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亀山 明一

About 亀山 明一

添加物製剤の業界に長く在籍した経験を活かし、添加物の調査業務を中心に、調査結果の英文と日本語との整合性確認業務に従事しています。また原材料の使用基準や食品表示基準などについて、英語でのセミナー講師も担当しています。
趣味は外国文化に触れることと旅行。

【最近の講演実績(Webセミナー)】
・2020年10月20日 Regulatory Requirements of Food Ingredients/Additives Used in Japan
 ChemLinked(REACH24Hコンサルティンググループ)様主催。

>> 講演・セミナーの詳細はこちら(英語サイト)

英国における食品表示に見る「環境主張」を行う際の注意事項について


 2024年7月、英国の広告基準協議会(以下ASAと示します)は「Environmental claims in food advertising」を公表し、肉、乳製品、植物由来の食品表示を通して「環境主張」を行う際のアドバイスを行っているのでご紹介させて頂きたいと思います。

 ASAが最近実施した、肉、乳製品、植物由来の食品の環境主張に関する消費者調査では、広告の文脈で特定の「グリーン」または「ナチュラル」という用語や視覚イメージを使用すると、一連の連想が生まれ、ブランドまたは製品の環境、動物福祉、健康によいことなどについての強い憶測が呼び起こされる可能性があることが示されました。この調査結果を受けてASAは、特定の描写と現実の間に誤解を招くような乖離を生むほど、そのようなストーリーが行き過ぎないように注意する必要があるとしています。

 具体的には、写真を使って環境主張を行う場合は、描写する現実世界の環境で撮影または撮影されるべきとしており、これが実現できない場合は、正当な製品のストーリーを超える形で、現実世界での農畜産の慣行および条件の性質(視覚的または言語的)を誇張しないように特に注意する必要があるとしています。例えば、自社の製品において、畜産動物を実際に「放し飼い」していない場合、あたかもそうであるかの様にそのことを示唆しないように注意する必要があるということになります。そして最終的にASAは「環境主張」について、すべての広告と同様に、直接的または暗示的、書面または視覚的を問わず、すべての主張に対して証拠を保持する必要があると結んでいます。

 この「環境主張」に関連して、日本でも環境省がガイドライン:「環境表示ガイドライン」を設定しています。本ガイドラインでは、適切な環境表示の条件として、根拠に基づく正確な情報であること、消費者に誤解を与えないものであること、環境表示の内容について検証できること、あいまい又は抽象的でないことの要件を満たす必要があるとしています。

 このほか、米国連邦取引委員会によるEnvironmental Claims: Summary of the Green Guides (FTC)、欧州委員会(European Commission(EC))によるProducts – labelling rules and requirements (EC)でも、環境主張についてそれぞれガイドラインや規制を設けています。

 またアジアにおける「環境主張」に関する動きの一つとして、韓国では、韓国公正取引委員会(KFTC)が、環境関連の表示および広告の審査に関するガイドラインを改正し、実態がないのに環境に配慮しているように見せる、いわゆる「グリーンウォッシュ」に対する規制を強化する動きがあった様であり、今後も各国の「環境主張」に対する動きは注意して見ておく必要がありそうです。

 環境問題への関心がますます高まっていく中で、この「環境主張」という強調表示を積極的に取り入れる動きが加速しそうです。今後各国の関連規制に従って、この様な表示を行う際に、今回の情報をお役に立てて頂ければ幸いです。


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食品表示基準に対する各国の昨今の動向について(米国・オーストラリア・カナダ)


 食品表示基準に対する動向について、米国・オーストラリア・カナダについて以下の通りまとめてみました。

米国


■昨今の動向
 5月16日、「主要食物アレルゲンの表示と交差接触(cross-contact)に関する法令遵守政策ガイドの草案」が食品医薬品庁(FDA)より発表されました。

■概容
 本草案では、当該製品と同一の工場内やラインで製造される他の製品に原材料として含まれるアレルゲンとの交差接触(cross-contact)管理に関するFDAの実施方針が明記されています。

 いわゆるPrecautionary allergen labelling(=PAL 予防的アレルゲン表示)として、これらの交差接触の可能性を任意で表示する“may contain”と表示を行うことよりも、交差接触を未然に防ぐ管理指針のほうが大切であるという、米国の考え方が浮き彫りとなった草案になっていると思います。なぜFDAがこの様なスタンスを取るに至ったのかについての背景等、詳細はFDAサイトをご参照下さい。

オーストラリア


■昨今の動向
 新たなアレルギー表示基準が2021年2月25日に改訂され、現在はその移行期間となっており、期限は2024年2月25日までとなっています。

■概容
 Food Standards Codeにおいて、アレルゲンとなる原材料は、特定の必要な名称を用いて表示することが義務づけられています。
詳細はFSANZサイトをご参照下さい。

 今回の新基準により、これまで一括りで表示されていたtree nuts(木の実)、molluscs(軟体動物)、cereals(穀物)はすべて該当する原材料名を個別に表示しなければならなくなりました。

カナダ


■昨今の動向
 2023年6月現在、カナダ食品検査機関(CFIA)が定めた表示基準がそれぞれ以下の通り移行期間中です。

  • 2016年12月14日に施行された栄養成分表示と原材料リストに関する基準→移行期限2023年12月14日(移行期間の新基準への各企業の対応により措置の可能性。詳細は下記)
  • 2022年7~11月に施行された栄養成分表示に関する基準→移行期限2025年12月31日(2026年1月より適用開始)

■概容

  • 2016年12月14日に施行された栄養成分表示と原材料リストに関する基準:
    糖類のグループ化、着色料などに関する内容になっています。詳細は弊社過去の記事をご覧ください。
  • 2022年7~11月に施行された栄養成分表示に関する基準:
    FOPにおける栄養表示に関する修正並びに栄養強調表示およびその基準(詳細)、甘味料の義務表示を修正しています(詳細)。
    栄養表示のための基準値表における、特定の年齢層のカリウムとナトリウムの数値を修正しています(詳細)。

