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上級食品表示診断士。原材料、添加物の調査から食品表示の作成、チェックまで幅広い実務に従事しています。原材料規格書、配合表の整備などの業務を担当しており、お客様にとってより分かりやすい資料づくりをサポートできるよう取り組んでいます。

水産物の原産地表示(特に貝類)について


 令和4年6月15日に食品表示基準Q&Aが改正され、「魚介類の名称のガイドライン」が改正されました。改正の経緯としては、新たな魚種の輸入・流通の拡大、分類学的研究の発展による名称の変更など、魚介類の名称をめぐる状況が変化していることを受けたもので、魚介類のうち魚類については令和2年に改正が行われていましたが、この度は甲殻類について改正されたものとなります。

 また令和4年3月30日の改正では、水産物の原産地表示(特に貝類)について新設のQAの記載とこれに伴った改正がされましたので、今回はこちらについて取り上げたいと思います。貝類(主にアサリ)に関する内容となりますが、農産物や畜産物の原産地とは異なる水産物の規定について、知っていただける機会になればと思います。

改正の経緯


 食品表示基準Q&A(生鮮-27)に、水産物の原産地表示(特に貝類)について、現在の表示の方法と考え方、それに至る改正の経緯がまとめられていますが、主に経緯について記載します。

1 生鮮食品の原産地は、原則として農畜水産物が生産(採取及び採捕を含む。)された場所となっていますが、養殖した水産物については、製品となる前に、生きたまま産地を移動し、複数の産地で育成された場合、最も育成期間の長い場所を原産地として表示することが原産地表示の基本的な考え方です。
2~3(略)
4 この考え方は、食品表示法による改正前のJAS法以来から引き継がれているものですが、特に貝類のうちアサリの原産地表示については、平成17年4月に、原産地を誤った表示方法で表示する等の不適正な事例が確認されたことを受け、輸入したアサリを国内で2、3か月蓄養しても国内の成育期間より外国での採捕前の成育期間の方が明らかに長いことから、原産地表示の基本的な考え方によれば、輸入前に採捕された国が原産国となる旨を示した上で、適正な表示を行っていただくよう周知していました。
5 また、平成22年3月には、食品表示基準Q&Aの前身である「食品表示に関するQ&A」を公表し、アサリの稚貝を輸入し又は国内から移植して繁殖させ、成貝を漁獲する場合に、当該アサリの最も蓄養期間が長い産地を表示することとし、その場所での蓄養期間が長いことを証明できる必要があるという考え方を示していました。
6 しかしながら、輸入したアサリについては、外形により成育期間を正確に把握することが困難であり、さらに、事実と異なる成育期間の証明等をもって、国内での成育期間が海外での成育期間より長いこととした上で、原産地を国内の産地と表示する複数の事案が確認されました。
7 このため、令和4年3月、原産地表示の考え方について適正な理解を促進するため、
① 出荷調整用その他の目的のため、水産動植物を短期間一定の場所に保存することを「蓄養」と定義した上で、「蓄養」の期間は貝類の全体の成育期間には含まれないこととする。
② 輸入したアサリの原産地は、蓄養の有無にかかわらず輸出国となることを示す。なお、例外として輸入された稚貝のアサリを区画漁業権に基づき1年半以上(※)育成(養殖)し、育成等に関する根拠書類を保存している場合には、国内の育成地を原産地として表示できることを示す。
(※)輸入したアサリの成育期間の確認が困難なため、アサリの採捕までの一般的な所要年数が3年程度であることを踏まえた整理。
③ 国内の他地域から稚貝のアサリを導入する場合、成貝の輸入したアサリを放流したことと区別するため、稚貝のアサリの根拠書類を保存する必要があることを示す。
の3点について食品表示基準Q&Aの改正を行いました。

根拠書類


 (生鮮-27)7②のように、稚貝のアサリを区画漁業権に基づき1年半以上育成し、国内の育成地を原産地として表示する際に保存が必要となる根拠書類(行政機関等の求めに応じて表示の根拠を説明できる書類)については(生鮮-34)3に記載されています。

