プラントベース食品について

By | 2021年10月5日

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 消費者の食品への嗜好が多様化する昨今、動物性原材料ではなく、植物由来の原材料を使用した食品が増えています。このような植物由来の原材料を使用し、畜産物や水産物に似せて作られている食品は、「プラントベース食品」と呼ばれています。今回のコラムでは、この「プラントベース食品」についての、日本での表示上の取り扱いと、更に他国での取り扱われ方の事例にも少し触れてみたいと思います。

日本における「プラントベース食品」の表示について


 消費者庁からは次の様な食品が「プラントベース食品」を説明するリーフレットに例示されています。

「大豆肉」や「大豆から作ったハンバーグ」と表示されている加工食品には、様々なものがあります。

  • 全て植物由来の原材料であるもの
  • 一部の原材料や食品添加物に動物性由来のものが含まれているもの など

「〇〇ミルク」と表示されている食品や、バターやチーズのような絵・写真が表示されている食品にも、様々なものがあります。

  • 乳製品から製造されていないもの
  • 〇〇以外のものも原材料に使用しているもの など

 上記はいずれも、100%植物由来のものもあるが、動物由来等、その他の原材料が含まれているものもあるという食品の事例となっています。これらの事例を示すことにより、特に食物アレルギーをお持ちの消費者の方々に対して、「プラントベース食品」の表示を見る際には、植物由来であることをうたった商品名だけでなく、使用されている原材料の表示までよく確認する様、注意喚起がなされています。
 そしてやはり消費者は、食品を購入する際、「大豆ハンバーグ」や「〇〇ミルク」などの商品名として表示された情報に大きく影響されてしまうことから、景品表示法上問題となることの懸念を想定したQ&Aも、消費者庁のHPに多く記載されています。
 以下にそのいくつかをご紹介します。

Q1 プラントベース(植物由来)食品である「肉」(以下「代替肉」といいます。)の商品名に例えば「大豆肉」、「ノットミート」と表示することは景品表示法上問題となりますか。

A1 代替肉は、食肉ではありません。
したがって、例えば、商品名とは別に、「大豆を使用したものです」、「原材料に大豆使用」、「お肉を使用していません」、「肉不使用」と表示するなど、一般消費者が、表示全体から、食肉ではないのに食肉であるかのように誤認する表示になっていなければ、景品表示法上問題となることはありません。

Q4 プラントベース(植物由来)食品である「乳飲料」(以下「代替乳飲料」といいます。)の商品名に、「オーツミルク」、「ライス乳」と表示することは景品表示法上問題となりますか。

A4 代替乳飲料は、牛乳又は乳飲料(以下「牛乳等」といいます。)ではありません。
したがって、例えば、商品名とは別に、「オーツ麦を使用したものです」、「牛乳や乳飲料ではありません」と表示するなど、一般消費者が、表示全体から、牛乳等ではないのに牛乳等であるかのように誤認する表示になっていなければ、景品表示法上問題となることはありません。

 上記QAが記載されているQA集には、同様の景品表示法に関する内容の他、「プラントベース食品」を原材料で使用した場合の表示についても触れていますので、こちらも以下に記載しておきます。

Q10 プラントベース(植物由来)食品について、一括表示の原材料名はどのように記載すべきでしょうか。例えば、代替肉や液卵と記載可能ですか。

A10 食品表示基準において、原材料名は「その最も一般的な名称をもって表示する」こととなっております。プラントベース(植物由来)食品の原材料名としては、例えば、大豆から作られている食品の場合には、「大豆」「大豆加工品」等と記載してください。
なお、プラントベース(植物由来)食品の原材料の名称としては、現時点では、肉や卵を含む用語は 、「一般的な名称」とは言えないと考えます。

海外における「プラントベース食品」の取り扱いについて(米国・EU・大洋州)