 移行期限が2023年12月14日となっている表示基準については、本来2022年12月14日だったところ、COVID-19の影響を考慮し移行期間が延長となったものです。但し、延長となった、2022年12月15日から2023年12月14日までの期間、詳細な移行計画を立てていない非遵守企業には、CFIAによる措置が検討されることになっています。

 以上が昨今の動向となりますので、それぞれの詳細を見ておいて頂ければと思います。ちなみに上述のオーストラリアのアレルギー表示基準においても、Precautionary allergen labelling(=PAL 予防的アレルゲン表示)についての記載がありますが、こちらでは交差接触についての表示は、Food Standards Codeでの規制はないとしています。但し、表示ではなく交差接触を未然に防ぐ管理指針等への見直しの可能性については、今後も注視していく必要があるかと思います。


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諸外国に見る水産物の名称について


 産地や名称の表示について、昨今何かと話題に上ることが多い水産物ですが、その名称の表示は、日本では「魚介類の名称のガイドライン」に従って表示されることとされています。では諸外国ではどの様なルールに基づき、その表示を行っているのでしょうか。EU、米国、カナダ、オーストラリア/ニュージーランドのケースを見てみたいと思います。

「魚介類の名称のガイドライン」(日本)


 日本では、魚介類の名称は「魚介類の名称のガイドライン」(食品表示基準Q&A 別添)に記載されている標準和名の表示を基本としています。但し、馴染みのない標準和名等の表示によって消費者が混乱することがない様、種に応じて、より広く一般に使用されている名称があれば、この名称を表示することができます。ガイドラインの「(別表1)」には、魚介類の「標準和名」の他、これに代わる一般名称例、そして該当する学名も列記されています。

食品表示基準Q&A 別添 魚介類の名称のガイドライン(消費者庁)

 標準和名に併記されている学名は、表示の対象となる水産物の名称を決める上で参照出来るほか、外来種等、標準和名が付けられていない種の名称を決める上でも、原産国での名称等と併せて、一般に理解される名称を決める上で参照することが出来ます。

A pocket guide to the EU’s new fish and aquaculture consumer labels(EU)
(EUにおける新たな水産物の消費者向け表示のポケットガイド)


EUでは、欧州委員会(European Commission)が発行している上記タイトルのポケットガイド(リンク先は下記*)において、水産物の表示方法を規定しています。その内容は、「生鮮及び一部の加工水産物」と、「その他の加工水産物」の二つに大きく分かれており、二者いずれも名称(法令で定められている名称の他、慣習的に使用される名称や流通上使用される一般的な名称)の表示を義務付けしていると共に、前者については、学名の併記が義務付けられています。
【名称は、前者はCommercial designation、後者はName of the foodとそれぞれ呼んでいます。】

* A pocket guide to the EU’s new fish and aquaculture consumer labels (European Commission)

上記ポケットガイドの根拠となる取り決めは、欧州委員会の以下の情報によるものです。

Commercial and scientific name of the species
Each EU country draws up and publishes a list of the commercial designations accepted in its territory, including accepted local or regional names.
(訳:(水産物の)該当種の名称と学名
EU各国では使用が認められているそれぞれの地域名を含め、名称と学名のリストを策定し、公開している。)

引用:Commercial and scientific name of the species (European Commission)

 学名については、欧州委員会の以下のページより確認出来ます。販売する水産物の名称:Commercial designationを入力することにより、その名称に呼応する学名を検索出来、又この学名は、EU加盟各国の言語での名称とも紐づいています。

Commercial designations of fishery and aquaculture products (European Commission)

 尚、上記リンク先より得られるのは英語での検索結果ですが、以下のリンク先をクリックすれば、英語を含めた欧州各国の言語での名称:Commercial designation/学名リストを参照することが出来ます。
Commercial designations of fishery and aquaculture products:Language (European Commission)

The Seafood List(米国)
(水産物リスト)


 米国の場合、FDAのThe Seafood List(水産物リスト)の構成は、各水産物の「Acceptable Market Name」(FDAが表示上他の水産物の種類との誤認がないとして容認している名称)、Common Name(魚類学者や水産業の専門家などが水産物の種類を特定するのに用いている名称)、そして学名が列記されています。

The Seafood List (FDA)

 本サイト並びに以下のサイトでの説明によりますと、基本的には「Acceptable Market Name」を表示する様ですが、「Common Name」を名称として使用する水産物の種類もある様です。学名は、そのものを表示することも可能ですが、あくまで表示対象となる名称が適切かどうかを確認するための参考情報とされており、EUの様な表示義務はありません。

Guidance for Industry: The Seafood List (FDA)

CFIA Fish List(カナダ)


 カナダ食品検査庁(CFIA:Canadian Food Inspection Agency)は、CIFA Fish Listにおいて、学名毎にcommon names(一般名称)を英語/フランス語でリストアップしており、これらを記載することを推奨しています。又、これらのリストにない名称については、虚偽の表示や誤認につながる表示にならない様調査することを前提として表示可能としています。以下のサイトを参照下さい。

オーストラリア・ニュージーランド食品規制機関(FSANZ)の場合


 オーストラリア・ニュージーランド食品規制機関(FSANZ)のFood Standards Code(オーストラリア・ニュージーランド食品規制基準)においては、魚類の名称は規定していないとされています。
しかしながらオーストラリアの水産業界では、非政府標準化団体であるStandards Australiaと共に、使用可能な名称に関する業界基準を作っている様です。
 一方、ニュージーランドについては、第一次産業省(Ministry for Primary Industries:MPI)のサイトより、各魚種に対するマオリ語の名称と学名を確認することが出来ます。
 更にFSANZでは、魚種の誤認は、漁獲、卸売の時点からその後の流通を通じて消費者に至るまでのいずれの時点でも起こり得るとして、自分の求めるものを正しく購入する為に、信頼できる鮮魚店やレストランを見つけておく様促していると共に、納得のいく確認に至らなかった場合には、オーストラリア/ニュージーランドいずれにおいてもフリーコールの相談窓口を設けている様です。より詳しい内容は以下リンク先よりご確認下さい。