3 具体的には、輸入業者や国内生産者が保存している
① 輸入したアサリに係る根拠書類として
(ア) 輸入したアサリの通関に関する書類(輸入許可通知書、産地証明書(CERTIFICATE OF ORIGIN)、その他通関に関する書類)
(イ) 輸入した稚貝のアサリを小分けする場合、実際に漁場に導入されたアサリと通関証明書を突合できる書類(ロット単位で番号管理することとし、小分けしても小分け後のアサリに番号を付与する等の対応が必要となります。)
に加え、
② 国内における育成に係る根拠書類として、
(ア) 区画漁業権の免許を受けた区域における漁場の利用状況が確認できる書類(漁場図、小間図、小間の番号、面積がわかるもの等)
(イ) 稚貝のアサリの搬入・搬出明細書(税関提出書類:小間別の搬入・搬出の記録)
(ウ) 小間毎の漁場へのアサリの導入日、導入数量の記録
(エ) 小間毎の漁場からのアサリの収穫日、収穫数量の記録
(オ) 区画漁業権の登録済証(区画漁業権の免許を漁協等が受けている場合には、育成をする者が当該区画漁業権を行使できる者か別途確認する必要があります。)
などが考えられます。

 この他、(生鮮-27)7③の稚貝のアサリの根拠資料については、(生鮮-35)に記載されていますのでご参照ください。

 「魚介類の名称のガイドライン」や水産物の原産地の考え方については、生鮮の魚介類を扱われる方に限らず、製品の原材料に魚介類を使用される方におきましても、一度改正内容について目を通されるとよいと思います。


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20歳以上を対象とした飲料の表示について


 スーパー等のお酒売場では日々、いろいろな商品を目にすると思います。酒類にあたるもの、お酒のようなテイストのノンアルコールのもの、酒類に該当はしないがアルコール分を含むものと、お酒を飲む機会においての選択肢が広がったように感じます。今回はお酒売場で目にするそれぞれの商品について、アルコール分の視点からそれぞれの定義やどのような表示が必要となるか等について見ていきたいと思います。

酒類について


 酒税法では、酒類は下記の定義となっています。

第二条 この法律において「酒類」とは、アルコール分一度以上の飲料(薄めてアルコール分一度以上の飲料とすることができるもの(アルコール分が九十度以上のアルコールのうち、第七条第一項の規定による酒類の製造免許を受けた者が酒類の原料として当該製造免許を受けた製造場において製造するもの以外のものを除く。)又は溶解してアルコール分一度以上の飲料とすることができる粉末状のものを含む。)をいう。

 こちらから、酒類とはアルコール分が1度以上の飲料とわかります。酒類は、清酒、果実酒、ビール等、品目ごとに定義があり、また品目ごとに必要となる表示事項も異なります。例えば、食品表示基準においては、酒類については原材料名の表示は要しないとされていますが、ビールでは公正競争規約において、清酒では清酒の製法品質表示基準において原材料名の表示の基準が定められています。また日本洋酒酒造組合にて、低アルコールリキュールの原材料表示に関する自主基準が制定されており、『この基準で「低アルコールリキュール」とは、酒税法第3条第21号に規定するリキュールのうちアルコール分10度未満のものをいう。』とされており、品目以外にアルコール分によっても確認が必要となる基準が異なってきます。

 その一方で、酒類における共通の義務表示もあり、その1つとして20歳未満の者の飲酒防止に関する表示が挙げられます。「二十歳未満の者の飲酒防止に関する表示基準」により、「20歳未満の者の飲酒は法律で禁止されています。」「お酒は20歳になってから。」等の表示が必要となりますが、これまで「未成年者の飲酒は法律で禁止されています。」との表示を見かけられたこともあるかと思われます。
 こちらの「未成年者」との表示が可能なのは今年の3月末までとなっており、4月1日以降は「20歳未満の者」との表示が必要となります。
「未成年者の飲酒防止に関する表示基準を定める件の一部を改正する件」に記載の内容が、比較としてわかりやすいと思いますので下記に一部を抜粋いたします。こちらにより、件名(未成年者の飲酒防止に関する表示基準を定める件)や表示基準(未成年者の飲酒防止に関する表示基準)の「未成年者」が「二十歳未満の者」に改められています。

