインの公表と関連する食品表示基準Q&Aの見直し、そして関連する公正競争規約の改定も発表される見通しですので、まずはこちらで取り上げた資料の詳細を確認されるとよいと思います。

【2021年12月13日 追記】

 2021年12月9日に「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン(案)」が公表されました。
「前回検討会からの変更点」の資料も公表されていますので、ご確認ください。

<主な変更点>

  • 「食品表示基準第9条に規定された表示禁止事項に該当するおそれが高いと考えられる表示」に一本化
  • 11の類型項目のうち旧④と旧⑩を統合し、10の類型項目に再編

参照:第7回食品添加物の不使用表示に関するガイドライン検討会(2021年12月9日)

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川合 裕之

川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2023年12月『食品と開発』(健康メディア.com)「海外の栄養プロファイリングシステムと栄養表示制度」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
 一般財団法人食品産業センター様主催。
・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
 千代田保健所様主催。
・2023年11月8日 添加物の不使用表示について
 株式会社インフォマート様主催。
・2023年10月12日~13日 海外輸出向け食品の表示(添加物、栄養成分等)について
 公益社団法人日本食品衛生学会様主催。
・2023年6月15日 添加物の不使用表示について
 株式会社インフォマート様主催。

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