Fish names (FSANZ)
 
 以上、水産物の名称の表示について、欧米並びにオセアニアの事例を見て参りましたが、類似する若しくは同一の名称が複数の種に紐づいてしまう魚介類について、該当する魚種を誤認のない様に正しく、判りやすい名称で表示するのは、どの国でも共通のテーマになっていると言えると思います。今回の情報が、水産物を取り扱う皆様におかれまして、輸出・輸入の際においても少しでもお役に立てて頂ければ幸いです。


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プラントベース食品について

【2022年4月7日:食品表示改正情報 ミニセミナー(Zoomウェビナー)開催のお知らせ】

ミニセミナー(90分拡張版)「プラントベース(植物由来)食品の表示について~国内および海外表示制度の動向~」を開催いたします。こちらの記事の内容を主に題材として、現在の状況を整理しお伝えしたいと思います。

 消費者の食品への嗜好が多様化する昨今、動物性原材料ではなく、植物由来の原材料を使用した食品が増えています。このような植物由来の原材料を使用し、畜産物や水産物に似せて作られている食品は、「プラントベース食品」と呼ばれています。今回のコラムでは、この「プラントベース食品」についての、日本での表示上の取り扱いと、更に他国での取り扱われ方の事例にも少し触れてみたいと思います。

日本における「プラントベース食品」の表示について


 消費者庁からは次の様な食品が「プラントベース食品」を説明するリーフレットに例示されています。

「大豆肉」や「大豆から作ったハンバーグ」と表示されている加工食品には、様々なものがあります。

  • 全て植物由来の原材料であるもの
  • 一部の原材料や食品添加物に動物性由来のものが含まれているもの など

「〇〇ミルク」と表示されている食品や、バターやチーズのような絵・写真が表示されている食品にも、様々なものがあります。

  • 乳製品から製造されていないもの
  • 〇〇以外のものも原材料に使用しているもの など

 上記はいずれも、100%植物由来のものもあるが、動物由来等、その他の原材料が含まれているものもあるという食品の事例となっています。これらの事例を示すことにより、特に食物アレルギーをお持ちの消費者の方々に対して、「プラントベース食品」の表示を見る際には、植物由来であることをうたった商品名だけでなく、使用されている原材料の表示までよく確認する様、注意喚起がなされています。
 そしてやはり消費者は、食品を購入する際、「大豆ハンバーグ」や「〇〇ミルク」などの商品名として表示された情報に大きく影響されてしまうことから、景品表示法上問題となることの懸念を想定したQ&Aも、消費者庁のHPに多く記載されています。
 以下にそのいくつかをご紹介します。

Q1 プラントベース(植物由来)食品である「肉」(以下「代替肉」といいます。)の商品名に例えば「大豆肉」、「ノットミート」と表示することは景品表示法上問題となりますか。

A1 代替肉は、食肉ではありません。
したがって、例えば、商品名とは別に、「大豆を使用したものです」、「原材料に大豆使用」、「お肉を使用していません」、「肉不使用」と表示するなど、一般消費者が、表示全体から、食肉ではないのに食肉であるかのように誤認する表示になっていなければ、景品表示法上問題となることはありません。

Q4 プラントベース(植物由来)食品である「乳飲料」(以下「代替乳飲料」といいます。)の商品名に、「オーツミルク」、「ライス乳」と表示することは景品表示法上問題となりますか。

A4 代替乳飲料は、牛乳又は乳飲料(以下「牛乳等」といいます。)ではありません。
したがって、例えば、商品名とは別に、「オーツ麦を使用したものです」、「牛乳や乳飲料ではありません」と表示するなど、一般消費者が、表示全体から、牛乳等ではないのに牛乳等であるかのように誤認する表示になっていなければ、景品表示法上問題となることはありません。

 上記QAが記載されているQA集には、同様の景品表示法に関する内容の他、「プラントベース食品」を原材料で使用した場合の表示についても触れていますので、こちらも以下に記載しておきます。

Q10 プラントベース(植物由来)食品について、一括表示の原材料名はどのように記載すべきでしょうか。例えば、代替肉や液卵と記載可能ですか。

A10 食品表示基準において、原材料名は「その最も一般的な名称をもって表示する」こととなっております。プラントベース(植物由来)食品の原材料名としては、例えば、大豆から作られている食品の場合には、「大豆」「大豆加工品」等と記載してください。
なお、プラントベース(植物由来)食品の原材料の名称としては、現時点では、肉や卵を含む用語は 、「一般的な名称」とは言えないと考えます。

海外における「プラントベース食品」の取り扱いについて(米国・EU・大洋州)


 さて、今度は少し海外に目を向けてみましょう。国によっては、既に規格基準が設けられている国もある様です。
 まずアメリカでは、「プラントベース食品」に使用する原材料について使用基準が設けられています。
 具体的には、2019年9月、食品医薬品局(FDA)より、ひき肉代替品に使用する着色料(大豆レグヘモグロビン)の使用量の基準値について以下の通知が出さています。

21CFR No.73.520 Soy leghemoglobinより、以下該当箇所を和訳
(C)使用基準
大豆レグヘモグロビンは、未調理の製品重量に対して0.8%を超えないという条件下で、牛ひき肉類似食品に安全に使用することが出来る。

 続いてオーストラリア・ニュージーランドでは、「プラントベース食品」に当たる「Plant-based milk alternatives」(プラントベース代替牛乳)について表示基準が設けられています。
 具体的には、オーストラリア・ニュージーランド食品基準法(FSANZ)のHPにおいて、「Plant-based milk alternatives」(プラントベース代替牛乳)を以下のものから作られる飲料であると定義付けています。