改正後 改正前
二十歳未満の者の飲酒防止に関する表示基準
(酒類の容器又は包装に対する表示)
1 酒類の容器又は包装(以下「容器等」という。)には、「20歳未満の者の飲酒は法律で禁止されている」旨を表示するものとする。
2 前項に規定する表示は、容器等の見やすい所に明瞭に表示するものとし、表示に使用する文字は、6ポイント(日本産業規格Z八三〇五(一九六二)に規定するポイントをいう。以下同じ。)の活字以上の大きさの統一のとれた日本文字とする。ただし、容量360ml以下の容器にあっては、5.5ポイントの活字以上の大きさとして差し支えない。
未成年者の飲酒防止に関する表示基準
(酒類の容器又は包装に対する表示)
1 酒類の容器又は包装(以下「容器等」という。)には、「未成年者の飲酒は法律で禁止されている」旨を表示するものとする。
2 前項に規定する表示は、容器等の見やすい所に明りょうに表示するものとし、表示に使用する文字は、6ポイント(日本工業規格Z八三〇五(一九六二)に規定するポイントをいう。以下同じ。)の活字以上の大きさの統一のとれた日本文字とする。ただし、容量360ml以下の容器にあっては、5.5ポイントの活字以上の大きさとして差し支えない。

附則

  1. この告示は、不正競争防止法等の一部を改正する法律の施行の日(令和元年7月1日)から施行する。
  2. この告示の施行の日から令和4年3月31日までの間、第1項、第6項(表示に使用する文字に係る部分を除く。)及び第7項に規定する表示は、なお従前の例によることができる。

ノンアルコール飲料


 ノンアルコール飲料については、「酒類の広告・宣伝及び酒類容器の表示に関する自主基準」にて、下記のように定義されています。

ノンアルコール飲料とは、アルコール度数 0.00%で、味わいが酒類に類似しており、20 歳以上の者の飲用を想定・推奨しているものとする。

 アルコール度数0.00%ですので、一括表示の名称としては、「清涼飲料水」や「炭酸飲料」等のように一般的な飲料と同様に表示をすることとなりますが、成人の飲用を想定しているものであることから、同自主基準にて下記の容器の表示等の基準が定められています。

  1. 製品に 20 歳以上を対象としている旨を表示する。
  2. 既存のアルコール飲料と同一のブランド名及び誤認を招くような類似する意匠は使用しない。

アルコール分(1%未満)を含む飲料


 アルコール分を1%未満である0.3%や0.5%等含む飲料については、「酒類」にも「ノンアルコール飲料」にも該当しない位置づけとなります。現時点では、アルコール分1%未満の飲料について定義された基準はありませんので、アルコール分を含みますが酒類には該当せず、一括表示の名称としてはノンアルコール飲料と同様に「清涼飲料水」や「炭酸飲料」等と表示することになります。

 酒類ではありませんので、アルコール分の表示や20歳未満の者の飲酒防止に関する表示は義務表示にあたらないことになりますが、アルコール分を含む旨や20歳未満の飲酒防止について同等の表示等、またノンアルコール飲料のように20歳以上を対象としている旨の表示が推奨されると言えるでしょう。

 対象が20歳以上を想定していると伝わることが、こうした商品の表示を考える上で大切と思われます。今後も新たな商品が開発・販売されていくと思いますが、その際の表示について1つの参考となりましたら幸いです。


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酒類の保存のため物品を混和することができる酒類の品目等を定める等の件の一部改正と酒類における添加物の留意点


 6月25日に酒類の保存のため物品を混和することができる酒類の品目等を定める等の件の一部が改正され、「果実酒及び甘味果実酒」に「カゼインカリウム」が記載されました。酒類に使用する添加物については厚生労働省作成の食品添加物公定書の他、国税庁作成の「酒類の保存のため酒類に混和することができる物品」等についても関連してきますので、今回はこちらの確認点についてお伝えできればと思います。

