COVID-19感染症拡大下の食品表示法令に関する各国の対策についての最新情報

By | 2020年5月15日

 自然災害対科学の戦いという形で世界が巻き込まれることになった、地球規模の危機的状況が発覚してから数ヶ月が経過しました。

 COVID-19の人への感染症拡大阻止が各国政府の最重要課題となる中、多くのビジネスや立法活動が一時的に延期されていますが、とりわけ食の安全と表示についてはその保護能力が完全に失われる手前で踏みとどまっているといえると思います。

 既存の対策の結果とし生じる食料不足や食品安全の欠如を避けるため、食品の製造者や流通者に対しそのプロセスを緩和させ、一方で国民に生活必需品を供給し、経済への打撃を最小限にさせる目的でいくつかの通知がされています。

 カナダ食品検査庁(CFIA)は公式サイトにも記載があるように「リスクの低い規制活動」を一時的に停止しました。この発表には、食品の安全性に影響を及ぼさないことを条件にホテルやレストラン、各種施設で使用される外食用製品の表示に対する要件の柔軟な運用や食品安全に直接影響を及ぼさないすべての活動が含まれています。

 CFIAは米国またはカナダの表示基準に基づきカナダで包装され表示を施された外食用製品向けの食品の小売りについても、前向きに上記措置を認可しています。
表示事項の詳細な説明、フォーマット、言語、その他の法的要件などは通知の中で説明されています。

 米国でも同様、FDAはレストランや食品メーカーがこの感染症拡大中も包装済み食品の販売継続を維持させるため、栄養成分表示の過程に対し柔軟に運用できるようガイダンス資料の作成など、この件に関して通知を出しています。このガイダンスはレストランで調理される食品には適用されません。

 他の国々でも、この国際的な危機に直面し、対策を講じています。例えば中国では、食品表示で栄養・機能的な強調表示において数多くの虚偽表示が見られます。3月27日に国家市場監督管理総局が発表したところによると、「免疫細胞の活性化」「新コロナウイルスを撃退する新たな発見」「コロナウイルスが宿主の呼吸器上皮細胞に侵入するのを防ぐ」などの内容を含む広告への注意が喚起されました。

 また、食品規格委員会(Codex Alimentarius Commission)と国連食糧農業機関(FAO)も集会を制限するため、2020年の国際会議の延期を最近発表しました。

 ある食品や小麦などの原材料の輸入を禁止することで感染拡大を予防するという別の対策を講じている国もあります。ロシア、ウクライナはこの対策をいち早くとりました。

 日本も食品表示法に基づく食品表示基準の弾力的な運用を促進するための通知を発表し、緊急に通関させる必要のある輸出入製品の税関業務を優先させています。
4月10日消費者庁(CAA)は新しく通知を発表し、「食品安全に重大な影響のある事項を除き、原材料等、原料原産地又は栄養成分の量などの表示事項と実際に使用されている原材料等、その原料原産地又は当該原材料等から得られる栄養成分の量などの表示事項に齟齬がある場合であっても、一般消費者に対して、適時に店舗等内の告知、社告、ウェブサイトの掲示等により当該商品の適正な原料原産地に係る適切な情報伝達がなされている場合に限り、当分の間、取締りを行わなくても差し支えないこととします」と発表しました。

 国内外での十分な供給を確保するための対策に関しては新たな情報がございましたら、今後も当ブログ等でお知らせいたします。
これからも十分な食料の確保を行いながら、感染症縮小に繋がると誤認を与える様な広告を防ぎ、消費者に対し食品安全を保障するため様々な法令の柔軟な運用に関する通知がなされることと考えています。

出典:
【カナダ】
カナダ食品検査庁(CFIA)は、食の安全に影響を及びさない特定の表示要件などの、「リスクの低い規制活動」を一時的に停止
https://inspection.gc.ca/covid-19/cfia-information-for-industry/eng/1584462704366/1584462704709#a6

【米国】
米国でも同様、FDAはレストランや食品メーカーがこの感染症拡大中も包装済み食品の販売継続を維持させるため、栄養成分表示の過程に対し柔軟な運用を行う。このガイダンスはレストランで調理される食品には適用されない
https://www.fda.gov/regulatory-information/search-fda-guidance-documents/temporary-policy-regarding-nutrition-labeling-certain-packaged-food-during-covid-19-public-health

【中国】
口腔スプレー、茶、漢方、プロバイオティクス、ニンジンなどの野菜に関連して、COVID-19の感染症予防に繋がると誤認させるような強調表示について
http://www.samr.gov.cn/xw/zj/202003/t20200327_313586.html

【日本】
新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた食品表示法に基づく食品表示基準 の弾力的運用について
https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_cms214_200410_1.pdf

【食品規格委員会(コーデックス委員会)】
会議の延期について
http://www.fao.org/fao-who-codexalimentarius/news-and-events/news-details/en/c/1264803/


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イクラム

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海外調査担当株式会社ラベルバンク
チュニジア出身。生物学を専門とし、海外の原材料、添加物、表示基準の調査業務に従事しています。また海外のお客様とのコミュニケーションを円滑にするサポート業務にも取り組んでいます。
趣味は料理。

【寄稿】
・2023年12月『食品と開発』(健康メディア.com)「海外の栄養プロファイリングシステムと栄養表示制度」