  • 大豆などのマメ科植物
  • 米やオーツ麦といった穀類
  • アーモンドなどのナッツ類

 その上で、栄養成分上の乳製品との違いを説明していますが、その他、特に表示上の注意点として、乳幼児を対象とする義務表示事項を以下の通り定めています。

牛乳よりたんぱく質の含有量が少ない植物由来の飲料には、「本製品は、5歳未満の乳幼児に対しては、完全な代替牛乳として適しません。」という勧告を記載しなければならない。
適切な量のたんぱく質を含むが脂質の含有量が少ない乳製品並びに植物由来代替牛乳には、「本製品は、2歳未満の乳幼児に対しては、完全な代替牛乳として適しません。」という注意書きを記載しなければならない。

 最後にEUの状況を見てみましょう。こちらは、乳製品に関して基準を設ける形で、その代替品に対する用語の使用が表示上制限されています。具体的には、2013年に施行された法令No 1308/2013において、「milk products(乳製品)」について以下の通り記載しています。

以下、PART III Milk and milk productsより該当箇所を抜粋・和訳

「乳製品」とは、牛乳のみに由来する製品を意味する。このことは、その製造時に必要な物質は、乳成分のいずれか若しくは全てにおいて、これらを代替する為に使用するものではないという条件の下で添加することが可能であるということを理解した上で成立する。

 その上で、以下の様な用語の使用について、同法令では「milk products(乳製品)に対してのみ認めています。

whey, cream, butter, buttermilk, butteroil, caseins, anhydrous milk fat (AMF), cheese, yogurt… (一部抜粋)

 更にその後EUでは、2017年に「creamy(クリーミー)」「buttery(バターの様な)」といった言葉の使用から、乳製品では馴染みのあるパッケージや、乳製品を想像させるイラストの使用に至るまで等を禁止し、「プラントベース食品」に対してより厳しい規制を課した「Amendment171」という法案が成立していましたが、2021年春、この法案については取り下げられました。

以上、「プラントベース食品」に関する日本での表示上の注意点と、海外での取り扱いの状況を一部の国についてご紹介して参りましたが、大切なのは、肉や乳製品の代替食品としての役割を担うという側面がある以上、これらの食品との類似点と相違点を踏まえた上で、消費者が誤認することがない様、適切に商品を選択することが出来、かつ安全に使用することが出来る様に、正確な表示を行うことだと思います。
 今回ご紹介させて頂いた情報が、今後「プラントベース食品」について、輸入・輸出を含めて販売を検討される皆様のご参考になれば幸いです。

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EU諸国におけるナノ材料(nano material)としての添加物の安全性に対する考え方について(二酸化チタンの事例に見る)


 ナノレベルの小さな粒子から成る素材を利用する、いわゆるナノテクノロジーは、食品分野においても、食品のテクスチャー(食感)改良、添加物の溶解性向上、新しい味や感覚を創り出す等、様々な方面で注目されています。

 しかしながらEUではその安全性についての議論が進んでおり、この様な素材を「ナノ材料(nano material)」と呼んで独自に定義付けしているEFSA(欧州食品安全機関)はこの程、食品添加物として使用が認可されている二酸化チタン(Titanium dioxide: E171)について、「ナノ材料(nano material)」を含むものとして、食品添加物としての安全性はもはや担保出来ないとの見解を出しました。

 二酸化チタンについて、EFSAは2016年、二酸化チタンの安全性について入手可能な現在のデータに基づき消費者に対する健康影響は示されなかったと結論付け、その後2018年には更に、食品添加物としての使用時に考えうる毒性に関する4つの新たな論文についての評価を行った上でもこの結論に変更はないとしていました。しかしながらフランスでは、この結論を無効とする結果はないとしながらも、EFSAによる安全性の再評価結果が得られるまでの暫定措置として2019年4月にこの添加物の使用禁止を発表、2020年1月1日より1年間と期間を限定してこれを含む食品の市場投入を禁止しました。(この禁止措置はその後1年間延長され、現在も継続中です。)

 今回のEFSAの見解は、これらの一連の動きに続くものと思われますが、本投稿ではこの見解を通して、そもそもEUにおける「ナノ材料(nano material)」とは何なのか、又その安全性についての考え方はどの様なものなのかご紹介出来ればと思います。

「ナノ材料(nanomaterial)」の定義について


 EFSAでは、以下のガイダンスにおいて「ナノ材料(nanomaterial)」について、以下の通りのISOが定めた定義を引用しています。

EFSA Scientific Committee Guidance on Nanotechnology

Guidance on risk assessment of the application of nanoscience and nanotechnologies in the food and feed chain: Part 1, human and animal health – – 2018 – EFSA Journal – Wiley Online Library

 以下、上記ガイダンス内1.2.2 Definition of nanomaterialより抜粋

-The International Organization for Standardization (ISO) has defined nanomaterial as a material with any external dimension on the nanoscale (‘nano-object’) or having an internal or surface structure in the nanoscale (‘nanostructured material’)
(訳:ISOにおいて、nanomaterial(ナノ材料)を、ナノスケールの外形寸法を持つ材料(ナノ物体)若しくは、ナノスケールの内部構造又は表面構造を持つ材料(ナノ構造材料)と定義付けている。)
-‘Nanoscale’ is defined as ranging from approximately 1 to 100 nm
(訳:「ナノスケール」とは、おおよそ1から100ナノメーターの寸法のことをいう。)

 上記の内容より、EFSAでは、大きさが1~100ナノメーターの物質、若しくはその様な大きさの内部構造や表面構造の物質をナノ材料(nanomaterial)としている様です。
 又、このナノ材料(nanomaterial)に該当するものの粒度分布について、EFSAは同ガイダンスにおいて以下の通り記載しています。

-The European Commission recommended that a material with 50% or more of the particles in the number size distribution in the nanoscale (1–100 nm) should be regarded a nanomaterial.
(訳:EUではナノスケール(1から100ナノメーター)の大きさの粒子の粒度分布が50%以上の素材をnanomaterial(ナノ材料)とみなすことを推奨している。)
-Although this recommendation is currently under review, and has not yet been adopted under the relevant regulatory frameworks, the Scientific Committee advises to take this and any future reviews into consideration when assessing safety of materials consisting of particles.
(訳:この推奨内容は現在検討段階であり、関連法規の枠組み内で未採用ではあるが、Scientific Committee(科学委員会)は、粒子から成る材料の安全性を調査する際には、この考え方とこれに基づくその後の評価をすべて考慮に入れる様勧告している。)