酒類の品目 混和することができる物品名
全酒類 活性炭、フィチン酸、寒天、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、カラギナン、ベントナイト、活性白土、ケイソウ土、微小繊維状セルロース、小麦粉、グルテン、卵白、柿タンニン、タンニン、二酸化ケイ素、ポリビニルポリピロリドン、コラーゲン、パパイン、プロテアーゼ、キトサン、エンドウたんぱく、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、窒素、ウレアーゼ、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア又はイオン交換樹脂
みりん ペクチナーゼ
ビール又は
発泡酒
木材チップ、L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸ナトリウム又はピロ亜硫酸カリウム
果実酒及び
甘味果実酒
ペクチナーゼ、ヘミセルラーゼ、β-グルカナーゼ、カゼイン、カゼインナトリウム、カオリン、パーライト、ばれいしょたんぱく質、酵母たんぱく質抽出物、キチングルカン、ビニルイミダゾール・ビニルピロリドン共重合体、カゼインカリウム、L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸ナトリウム、二酸化硫黄、アルゴン、DL-酒石酸水素カリウム、L-酒石酸水素カリウム、アラビアガム、クエン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メタ酒石酸、DL-酒石酸カリウム、微結晶セルロース、酵母自己消化物、酵母細胞壁、不活性酵母、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、リゾチーム、二炭酸ジメチル又はL-酒石酸カリウム

※実際の告知サイトでは表下に記載されている「注記」部分は割愛しています。

 上の表は、下記、酒税法施行規則第13条第8項第3号の規定により定められたものとなります。

8 酒類の保存のため、次の各号に掲げる品目の酒類に当該各号に定める物品を混和したときは、それぞれ新たに酒類を製造したものとみなさないものとし、当該混和後の酒類の品目は、当該混和前の酒類の品目とみなす。
一 清酒 乳酸、こはく酸又はりんご酸
二 果実酒又は甘味果実酒 酒石酸又はメタ重亜硫酸カリウム
三 国税庁長官が指定する品目の酒類 国税庁長官が指定する物品

 飲食物に使用する添加物について、使用基準を確認する場合は「第9版食品添加物公定書」の「F使用基準」より確認されると思いますが、酒類の場合は「酒類の保存のため酒類に混和することができる物品(長官指定告示物品)」についても併せて確認することとなります。
また、長官指定告示物品の使用目的については、下記のように細目と定義が定められています。長官指定告示物品を指定されている細目以外の目的で使用することはできませんので、酒類の品目に対して使用可能な告示物品であるかの他に、その使用用途を確認することが大切です。
追加された「カゼインカリウム」の場合は、「果実酒及び甘味果実酒」にて「清澄」の目的での使用が可能です。

細目 定義 長官指定告示物品名
清澄 酒類の精製工程において、酒類中に存在する混濁物質、及び混濁物質の生成要因となる原因物質を除去し、酒類の透明度を向上させたり、混濁の発生を予防することをいう。 活性炭、フィチン酸、寒天、ゼラチン、(中略)カゼインカリウム

酸化防止 酒類の貯蔵工程及び精製工程において、酸素の影響を取り除いて品質劣化を防止し、酒質を本来の品質に保持することをいう。 エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸、(後略)
酒質保全 酒類の貯蔵工程において、酒質を劣化させる物質の生成防止又は酒質を劣化させる物質の除去により、酒質の保持と安定化を図ることをいう。 ウレアーゼ、DL-酒石酸水素カリウム、(後略)
再発酵防止 酒類の精製工程において、再発酵(雑菌の繁殖を含む)を抑え、酒質の保持を図ることをいう。 ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、リゾチーム又は二炭酸ジメチル
酸度調整 酒類の製造又は精製工程において、正常な酸度の範囲に調整して品質の維持を図ることをいう。 炭酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、(後略)
酒質矯正 酒類の精製工程において、味、香り、色等に異常を来した酒質を矯正することをいう。 イオン交換樹脂又は活性炭
副剤 長官指定告示物品の機能を安定的かつ効果的に発揮させる目的で、長官指定告示物品と共存させる必要最小限度の物品をいう。 DL-リンゴ酸、DL-リンゴ酸とピロ亜硫酸ナトリウムの混合物、(後略)

 添加物の使用に際しては、使用できる食品であるか、使用用途、使用量の上限、使用制限について等、さまざまな確認が必要となります。酒類については酒税法施行規則よる添加物についての規定もありますので、今後の酒類を扱われる際のご参考となりましたら幸いです。