 さて、今度は少し海外に目を向けてみましょう。国によっては、既に規格基準が設けられている国もある様です。
 まずアメリカでは、「プラントベース食品」に使用する原材料について使用基準が設けられています。
 具体的には、2019年9月、食品医薬品局(FDA)より、ひき肉代替品に使用する着色料(大豆レグヘモグロビン)の使用量の基準値について以下の通知が出さています。

21CFR No.73.520 Soy leghemoglobinより、以下該当箇所を和訳
(C)使用基準
大豆レグヘモグロビンは、未調理の製品重量に対して0.8%を超えないという条件下で、牛ひき肉類似食品に安全に使用することが出来る。

 続いてオーストラリア・ニュージーランドでは、「プラントベース食品」に当たる「Plant-based milk alternatives」(プラントベース代替牛乳)について表示基準が設けられています。
 具体的には、オーストラリア・ニュージーランド食品基準法(FSANZ)のHPにおいて、「Plant-based milk alternatives」(プラントベース代替牛乳)を以下のものから作られる飲料であると定義付けています。

  • 大豆などのマメ科植物
  • 米やオーツ麦といった穀類
  • アーモンドなどのナッツ類

 その上で、栄養成分上の乳製品との違いを説明していますが、その他、特に表示上の注意点として、乳幼児を対象とする義務表示事項を以下の通り定めています。

牛乳よりたんぱく質の含有量が少ない植物由来の飲料には、「本製品は、5歳未満の乳幼児に対しては、完全な代替牛乳として適しません。」という勧告を記載しなければならない。
適切な量のたんぱく質を含むが脂質の含有量が少ない乳製品並びに植物由来代替牛乳には、「本製品は、2歳未満の乳幼児に対しては、完全な代替牛乳として適しません。」という注意書きを記載しなければならない。

 最後にEUの状況を見てみましょう。こちらは、乳製品に関して基準を設ける形で、その代替品に対する用語の使用が表示上制限されています。具体的には、2013年に施行された法令No 1308/2013において、「milk products(乳製品)」について以下の通り記載しています。

以下、PART III Milk and milk productsより該当箇所を抜粋・和訳

「乳製品」とは、牛乳のみに由来する製品を意味する。このことは、その製造時に必要な物質は、乳成分のいずれか若しくは全てにおいて、これらを代替する為に使用するものではないという条件の下で添加することが可能であるということを理解した上で成立する。

 その上で、以下の様な用語の使用について、同法令では「milk products(乳製品)に対してのみ認めています。

whey, cream, butter, buttermilk, butteroil, caseins, anhydrous milk fat (AMF), cheese, yogurt… (一部抜粋)

 更にその後EUでは、2017年に「creamy(クリーミー)」「buttery(バターの様な)」といった言葉の使用から、乳製品では馴染みのあるパッケージや、乳製品を想像させるイラストの使用に至るまで等を禁止し、「プラントベース食品」に対してより厳しい規制を課した「Amendment171」という法案が成立していましたが、2021年春、この法案については取り下げられました。

以上、「プラントベース食品」に関する日本での表示上の注意点と、海外での取り扱いの状況を一部の国についてご紹介して参りましたが、大切なのは、肉や乳製品の代替食品としての役割を担うという側面がある以上、これらの食品との類似点と相違点を踏まえた上で、消費者が誤認することがない様、適切に商品を選択することが出来、かつ安全に使用することが出来る様に、正確な表示を行うことだと思います。
 今回ご紹介させて頂いた情報が、今後「プラントベース食品」について、輸入・輸出を含めて販売を検討される皆様のご参考になれば幸いです。

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亀山 明一

亀山 明一

翻訳・調査担当株式会社ラベルバンク
添加物製剤の業界に長く在籍した経験を活かし、添加物の調査業務を中心に、調査結果の英文と日本語との整合性確認業務に従事しています。また原材料の使用基準や食品表示基準などについて、英語でのセミナー講師も担当しています。
趣味は外国文化に触れることと旅行。

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