二酸化チタンの「ナノ材料(nanomaterial)」としての位置付けについて


 これに対し、EFSAは今回の見解で二酸化チタン(Titanium dioxide: E171)について以下の通り述べています。

Titanium dioxide E171 contains at most 50% of particles in the nano range (i.e. less than 100 nanometres) to which consumers may be exposed.
(訳:二酸化チタンE171は、消費者がさらされる可能性があるナノレベル(即ち100ナノメーター以下)の粒子の含有量は多くて50%である。)

 一見、ナノ材料の定義から外れる様な書き方をしていますが、その一方で、前述のガイダンスのナノテクノロジーに関する考え方が添加物に初めて適用されたとしており、更に以下の通り続けています。

Uncertainty around the characterisation of the material used as the food additive (E 171) was also highlighted, in particular with respect to particle size and particle size distribution of titanium dioxide used as E 171.
(訳:食品添加物E171として使用されている素材、すなわちE171として使用されている二酸化チタンのとりわけ粒径並びに粒度分布をどう特徴付けするかが確定していないことが注目されている。)

 このことから、上記粒度分布の定義については、必ずしも二酸化チタンに当てはまるかは確実ではないとの考え方を示しているものと思われます。
 そしてその上で、以下の通り記載しており、遺伝子毒性について指摘しています。

the Panel(注) concluded that titanium dioxide can no longer be considered safe as a food additive. A critical element in reaching this conclusion is that we could not exclude genotoxicity concerns after consumption of titanium dioxide particles. After oral ingestion, the absorption of titanium dioxide particles is low, however they can accumulate in the body
(注)EFSA’s expert Panel on Food Additives and Flavourings (FAF)
(=食品添加物並びに香料に関するEFSA専門委員会(FAF))
(訳:委員会では二酸化チタンは安全とすることは出来ないと結論付けた。その結論に至る決め手となったのは、二酸化チタンの粒子を消費した後の遺伝毒性の懸念が拭いきれない点である。経口摂取後、二酸化チタンの粒子の吸収性は低いが、体内に蓄積される。)

 最後にEFSAは見解を次のように結んでいます。

EFSA concluded that a concern for genotoxicity of TiO2 particles cannot be ruled out. Based on this concern, EFSA’s experts no longer consider titanium dioxide safe when used as a food additive. This means that an Acceptable Daily Intake (ADI) cannot be established for E171.
(訳:EFSAは、二酸化チタンの粒子について遺伝子毒性の懸念がぬぐい切れないと結論付けており、この懸念を基に、食品添加物としての安全性はもはや担保出来ないとしている。このことは、E171には一日摂取許容量(ADI)が設定出来ないことを意味する。)

 これまで述べて来たナノ材料(nanomaterial)に対する定義付けに基づく二酸化チタンに関するEFSAの今回の見解について、最終的に各関連法令にどう反映させるかの判断は、EU各加盟国の手に委ねられることになりますが、その後欧州委員会では専門家会議が開かれ、EU内での使用禁止が提言された模様です。今回の事例を皮切りに、今後もEUでは食品添加物について、「ナノ材料」という切り口で同様の安全性評価が下される可能性もあると考えており、その動向が注目されるところです。

 ナノテクノロジーを利用した商品を取り扱っておられる皆様、特にいわゆる「ナノ材料(nanomaterial)」に該当する素材を含む食品をEUへ輸出することを考えられておられる皆様におかれまして、今回の二酸化チタンに関するEFSAの見解が少しでも参考になれば幸いです。


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くるみの義務表示化の動きについて

 0-21アレルギー表示についての消費者庁における新たな動きとして、このほど第1回食物アレルギー表示に関するアドバイザー会議(2021年2月15日)において、専門家によるくるみの義務表示化に向けた意見交換が行われました。そこで、今回行われた会議の内容から、くるみの義務化に至るまでの経緯を振り返りながら、義務化に向けて打ち出された今後の検討課題を見ていきたいと思います。

 アレルゲンを含む食品に関する表示について、特定原材料に準ずるものとしてアーモンドが追加されてから1年半(令和元年9月19日付 消食表第322号)、皆様におかれましても、これに伴い、取り扱い商品に対する原材料の配合やそれに伴う表示への対応を進められたことと存じます。
 以下の表の通り、アーモンドについては、これまでの特定原材料に準ずるもの20品目へ、21品目目として追加されました。これに対しくるみは、現在は特定原材料に準ずるもの21品目の一つとしてとしてリストアップされているものが、既存の特定原材料7品目に次ぐ8品目目として検討されていることになります。

分類・規定 品目 備考 表示について
特定原材料(7品目)
(+1品目を検討中)
えび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ)
(+くるみを検討中)
特に発症数、重篤度から勘案して表示する必要性の高いもの 表示は義務
特定原材料に準ずるもの(21品目)
(-1品目=くるみを特定原材料として検討中)
アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン 症例数や重篤な症状を呈する者の数が継続して相当数みられるが、特定原材料に比べると少ないもの 表示を奨励
(任意表示)

 まず、くるみを義務表示対象品目として追加することに至った経緯としては、くるみが原因とされるアレルギーによる症例数のここ数年の急増がある様です。会議資料として、以下の情報が挙がっていますが、確かにその数は顕著に増加しています。
 また、同資料内の詳細データによると、その平成30年度の症例数は、即時型症例・ショック症例とも鶏卵、牛乳、小麦に次いで4番目で、落花生やえびなどの他の特定原材料より増えている結果となっていました。

(「【資料2】 くるみの義務表示化の経緯等について」より抜粋)

