「冠表示における原料原産地情報の提供に関するガイドライン」が公表されました

By | 2019年5月10日

 2019年3月29日、「冠表示における原料原産地情報の提供に関するガイドライン」が、消費者庁により公表されました。いわゆる「冠表示」となる原材料の原料原産地情報について、重量順位にかかわらず、自主的に情報提供するための指針とされています。日本においては、「〇〇産原料使用」などの特定の原材料の産地や製造地を強調する表示について、消費者からの関心が高い背景がありますので、今月はこちらの話題を取り上げてみたいと思います。

冠表示の定義


 「冠表示における原料原産地情報の提供に関するガイドライン」において、自主的に原料原産地表示を提供する「冠表示」を以下のように定義されています。

  • 「商品名に特定の原材料名を冠している表示」
  • 「商品名に近接した箇所に特定の原材料の使用を特に強調している表示」

 「商品名に特定の原材料名を冠している表示」の例として、“かにチャーハン”、“牛肉カレー”、“たっぷりたまねぎシチュー”、“えびグラタン”等が挙げられています。

 また「商品名に近接した箇所に特定の原材料の使用を特に強調している表示」の例として、“抹茶を贅沢に使った”、“ごまをふんだんに練り込んだ”、“こだわりの牛肉を使用した”、“たっぷり粒コーン入り”等が挙げられています。

 これらの「冠表示」となる原材料については、重量割合が上位1位でない場合であっても、自主的に原産地表示(または製造地表示)をすることが求められることになります。

対象とならない商品について


 上記の「冠表示」に当たらない例については、「情報提供が望まれる可能性が低いもの」として、以下の例が挙げられています。

  • 特定の原材料名を冠した商品名に当たらない(原材料が特定されていない)
    (例:肉ぎょうざ、五目ピラフ、野菜カレー、フルーツゼリー、シーフードドリア等)
  • 特定の原材料の使用を特に強調していない
    (例:はちみつ使用、みかん入り、生クリーム配合、粒コーン(北海道産30%)入り等)

 また、ガイドラインの対象とならない商品については、以下のように整理されています。

  1. 食品表示基準、米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律、その他の法令により原産地等の表示が義務付けられている商品。
  2. ○○味、○○風味等といった表現で、その商品の味付けや風味等のバリエーションを表しており、特定の原材料の使用を特に強調していない商品。(例:しょうゆ味、りんご味、しそ風味等)
  3. 特定の原材料名を含む商品名が一般名称とされている(特定の原材料名が商品名に付されていることが一般化されている)商品。(例:さば水煮、トマトケチャップ、コーンスープ、麦茶、いちごジャム、カレーパン等)
  4. 商品の形状等からイメージされる食材の名称を商品名の一部としている商品。(例:メロンパン、かにかま、たい焼き、柿の種等)

情報提供の方法


 ガイドラインの対象である「冠表示」に該当する場合は、以下の方法により情報提供をすることが求められます。

  • 「冠表示」の原材料名が生鮮食品の場合は産地を、加工食品の場合は製造地を情報提供する。
    (原材料名欄に加工食品の名称で表示してあったとしても、「冠表示」の原材料名を生鮮食品名で表示している場合は、その生鮮食品まで遡って原産地を情報提供する)
  • 「商品の容器包装の一括表示部分に表示(食品表示基準に基づく原料原産地名の表示方法による)」、または「商品の容器包装の一括表示部分以外の場所への表示」、または「ウェブサイトや電話対応等」により行う。
  • 「商品の容器包装の一括表示部分以外の場所」に行う場合、食品表示基準に掲げる表示方法(例:「農産物の場合」国産品にあっては、国産である旨に代えて都道府県名その他一般に知られている地名を、輸入品にあっては、原産国名に加え州名、省名その他一般に知られている地名等)に準じて情報提供することができる。
  • 「商品の容器包装の一括表示部分以外の場所」、または「ウェブサイト」に行う場合で、複数の原産国の原材料を使用している場合は、国別表示を基本とし、国別表示が重量順でない場合は、消費者に誤認を与えないよう、重量順でない旨を表示する。

注意が必要な点


 ガイドラインでは、「複数の原産地の原材料を使用している場合で、一括表示部分以外の場所に表示する際の表示例」を、参考情報として整理しています。(例:「原材料○○の原産地は、(日本、アメリカ、タイ、中国)です。なお、当該原産地は、2018年○月時点で使用予定がある産地を順不同で表示しています。」等)

 冠表示にあたる場合は、このような積極的な情報提供が求められると思いますが、強調表示の一種であることに留意することが必要です。つまり、誤認を与えないようにすることと、合理的な根拠を保管しておくことが大切であるといえます。とりわけ、複数の原産地の原材料を使用している場合は、この点に注意される必要がありますので、ガイドラインをよく確認のうえ、情報提供されるとよいと思います。


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川合 裕之

川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2023年12月『食品と開発』(健康メディア.com)「海外の栄養プロファイリングシステムと栄養表示制度」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
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