「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」が公表されました

By | 2016年8月2日

 2016年6月30日、「いわゆる健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(以下「旧」)が、「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(以下「新」)へ改定されました。タイトルだけ見ると“いわゆる”が外れただけに見えるのですが、実際の内容は「全部改定」です。主な変更点についてまとめてみたいと思います。

対象となる食品の定義


  • 旧:健康食品※から保健機能食品を除いた「いわゆる健康食品」が対象。
    (※健康保持増進効果、機能等を表示して販売されている食品(栄養補助食品、健康補助食品、サプリメントなど)全般を指すもの)
  • 新:健康保持増進効果等を表示して販売されている食品(「健康食品」)と、保健機能食品。

 「新」では、保健機能食品(特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品)について、問題となる表示事例も含め対象に追加されました。またパブリックコメントへの回答には、生鮮食品も対象となる記載もあるなど、「健康食品」の定義がより明確にされていると言えます。

対象となる「健康保持増進効果等」の定義


 ここは、新旧で大きな変わりはありません。計13項目ありますが、食品表示のみでも確認できる留意事項は、主に(1)ア~エと、(2)エの5項目でしょう。
(2)のア~ウは、規格書などの確認が必要となります。(3)の例としては「ヘルシー」「体にやさしい」が、パブリックコメントの回答に言及されています。

(1)「健康の保持増進の効果」

  1. 疾病の治療又は予防を目的とする効果(例:医薬品の表示)
  2. 身体の組織機能の一般的増強、増進を主たる目的とする効果(例:医薬品の表示)
  3. 特定の保健の用途に適する旨の効果(例:特定保健用食品、機能性表示食品の表示)
  4. 栄養成分の効果(例:栄養機能食品の表示)

(2)「内閣府令で定める事項」

  1. 含有する食品又は成分の量(例:大豆○○gを含む、カルシウム○○mg配合)
  2. 特定の食品又は成分を含有する旨(例:プロポリス含有、○○抽出エキス使用)
  3. 熱量(例:カロリー○%オフ、エネルギー0kcal)
  4. 人の身体を美化し、魅力を増し、容ぼうを変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つことに資する効果(例:美肌・美白効果が得られます、皮膚にうるおいを与えます)

(3)「健康保持増進効果等」を暗示的又は間接的に表現するもの

  1. 名称又はキャッチフレーズにより表示するもの
  2. 含有成分の表示及び説明により表示するもの
  3. 起源、由来等の説明により表示するもの
  4. 新聞、雑誌等の記事、医師、学者等の談話やアンケート結果、学説、体験談などを引用又は掲載することにより表示するもの
  5. 医療・薬事・栄養等、国民の健康の増進に関連する事務を所掌する行政機関(外国政府機関を含む)や研究機関等により、効果等に関して認められている旨を表示するもの

禁止される表示


 「新」では、以下のような構造に整理されています。新しく「不実証広告規制」の項目が追加されていることからも、ここでの主な留意事項は⑴のア「優良誤認表示」であると言えるでしょう。健康に関する表示だけでなく、強調表示全般の確認業務においても非常に重要です。また、インターネット上の口コミサイトやブログ、アフィリエイトなどの用語も、新しく追加されています。

(1) 景品表示法上の不当表示

  1. 優良誤認表示
  2. 有利誤認表示

(2) 健康増進法上の虚偽誇大表示

  1. 事実に相違する表示
  2. 人を誤認させる表示
  3. 「著しく」

問題となる表示例について


 特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品についても、それぞれ問題となる表示例(3食品で計10項目)が具体的に記載されています。今回の改正では、もっとも印象的な変更点かと思います。

 例:特定保健用食品(「食後の中性脂肪の上昇を抑える」の許可表示に対し、「食後」という文言を省略し「中性脂肪の上昇を抑える」と表示することにより、効果が継続的にあるかのように表示すること)
 例:機能性表示食品(商品自体に機能があるとの根拠を有していないにもかかわらず、届出表示の一部を省略することにより、商品自体に機能性があるかのように表示すること)
 例:栄養機能食品(国が定める栄養成分以外の成分の機能を表示すること)
 
もちろん「保健機能食品以外の健康食品」についても問題となる表示例(7項目)が列挙されています。文書のタイトルは少し変わっただけですが、内容は大きく変わっていますので、新基準移行作業のパッケージデザイン点検のときの参考資料として改めて確認されるとよいと思います。

参照:健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/160630premiums_8.pdf
「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」に対する御意見の概要及び御意見に対する考え方
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/160630premiums_7.pdf

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川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2024年 第65巻 第4号 『食品衛生学雑誌』(公益社団法人日本食品衛生学会)「海外輸出向け食品における各国基準(添加物、栄養成分表示)の調査と実務上の課題」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
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・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
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