食品の機能性表示の緩和と、機能性表示の実証について

By | 2013年12月6日

201312

規制改革会議による食品の機能性表示の緩和


食品の機能性表示が緩和される見通しです。2013年4月の規制改革会議に端を発したもので、現在消費者庁が平成26年度中の実施に向け、制度を構築している段階です。
2013年11月末時点では、一般消費者向けに大規模なアンケート調査を実施しているところで、この結果を受けて本格的な制度検討に入るとみられています。消費者庁としては今年8月末に記者会見でこの話題に触れたのちに、制度に関する大きな発表は行っていませんが、「月刊激流11月」「週間東洋経済11/30」など専門誌各誌が今後の見通しをまとめていますので、機能性表示を検討される企業の皆さまは参考にされるとよいと思います。

要点をまとめると、このようになります。

・元々緩和の予定はなかったが、規制改革会議の決定により取り掛かることになった
・アメリカの「ダイエタリーサプリメント」の表示 制度を参考に、日本独自の制度を目指す
・製品ベースで個別認可を出す特定保健用食品とは別の制度と考えている
・科学的根拠と届出制により、表示規制緩和は原則すべての食品を対象と検討している

ただ参考にするといわれるアメリカの制度も科学的根拠の届出制をとっていますが、その科学的根拠のレベルにバラツキがあるなど運用面で課題はあることと、さらに日本国内の健康食品の不当表示問題などにより、一部からは「食品への機能性表示緩和は時期尚早では」と慎重論もあがっています。消費者庁としては、これらの声を集約しながら、制度設計を進めていくものと思われます。

消費者庁、いわゆる健康食品の不当表示に対する監視指導案を発表


来年予定されている「食品の機能性表示の規制緩和」は、科学的根拠の研究をすすめながら積極的に機能性表示をすすめたい企業にとっては朗報になりましたが、その一方で今年11月1日に、「いわゆる健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について(案)」が発表されました。こちらはやや規制を強化する旨のガイドラインです。

これまでは「病気が治る」等の表示に対する規制(「無承認無許可医薬品の指導取締りについて(厚生労働省)」)でしたが、今後はその実証に関することがポイントになると考えてよいと思います。12月1日にパブリックコメントを締め切り、12月中には正式に発表されるとのことです。

食品のうち、なんらか健康を訴求しているものは「いわゆる健康食品」に入りますので、多くの食品にとって影響のあるガイドラインと考えてよいと思います。こちらは、消費者庁ホームページに掲載されていますので、一度確認されることをおすすめいたします。

要点をまとめると、このようになります。

・表示や表現方法への規制に加え、それが実証できる根拠の有無を問う規制であること
・健康増進法を含めた ガイドラインであるため、広告会社も対象になること

どちらにも重要な役割となる表示の裏づけとなる合理的な根拠


ある商品の表示が不当表示(優良誤認)に該当する可能性がある場合、消費者庁からその表示内容を裏付ける合理的な根拠の提出を要求されることになります。
企業がその表示内容が正しいものであると、ここで合理的な根拠として資料提出しても、それが認められない場合もありますので、ガイドラインには指導事例が掲載されています。機能性表示の緩和にも科学的根拠が必要になる見込みであることを考えると、今後より大切になるのは、表示内容を実証できる合理的な根拠資料の準備、といえると思います。

また今回のガイドライン案の対象者に広告会社が含まれていることから、広告審査が厳しくなる可能性があることも想定しておく必要があります。
食品とは関係はありませんが、今年9月27日に厚生労働省より出された医療広告ガイドラインにあわせ、広告媒体大手のYahoo! が広告審査基準を2014年1月6日より改定することが発表されています。

クリエイティブのリンク先のサイトも広告として取り扱われる、等の改定です。
広告媒体に安全に広告を出稿するためにも、今後は表示内容についての、合理的な根拠を念のため準備しておくことが重要といえると思います。

今後の見通し 根拠資料のトレーサビリティが大切


今年9月27日に栄養表示基準が改正され、すべての食品で「表示された値の設定の根拠資料を保管すること」が追加されています。機能性表示緩和も、不当表示に対する監視にも、栄養成分の表示もすべて、これらの根拠資料をどのように管理するかといったトレーサビリティが重要になるでしょう。

例えば消費者庁から「この表示が優良誤認ではないか、表示内容を裏付ける合理的な根拠を提出してください」と連絡があると、15日以内に提出しなければ優良誤認表示とみなされてしまいます。製品レベルでの根拠が必要になるため、原材料が大きく変わる場合にはその都度、最新の製品において合理的な根拠といえるのか検討が必要になると思われます。

食品開発の場面では、これまで出番の少なかった機能性に関するエビデンス(製品レベルでの科学的根拠)であっても、保有しているということ自体が強みになっていく可能性があると考えられます。

また「どこでどんな表示をしているのか、その根拠はどこにあるのか」といったことを把握しておき、すぐに対応できるようトレーサビリティ体制を整えておくことも、品質保証業務の一環としてこれからも求められていくのではないかと考えています。


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川合 裕之

川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2023年12月『食品と開発』(健康メディア.com)「海外の栄養プロファイリングシステムと栄養表示制度」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

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