シンガポール 個別食品規格を削除する改定について意見募集

By | 2021年8月6日
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 2021年6月21日、シンガポール食品庁(Singapore Food Agency:以下SFA)は、食品業界および関係者に2022年4月に施行予定の個別食品規格(食品の定義に関する基準)を削除する改定に関して、意見を募集すると発表しました。

<ポイント>

  • 200以上の個別食品規格のうち大半は削除されるが、1割程度は部分的または完全に存続する
  • 削除された食品規格については、CODEX規格など他の現行の国際規格基準の参照を可能としている
  • 今後はCODEXに基づいた食品分類システムにより、明確な定義がない食品の添加物使用基準が定められる

「食品規格」とは、食品別の必須組成(原材料等)や品質要件(含有成分等)などを定めたものです

改正の背景と概要


 今回の改定についての背景と概要が分かるよう、発表内容の一部を抜粋してみます。

“個別食品規格(規則No.39~260)は、1970年代から1990年代初頭に開発されました。”
”現在、さまざまな消費者のニーズや好みに対応するために、市場には多種多様な食品があります。これらの食品の多くは、食品規制(Food Regulations)で規定されている食品規格を持っていません。たとえば、朝食用シリアル、3-in-1粉末飲料、冷凍調理済み食品などです。”
”SFAは、気候、環境要因、製造方法などの理由により、食品規制(Food Regulations)の品質基準に適合しない食品の輸入/製造および販売を許可するように要請を受けることがあります。 食用植物油の比重/屈折率/ヨウ素値、牛乳の乳固形分、加工チーズの乳脂肪含有量などがそうです。これらの製品の食品規制(Food Regulations)で規定されている品質基準を満たせないということは、製品が安全に消費できないことを意味するものではありません。”
“食品業界が製品のバリエーション(砂糖を含まないカヤジャム、卵を含まないマヨネーズなど)を生産するために革新するにつれて、一定の食品規格に準拠しなければならないことは、革新への取り組みを阻害します。”

“食品規制(Food Regulations)で保持されている個別食品規格については、業界はこれらの基準への準拠を保証する必要があります。 食品規制(Food Regulations)から削除された個別食品規格については、業界は利用可能な国際基準(コーデックス委員会の基準など)またはシンガポール基準を参照できます。”
“個別食品規格の削除は、食品の安全性に影響を与えません。シンガポールで輸入、製造、販売されるすべての食品は、食品添加物の使用や偶発的成分の上限、関連する表示要件など、一般的な食品安全規定に準拠する必要があります。”
“SFAは、将来、食品添加物の規定に関して業界に明確さを提供するために、食品カテゴリーシステム(関連する食品カテゴリー参照を含む)を開発する計画を持っています。食品カテゴリーシステムは、食品添加物に関するコーデックス一般基準(CODEX STAN 192-1995)に基づいています。”

 なおSFAは、今回の改正に関する「よくある質問と回答」についても発表しており、以下の点に注意しておく必要があるといえます。

 “個別食品規格の削除に伴い事業者は、表示する際の一般的な名称について責任を持ち、食品の特性を正確に反映する名称を表記する必要があります。” “食品の名称だけでなく食品の特性を強調する表示についても、食品の特性を正確に反映する表示をしなければなりません。”

今後について


 意見は2021年8月20日午後5時まで、メールにて募集しています。削除される個別食品規格の一覧は、通知の別紙1(ANNEX I)に記載されています。

<ANNEX Iより一部(FLOUR, BAKERY AND CEREAL PRODUCTS)抜粋>

Standard Regulation to be Deleted Regulation to be Retained
39 Flour or wheat flour 39  
40 Wholemeal, whole wheat or entire wheat flour 40  
40A Wholegrain   40A
41 Vital gluten flour 41  
・・・ 42-51  
52 Milk bread 52  
53 Labelling of bakery products Paragraph (1) of
Rg 53
Paragraph (2) of
Rg 53
54 Flour confectionery 54  
55 Pasta 55  
56 Labelling of pasta 56  

<個別食品規格(STANDARDS AND PARTICULAR LABELLING REQUIREMENTS FOR FOOD)より一部(39. Flour or wheat flour)抜粋>