5. くるみの義務表示対象品目への追加に係る検討
令和元年7月の消費者委員会食品表示部会において、これまでの全国実態調査報告及び平成30年度の全国実態調査報告書を踏まえて、くるみの義務表示対象品目への追加に向けた検討に着手することについて報告を行った。

原因物質 区分 24年度 27年度 30年度 対応

くるみ

即時型症例数

40

74

251

義務化を視野に入れた検討

ショック症例数

4

7

42

 こちらの情報は、以前に以下の投稿でもご紹介させて頂いておりますので、併せてご覧頂ければと思います。
アレルゲンの推奨表示対象に“アーモンド”を追加 “くるみ”は推奨から義務化へ

 また、義務化に当たっての留意事項としては上記報告が令和元年7月になされた時点では、以下の点が挙げられておりました。

  • 今回の症例数が一過性のものでないかの確認が必要
  • 義務表示対象品目に指定する場合、実行担保の観点から、試験方法の開発と妥当性評価が必要

 上記の経緯に基づき、今回の会議で検討課題が下記の通り挙げられ、最優先事項として取り組んでいくこととなりました。

1. くるみの義務表示化に向けた検討

  1. 必要な調査事業の洗い出し
  2. 調査事業等の結果の解析と方針のとりまとめ

 会議資料に記載されていた令和元年7月5日の議事録を見る限り、今後の課題として、まずくるみによるアレルギーを検知する為の試験方法の開発とその検証が急務とされたものと思われます。

 上述の通り、今回の会議では、くるみの義務表示化の具体的な時期は示されませんでした。まずは義務化に向けての調査がこれからスタートする段階の様です。
 しかしながら、各食品への原材料としてくるみを配合されている、若しくは配合を検討されていく皆様におかれましては、今回の会議でくるみの義務化の検討がスタートしたことを機に、レシピの再検討や表示内容の見直し等、早めに対応を開始されてはどうでしょうか。特に既存の特定原材料7品目のみのアレルギー表示を行われている場合は表示の検討が必要かと思います。
 また、アーモンドを含めた特定原材料に準ずる品目を含めた表示の再検討にもよい機会かもしれません。


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日本における食品添加物リストと食薬区分リストの取り扱いについて


 この程弊社では、化学品に関する各国向け法規対応のコンサルティングを行っておられる中国の法人、REACH24Hコンサルティンググループ様の主催にてWebセミナーを実施致しました。頂いたテーマは、「日本における食品原材料並びに食品添加物に関する法的基準について」(原題:Regulatory Requirements of Food Ingredients/Additives Used in Japan)となっておりましたが、本コラムのタイトルに関するお話を中心にさせて頂きました。
 その際に聴講者の方々に頂いたご質問があるのですが、これらの中には海外の方々に日本の添加物制度について説明をする際に頂く質問と重複するものが数多くありますので、そのいくつかをこちらに簡単にまとめてみたいと思います。
 ちなみに、Webセミナー自体の内容は以下の通りとなっておりました。

Part 1: 食品添加物の使用基準について
    (原題:Standards of use for additives)
Part 2: 医薬品的効果効能を有する食品原材料の使用について
    (原題:Use of ingredients having medicinal effects/functions)
Part 3: 新規食品添加物の申請手続きについて
    (原題:Application procedure for new food additives)
Part 4: 新規添加物の使用に関する最新情報
    (原題:Updates regarding standards of use for additives (or newly accepted ones))
Part 5: 輸入食品における食品添加物の使用基準違反事例について
    (原題:Example of violation cases concerning the standards of use of additives in imported food products)

Webセミナー詳細はこちらをご覧ください。

 まずは、食品添加物リストと、食薬区分リストについてです。

  • 食品添加物のポジティブリストについて、申請に基づき使用が許可された添加物がリスト化されている「指定添加物リスト」と、永年の使用実績に基づき使用が認められている添加物がリスト化されている「既存添加物名簿」があること。
    一方、それ以外に、動植物由来の香料の基原物質や、一般に飲食に供されているもので添加物として使用されるものについても、それぞれ「天然香料基原物質リスト」「一般飲食物添加物リスト」とリスト化されていること。
    (ここで日本以外の国々では「食品扱い」となっていることが多い「香料」について、日本では「食品添加物扱い」になること)
  • 食品原材料について、日本では、医薬品的効果効能を有するもの以外は使用基準がないが、医薬品的効果効能を有する食品原材料については食薬区分リストがあること。

 こうしたテーマについては、日本から海外へ輸出する場合にもよく似たケースがあるのですが、やはり「リストにないものの使用」について問われることが多いと感じています。例えば海外の方々からの関心としては、以下のような内容が挙げられます。

  • 天然香料について、基原物質としてリストアップされていない動植物由来の香料は使用可能か?
  • 一般飲食物添加物に収載以外の食品を添加物として使用する場合は、届出は必要か?
  • サプリメントの原材料は、食薬区分リストに収載のもののみ使用可能か?
  • novel food(新規食品)に関する規制の開発や傾向は日本ではどの様なものか?

 novel food(新規食品)については、食経験のない食品に対する規制があるEUとは異なり、同様の規制は現在存在していないというのが日本の状況です。そのため、食薬区分リストに記載のない食品原材料の使用や、リストに記載されていない動植物由来の香料や一般飲食物の添加物としての使用については、確かに分かりにくいと思われることもあると思います。

 ポイントを整理すると、「リストに記載されている医薬品的効果効能を有するもの以外の食品の使用は差支えないこと」、「天然香料と一般飲食物添加物については、リストに記載されているものは一例であり、それ以外のものも添加物としての使用は可能であること」、となると思います。
 その「一例」として、どの様な食品や基原となる動植物が、食薬区分リストや「天然香料基原物質リスト」、「一般飲食物添加物リスト」には収載されているのかについて、日本への食品の輸出を検討される方は、一度ご確認されておくことが必要かと思います。


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「公正競争規約」の食品表示における位置付けと役割、そしてその遵守について

