農産物検査規格の見直しに伴う「玄米及び精米の食品表示制度の改正(案)」について

By | 2020年12月3日

 
 玄米及び精米の食品表示制度が、今後改正される見込みです。2020年10月14日~11月15日の期間、パブリックコメントの募集がなされました。また10月27日および11月18日に、消費者委員会食品表示部会において審議がなされています。以下に、主な改正点とその背景、今後の予定について整理してみたいと思います。

主な改正のポイント


  1. 玄米及び精米の表示に関して、現行、農産物検査による証明を受けている場合のみ、産地、品種及び産年の表示が可能であるところ、農産物検査による証明を受けていない場合であっても、産地、品種及び産年の表示を可能とすること
  2. 産地、品種及び産年の表示の根拠となる資料の保管を義務付けること
  3. 産地、品種、産年等の表示事項の根拠を確認した方法の表示を可能とすること

参照:「食品表示基準の一部改正案に関する意見募集について(消費者庁)令和2年10月14日」より

改正の背景


 規制改革実施計画(令和2年7月17日閣議決定)において、「農産物検査規格の見直し」が対象とされ、玄米及び精米について農産物検査を要件とする食品表示制度の見直しを行うこととされたことが直接の背景です。
 規制改革実施計画は、2016年より推進されてきた「農業競争力強化プログラム(農林水産省)」における「農産物規格・検査の見直し」の状況や、2020年1月に提出された「農産物(米)規格・検査に関する意見(公益社団法人 日本農業法人協会)」等をもとに、「規制改革推進会議 農林水産ワーキング・グループ」において検討されたものです。

規制改革実施計画(令和2年7月17日閣議決定)(抜粋)

産地、品種、産年などの食品表示
食品表示基準上、検査米、未検査米双方を対象に表示義務のある産地に加え、品種、産年、生産者、検査・品質確認を行った者などの一定の事実情報の任意表示を可能とする(例:品質確認 JA〇〇(登録検査機関名)、品質確認 〇〇ライス(農業者名))。農産物検査済みのものについては、「農産物検査証明による」旨の表示ができるようにするとともに、農産物検査を受検しない場合についてその旨の表示を義務付けることはしない。
また、根拠が不確かな表示がなされた米が流通することを排除し、消費者の信頼を損ねるようなことがないようにするため、検査や取引に関する記録の保存方法など必要な措置は食品表示基準等やその運用で担保する。
以上のことを、消費者委員会の意見も踏まえ、結論を得る。

現行と改正案の違い


 現行との比較については消費者庁の資料が分かりやすいので、こちらに引用いたします。

玄米及び精米に関する表示の改正について

規制改革実施計画を踏まえ、①農産物検査による証明を受けていない場合であっても産地、品種及び産年の表示を可能とし、②一方で、根拠が不確かな表示がなされた米の流通を排除し、消費者の信頼を損ねるようなことがないようにするため、産地、品種、産年の根拠を示す資料の保管を義務付け、③農産物検査証明による等、表示事項の根拠の確認方法の表示を可能とするとともに、④生産者名等、消費者が食品を選択する上で適切な情報は、枠内への表示を可能とするため、基準第23条、別表第24及び別記様式4の改正を行う。

引用:食品表示基準の一部改正について 令和2年10月 消費者庁食品表示企画課

食品表示基準の改正による単一原料米の表示事項の変更点
(※画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。)

引用:補足説明資料 令和2年11月 消費者庁食品表示企画課

今後の予定


 消費者委員会食品表示部会による諮問・答申を経て、2021年3月31日までに公布、2021年7月1日に施行予定とされており、令和3年(2021年)産米から改正後の規定で表示可能になる見込みです。玄米や精米だけでなく、米を主な原材料とする食品を取り扱いの方は、改正点について確認をされておくとよいと思います。


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川合 裕之

川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2023年12月『食品と開発』(健康メディア.com)「海外の栄養プロファイリングシステムと栄養表示制度」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
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