「マルチビタミン」「ビタミンたっぷり」の表示について

By | 2020年12月3日


 総務省統計局の「家計消費状況調査」9月分において、2人以上世帯のネットショッピング支出額は15,981円で、前年同月比2.6%増というデータが発表されています。昨年の9月といえば、消費税増税前の駆け込み需要がありましたが、それを上回り、中でも「健康食品」は670円で同21.6%増と6ヵ月連続の2ケタ増となっているようです。
コロナ禍での外出を控えた買い物のニーズと、そして健康への意識が高まっているといえるのではないでしょうか。

 最近は屋外に出る機会が減ったこともあり、食事だけでなく、日光浴によって得ることのできるビタミンDに関する健康食品を店頭で意識するようになりました。そこで「マルチビタミン」という文字を見かけると、ビタミンDだけではなく、他のビタミンも摂取できるならそのほうがいいのでは・・・という発想でついつい手に取ってしまう方も多いかもしれません。

 ところで「マルチビタミン」と容器包装に、高い、低いに言及せずに栄養成分名のみ目立たせて表示するものについては、栄養強調表示の規定は適用されませんが、栄養成分表示枠内にも当該栄養成分の量を必ず表示する必要があるということはご存知でしょうか。「ビタミン」と総称で表示されておりますので食品表示基準で規定されている以下のすべてのビタミン類の栄養成分表示が必要になるということです。

食品表示基準別表第9に掲げられた栄養成分(ビタミン類 13種)
ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、葉酸

 ここで「ビタミンたっぷり!」という表示の商品があったと仮定すると、さらに上記のビタミン類が「栄養強調表示」の「高い旨」の表示に該当し、上記のビタミン類についてすべて「高い旨の表示の基準値」以上である必要があります。また、合理的な推定により得られた一定の値の表示(「この表示は、目安です」、「推定値」等の表示を含む)はできません。

 上記13種類すべてではなく、実際には一部のビタミンのみ栄養強調表示の基準を満たしているといった場合には、「ビタミン」といった総称で表示をするのではなく、「ビタミンC」や「ビタミンD」といった具体的な成分名や「5種類のビタミン(ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12)」等、栄養成分名が分かる表示をすることが必要です。

 「ミネラル」についても同様で、総称で強調表示を行う場合、すべてのミネラル類について基準を満たす必要があります。

 また食品表示基準が適用される栄養表示とは、「ビタミンDたっぷり!」等の邦文によるものですが、全体として邦文表示を行っていても、食品表示基準に適合しない栄養強調表示のみを邦文以外(High calcium等)で行うこと等は適切ではありません。

 取り扱っている商品や製造されている商品に「ビタミン」や「ミネラル」といった総称で表示されている商品がある場合は、「健康食品」に注目が高まっているこの機会に、再度確認をしてみてはいかがでしょうか。

 ちなみに「ビタミンD」は、マイタケやシラスなどに多く含まれています。12月はまだ「秋シラス」のシーズンですのでこういった旬の食材と「健康食品」を上手く併用しながら摂取していきたいものです。


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調査チーム

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上級食品表示診断士。原材料、添加物の調査から食品表示の作成、チェックまで幅広い実務に従事しています。食品業界に長く在籍した経験を活かし、お客様からの食品表示に関する様々なご質問について、より分かりやすく回答できるよう取り組んでいます。