 食品の優良誤認や有利誤認等の不当な表示を禁止する法令に景品表示法があり、この規定により、事業者又は事業者団体(協議会)が自主的に設定する業界のルールとして「公正競争規約」がありますが、この程、保健機能食品の一つであるいわゆる「特保」と言われる「特定保健用食品」の表示に関し、公正取引委員会と消費者庁は、特定保健用食品(特保)の表示に関する公正競争規約を認定しました。

 身体機能への働きかけや健康維持に関する強調表示は、一つ間違えば優良誤認に繋がってしまい、景品表示法に抵触してしまう可能性もありますが、一般的で抽象的な内容が規定されている景品表示法だけでは、具体的にどの様な表示が認められ、又禁止されているかを判断するのが難しいです。これに対し業界が定める「公正競争規約」ではこれらが具体的に示されています。

 特にその強調表示の遵法性の判断が難しい、これら保健機能食品に対し「公正競争規約」が認定されたことにより、本規約の役割がより明らかになったと考えており、今回は、この「公正競争規約」の食品表示における位置付けと役割、そしてその遵守について触れてみたいと思います。

 まず、「公正競争規約」の目的について見てみましょう。
消費者庁のホームページには以下の通り記載されています。
(以下、掲載文の一部抜粋です。)

「公正競争規約は、その業界の商品特性や取引の実態に即して、広告やカタログに必ず表示すべきことや、特定の表現を表示する場合の基準、景品類の提供制限などを定めており、一般消費者がより良い商品・サービスを安心して選ぶことができる環境作りのための大切な役割を担っています。」
「不当な表示や過大な景品類の提供による競争を防止し、業界大多数の良識を「商慣習」として明文化し、この「商慣習」を自分も守れば他の事業者も守るという保証を与え、とかくエスカレートしがちな不当表示や過大な景品類の提供を未然に防止するというところに公正競争規約制度の目的があります。」

 記載内容を要約しますと、景品表示法の規定に基づき、その製品を取り扱う業界毎に存在する独自の「商習慣」を取り入れ、その業界の商品特性や取引の実態に即して、広告やカタログに必ず表示すべきことや、特定の表現を表示する場合の基準、景品類の提供制限などを定めることにより、エスカレートしがちな不当表示や過大な景品類の提供を未然に防止するのが、「公正競争規約」の目的となります。

 次に「公正競争規約」の定める内容について見てみましょう。こちらについては、消費者庁のホームページには以下の通り記載があります。

  1. 必要な表示事項を定めるもの(原材料名、内容量、賞味期限、製造業者名等の表示を義務付けることなど)
  2. 特定事項の表示の基準を定めるもの(不動産広告の徒歩による所要時間は、80メートルにつき1分の換算で表示することなど)
  3. 特定用語の表示を禁止するもの(加工乳及び乳飲料には、「牛乳」の用語を使用しないことなど)

 こちらに記載されている通り、「公正競争規約」には大まかに言えば、該当する商品について何を表示すべきで、何を表示してはならないかを具体的に定めているということになります。

 ちなみに今回認定された「特定保健用食品」の「公正競争規約」内の施行規則には、例えば容器包装上に記載してはならない不当表示として、

表示許可書又は表示承認書に記載された食品(以下「許可等を受けた食品」という。)に疾病の治癒若しくは予防等の効能効果があるかのように誤認されるおそれ がある表示、又は医薬品であるかのように誤認され、疾病者の適切な治療の機会を 損失させるおそれがある表示

等、関連する食品の内容又は取引条件について一般消費者に誤認されるおそれがある不当表示が17例も例示されています。

 以上が「公正競争規約」に関する説明となりますが、ではこの規約はどの程度法的な拘束力があるのでしょうか。
「公正競争規約」は、事業者又は事業者団体が自主的に設定するルールであることから、規約に参加していない事業者には適用されません。

 従って参加事業者以外、その遵守については任意とはなります。しかしながら、このルールは食品事業者全てが対象の景品表示法に基づく業界ルールであることから、規約への参加の有無に関わらず、本規約を遵守している限り、景品表示法や関係法令上問題とされにくくなると考えます。

 具体的にこの「公正競争規約」は、食品一般には35規約、酒類には7規約が設定されています。食品の強調表示を検討しておられる、あるいは今後検討される皆様におかれましては、関連する食品分類に関する規約の内容を一度改めて確認されてみてはいかがでしょうか。


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中国における食品表示に関する法改正の動き


 中国において、食品表示に関する法改正の動きがありましたので、今回はその改正の内容についてご紹介させて頂きたいと思います。
 昨年12月号に引き続き、中国のコンサルティング会社REACH24Hコンサルティンググループ様よりご寄稿頂きました記事の情報に基づく内容となります。


 昨年11月、中国国家市場監督管理総局(SAMR)より、中国への輸出食品を含むすべての食品を対象とする「Measures for the Supervision and Management of Food Labeling (食品表示に関する監督並びに指導)」の法案に対するパブリックコメントの募集が発表されました。法案のうち以下の2つの項目がこれまでの法令にはなかった内容の追加であるとのことです。

  • 第14条 輸入食品には中国語のラベルを貼ってあること。このラベルは(該当する食品の)製造時等に、販売最小単位となるパッケージ上に直接貼り付けるか、印字あるいは表示されていなければならない。表示は当該食品が中国到着する前に施されていなければならない。
  • 第15条 「~専用」など専門性を示す用語や、当該製品が乳幼児並びに子供、高齢者、妊婦といった特殊なグループにより適していることを示す語句などを含む文言を使用することは認められない。この様な強調表示の使用は特定のグループ向けの特定の国家基準や法令が対象としている食品に限られる。(例えば、妊婦/授乳中の女性向け食品、乳児向け粉ミルク等)

