食品表示法の一部改正について~自主回収の届出が義務化されます~

By | 2019年1月15日

 2018年12月14日、食品表示法の一部を改正する法律(平成30年法律第97号)が公布されました。この改正により、食品の自主回収をした際に行政機関への届出が義務化されることになります。その経緯と詳細について、まとめてみたいと思います。

主な改正内容


  • 食品関連事業者等が「食品の安全性に関する食品表示基準に従った表示がされていない食品の自主回収」を行う場合、行政機関への届出を義務付けされます。(※届出対象となる食品表示基準違反:アレルゲン、消費期限などの欠落や誤表示)
  • 当該届出に係る食品リコール情報については、行政機関において消費者に情報提供(公表)されます。
  • 届出をしない又は虚偽の届出をした者は罰金となります。

食品表示法に係る自主回収届出情報の例:

名称 ○○○
賞味期限 ○年○月○日
製造者 (株)○○○○
自主回収の理由 「かに」のアレルゲン表示の欠落
健康への影響 「かに」にアレルギーを有する人が、じんましん、呼吸困難等のアレルギー症状を発症することがある
画像 表示枠内の写真等
・・・・ ・・・・・・・

参照:食品表示法の一部を改正する法律の概要(平成30年法律第97号)(消費者庁)

改正の背景について


 2018年6月13日に公布された「食品衛生法等の一部を改正する法律」により、食品リコール情報の届出を制度として位置づけることになりました。食品衛生法の改正では、食品衛生法に違反する食品、食品衛生法違反のおそれがある食品の自主回収を行う場合、同様に行政機関への届出が義務付けされることになります。(※食品衛生法違反の原因となった原材料を使用した他の製品や、製造ラインの硬質部品が破損して製品に混入した場合等)

食品衛生法に係る自主回収届出情報の例:

名称 ○○○
賞味期限 ○年○月○日
製造者 (株)○○○○
自主回収の理由 腸管出血性大腸菌O157の検出
健康への影響 下痢、嘔吐等の他、過去に重症化し死亡事例がある
画像
・・・・ ・・・・・・・

参照:食品衛生法改正(食品リコール情報の報告制度)について(厚生労働省)

 その際、アレルゲン等の安全性に関わる食品衛生法違反による食品リコールについて、早急に検討することと決められたことが、食品表示法においても同様の仕組みを必要とした背景となっています。
 またこれまで食品表示法においては、食品関連事業者等が食品の自主回収(リコール)を行う際、食品リコール情報を行政機関に届け出る仕組みがなかったことが課題としてあげられています。ただ各自治体においては、すでに自主回収の報告制度が規定されている場合が多くありますので、過去に自主回収を経験された事業者の方にとってはイメージしやすいと思います。(自主報告制度を条例で規定している、もしくは条例以外の要綱等で規定している自治体は全体の80%弱です。※出典:食品衛生法改正(食品リコール情報の報告制度)について(厚生労働省))

自治体による自主報告制度について


 過去に自主回収をされたことのない事業者の方にとっては馴染みが薄いと思われますので、現状の自主報告制度について一度見ておかれることは大切だと思います。例として東京都の「自主回収報告制度」などが参考になると思いますので、下記にURLを掲載させていただきます。(※食品表示法のものと混同されないようご注意ください。)

「安全性に関する食品表示基準に従った表示」について


 最後に、「食品の安全性に関する食品表示基準に従った表示がされていない食品の自主回収」のうちの「食品の安全性に関する食品表示基準に従った表示」について整理したいと思います。例として「アレルゲン、消費期限など」としておりますが、具体的には「アレルゲン、消費期限、食品を安全に摂取するために加熱を要するかどうかの別、その他の食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼす事項として内閣府令で定めるもの」とされています。

 こちらは「食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼす事項」の一部です。全部で15項目あります。

(1)名称
(2)保存の方法
(3)消費期限又は賞味期限
(4)添加物
(5)アレルゲン
(6)L‐フェニルアラニン化合物を含む旨
(7)特定保健用食品を摂取をする上での注意事項
(8)機能性表示食品を摂取をする上での注意事項
 ・・・中略・・・
(15)食品表示基準第40条に規定する生食用牛肉の注意喚起表示に関する事項

引用:食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼす事項(消費者庁)

 施行の時期は未定ですが、万一の場合に備えて、こうした情報については一度目を通しておかれるとよいのではと思います。


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川合 裕之

川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2023年12月『食品と開発』(健康メディア.com)「海外の栄養プロファイリングシステムと栄養表示制度」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
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