  1. Flour or wheat flour shall be the fine, clean and sound product obtained in the commercial milling of sound and clean wheat grain and shall —
    1. have a moisture content of not more than 15%;
    2. have not less than 6% protein (total nitrogen x 5.7) calculated on a wet basis of 14% moisture content; and
    3. yield not more than 0.6% of ash calculated on a wet basis of 14% moisture content.
  2. Flour may contain the following:
    1. malted wheat flour;
    2. malted barley flour in an amount not exceeding 0.75% of the weight of the flour;
    3. harmless preparation of enzymes obtained from Aspergillus oryzae;
    4. ascorbic acid as bread improver;
    5. ammonium or potassium persulphate in an amount not exceeding 250 ppm (calculated by weight);
    6. ammonium chloride in an amount not exceeding 0.2% (calculated by weight); and
    7. acid calcium phosphate [calculated as CaH4(PO4)2] in an amount not exceeding 0.7%.
  3. Flour shall not be artificially bleached except by oxidizing changes brought about by means of an electrical process in which only ozone or oxides of nitrogen are produced, or by chlorine or chlorine dioxide, or by benzoyl peroxide. The residue of chlorine dioxide and benzoyl peroxide in the flour shall not exceed 50 ppm (calculated by weight).
  4. Flour intended for the manufacture of biscuit may contain sulphur dioxide not exceeding 200 ppm (calculated by weight).
  5. No flour, intended for sale as such, shall contain any emulsifier or stabiliser.

 今回の「個別の食品規格(その食品の定義に関する基準)」の削除に関する改正は、日本の制度でいうところの”「食品、添加物等の規格基準」のうち個別食品規格“と”「食品表示基準」のうち別表第三(個別加工食品の定義)(およびその参照元となっている「JAS規格」)“が削除されるようなものだと考えると、イメージしやすくなるかと思います。

・容器包装の義務表示は、個別の食品ごとに表示基準が定められている場合があること、
・使用できる添加物は、個別の食品ごとに使用基準が定められている場合があること、など、
食品の輸出業務において「個別の食品の定義」は重要な確認事項ですので、とても興味深いものといえるでしょう。

 技術革新や新素材の開発などにより、ニーズの変化に応える様々な食品が生まれています。今回の改正に関する意見募集の結果についてはもとより、今後他の国や地域における動向についても、関心を寄せていただく機会になればと思います。


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川合 裕之
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2019)
【寄稿】
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~
・2014年~連載『季刊シール&ラベル』(日報ビジネス)食品表示にまつわるワンポイントアドバイス
・~2010年連載 『フードプラスワン』(日報アイビー)食品表示ワンポイントレッスン
・~2010年連載 『ヘルスケアマーケットレビュー』(大阪産業創造館)
【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演実績
・2021年5月24日 諸外国における食品安全法規制の違いにどう対処するか
 NPO法人食の安全と安心を科学する会(SFSS)様主催。
・2020年9月17日 表示ミスを防ぐための食品表示実務のポイント~消費者の健康と安全・安心を守ろう~
 越谷市 保健医療部 保健所 生活衛生課様主催。
・2019年9月10日 新しい食品表示基準への対応と実務上の大切なポイント~添加物、アレルギー、栄養成分、原料原産地を中心に~
 山口県商工会連合会様主催。
・2019年7月10日、7月11日 食品表示基準に基づいた実務の重要なポイント
 奈良県観光土産品公正取引協議会様主催。
・2019年6月18日 輸出入食品における食品添加物の徹底研究~主要各国の食品添加物制度の調査と実務上のポイントについて~
 品質保証研究会様主催。
・2019年5月13日 新食品表示制度の基本~配合表を見ながら考える、新基準表示のチェックポイント~
 日報ビジネス株式会社様主催。
・2019年4月19日 表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント  日本食糧新聞社様主催。
・2019年2月26日 すべての加工食品が対象~原料原産地表示のポイントについて~
 兵庫県指定観光名産品協会様主催。
・2019年2月22日 食品表示作成・チェックにおける実務上の大切なポイント~アレルゲン、栄養成分、原料原産地表示などを間違えないために~  公益財団法人 山口県予防保健協会、山口県、一般社団法人 山口県食品衛生協会様主催。

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