 又、今回の法案では以下の強調表示を禁止しており、こちらの内容も注目すべき点となっている様です。

  • 明示的もしくは暗示的に疾病の予防や治療効果を標ぼうする表示
  • 健康食品ではない食品が明示的もしくは暗示的に医療的機能を標ぼうすること
  • 食品について詐欺的方法もしくは誤認される様な方法で説明すること
  • 添付された製品規格書が裏付けとなる根拠を欠いているもの
  • 国の慣習に反し、特定のグループを差別するような語句
  • 中国の国旗、国章もしくは中国元のイメージを使用した表示
  • 社会の調和にマイナスの影響を与える商品名
  • 登録されている医薬品と同一名を食品に使用する
  • 法律、法令や基準において禁止された内容を含むもの

 現在中国向けの輸出を考えていらっしゃる方々には、まず第14条については、これまでは中国に到着してからも可能であったラベルの貼り付けが、今後は日本での製造時に、販売最小単位のパッケージにまでラベルの貼り付けが必要になることから、日本からの輸出準備においての作業負担が増えるのは必至です。

 そして第15条については、特定の年齢層や特殊な対象者(妊産婦など)をターゲットとする場合、考えておられる対象者に対して法令が別途設定されているかどうかを事前に確認することが必要になります。

 更に強調表示として禁止されている項目については、健康食品を含め、中国向け食品のパッケージをデザインされる際の参考にして頂ければと存じます。

 尚、その後これまでに得られたパブリックコメントに基づき、今後の法案の改正は以下の内容に関するものになるであろうと言われており、この点も追記しておきます。 改正の具体的スケジュールは、現段階で明らかではありませんが、引き続き、その動きには注目して参りたいと思います。

  1. 以下の項目に関する必要条件の最適化:
    • 表示に使用する文字に関するもの
    • 輸入食品の表示に関するもの
    • 保存条件に関するもの
    • 参照されている製品基準、製造許可番号、警告に関するもの
  2. 以下の項目に関する必要条件の強化:
    • 名称
    • 原材料(添加物)名
    • 製造年月日及び賞味期限
  3. 特殊な食品や可食農産物の表示に関する必要条件の標準化

 昨今のコロナウィルスの感染拡大の影響はありますが、今後も中国は日本にとって最大の貿易相手国の一つであることに変わりはないと思います。上記の点について、今後の法案施行の成り行きに注意する必要があると考えています。

参照根拠:
上記内容はREACH24 グループのこちらの記事を基に作成しました。
https://food.chemlinked.com/news/food-news/china-unveils-food-labeling-supervision-administrative-measures-exposure-draft
USDAによる法案の英訳がこちらにあります。
https://www.fas.usda.gov/data/china-draft-measures-supervision-and-management-food-labeling

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シンガポール、糖類添加量の多い飲料の健康レベル情報表示を義務化へ


 今回は、中国のコンサルティング会社REACH24Hコンサルティンググループ様より寄稿頂きました、以下の記事をご紹介させて頂きたいと思います。

▼ 寄稿頂いた原文(英文)記事へのリンクはこちらです。
Sugar-Sweetened Beverages Subject to Mandatory Health Level Labeling in Singapore
(筆者:Yilia Yeさん)


重要ポイント

  • シンガポールで販売されている糖類添加飲料は、主に糖類の含有によって段階分けされる栄養レベルをパッケージに表示しなければならない。
  • シンガポールでは、糖類含有量の多い飲料のマスメディアなどでの広告を全面禁止する予定。
  • シンガポールは先進国の中でも2番目に糖尿病患者の割合が高い国である。

 2019年10月10日シンガポール保健省は、包装済みの糖類含有量の多い飲料に対して、パッケージの前面に栄養情報の表示を義務付けると公表した。主としてその糖類含有量に応じて4または5段階に分けられ、色で区別される。この規制は、シンガポールで販売される、清涼飲料水、果汁、インスタント飲料、ヨーグルト等すべての飲料に適用される。

 この表示要件は、AからEまで段階分けしたフランスの表示様式を手本にしており、Aが最も健康(緑表示)でEが最も不健康(赤表示)となる。

 加えて、シンガポールはEレベル(最も不健康)の飲料に対して、テレビネットワーク、紙媒体メディア、屋外の公的な場所などでのマスメディアの広告を禁止した。この新しい規制が実施されれば、シンガポールは、糖類含有量の高い飲料に対して広告の全面禁止に踏み切る世界初の国となる。その他の国においても同様の規制は実施されているが、例外なく徹底的に実施される世界初の規制となる。

 保健省は、このレベル分けに関して基準を発表していないが、2020年前半にも詳細について発表される模様である。この新しい規制は、1年後から4年後に実施される予定である。
 
 この件に関して、コカ・コーラ社はCNNに対し、この新しい規制を支持すると表明し、同社への影響が最小限になることを願っていると述べた。コカ・コーラ シンガポールを含むヨー・ヒャップセン、ポッカ等飲料大手メーカー7社は、2020年までにそれぞれの製品の糖類含有量を12%以下にするよう以前から表明していた。

 シンガポールは、先進国の中でも糖尿病患者の割合が2番目に多い。これまでの国の政策や市場環境下では、将来的に人口の半数が糖尿病と診断されることになると推定されていた。この甚大な危機的状況を回避するためにシンガポール保健省は糖分の消費を減らすことを主眼に置いた4つの主な提案を行った。

対策 公募の回答率
健康レベル情報表示の義務化 84%
糖類含有量の多い飲料の広告の全面禁止 71%
砂糖税課税 65%
糖類含有量の多い飲料の販売の全面禁止 48%

 砂糖税導入と糖類含有量の多い飲料に対する禁止も引き続き検討されることとなるが、この件に関する同意が比較的低くなっていることから、さらに慎重な検討が必要だとしている。


 ご紹介の記事はシンガポールの内容ですが、各国ではこうしたFOP(Front of Pack)表示に対する取り組みが進められています。日本では栄養成分について視覚化して表示をするような規則はなく、またadded sugarの表示義務もありません。(ただし糖類無添加に関する表示基準はあります。)
 
 今後、各国に輸出を検討される際には、どのような表示事項に対する関心が高いのかなど、様々な規則を通じて知っておくことも大切なのではと思います。


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