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玄米及び精米に係る食品表示制度の改正について


 令和3年3月17日に食品表示基準の一部を改正する内閣府令が公布されました。改正の内容は、玄米及び精米に係る食品表示制度についてです。こちらの施行は令和3年7月1日で約1か月後となりますので、施行日を前に改めて今回の改正内容について触れてみたいと思います。

玄米及び精米に関する表示の改正の概要と、基本的な表示の考え方について


概要

  1. 農産物検査による証明を受けていない場合であっても産地、品種及び産年の根拠を示す資料の保管を要件として、当該産地、品種及び産年の表示を可能とし、
  2. 農産物検査証明による等、表示事項の根拠の確認方法の表示を可能とするとともに、
  3. 生産者名等、消費者が食品を選択する上で適切な情報を一括表示枠内に表示できるよう、食品表示基準を改正。

基本的な表示の考え方

単一原料米と表示する場合

  • 産地、品種及び産年が同一であり、かつ、その根拠を示す資料を保管している原料玄米については、「単一原料米」と表示し、その産地、品種及び産年を併記します。
    (この場合の産地は、国産品にあっては都道府県名、市町村名その他一般に知られている地名を、輸入品にあっては原産国名又は一般的に知られている地名を表示します。)

単一原料米以外の原料玄米を表示する場合

  • 単一原料米に該当しない原料玄米については、「複数原料米」等原料玄米の産地、品種及び産年が同一でない旨を表示し、その産地及び使用割合を併記します。その場合には、国産品及び輸入品の原産国ごとに使用割合の高い順に表示します。
  • 産地、品種又は産年を表示したい場合は、その根拠を示す資料を保管すれば、表示の「原産国名及び使用割合」の次に括弧を付して産地、品種又は産年を使用割合と併せて表示することができます。

表示事項の根拠となる情報の確認方法の表示

  • 産地、品種及び産年の全部又は一部を表示する場合において、その表示事項の根拠となる情報の確認方法を表示することができます。

引用:『玄米及び精米に係る食品表示制度の改正について』令和3年3月 消費者庁食品表示企画課

 今回の改正により、改正前の食品表示基準第23条第2項第1号で規定されていた「未検査米の原料玄米にあっては、品種又は産年を表す用語」が表示禁止事項から削除されました。また、食品表示基準Q&Aも3月17日に改正され、玄米及び精米に関する事項について新たな内容が追加されています。

具体的な表示例について


 食品表示基準Q&A(玄米精米-2)3.④に挙げられている表示例をいつくか見てみたいと思います。

【農産物検査法による証明を受けている場合】
(表示例1)全ての原料玄米について、農産物検査法による証明を受けている場合で、その確認方法を表示する場合①

農産物検査法による証明を受けている場合

【原料玄米の一部について農産物検査法による証明を受けている場合】
(表示例4)産地、品種又は産年が異なる、産地、品種及び産年の根拠資料を保管していない又は産地、品種及び産年を表示しない原料玄米を2割と、農産物検査法による証明を受けた原料玄米を8割使用した場合であって、その確認方法を表示する場合

原料玄米の一部について農産物検査法による証明を受けている場合

【農産物検査法による証明を受けていない場合】
(表示例6)産地、品種及び産年について根拠資料を保管しており、その確認方法を表示する場合

農産物検査法による証明を受けていない場合

 なお産地、品種及び産年の根拠を確認した方法の表示は、表示内容に責任を有する者が任意で表示することができる表示事項であり、義務表示ではないため、必ず表示しなければならないということではありませんが、消費者の自主的かつ合理的な選択に資する表示事項であることから、表示することが望ましいと考えられています。(食品表示基準Q&A(玄米精米-3))

根拠資料について


 食品表示基準Q&A(玄米精米-19)では、産地、品種及び産年の全部又は一部を表示する場合の根拠を示す資料について、次のように記載されています。

  1. 具体的には、生産段階の資料として、
    1. 農産物検査法による証明を受けたものにあっては、農産物検査証明書(輸入品のうち、輸出国の公的機関等による証明を受けたものにあっては、輸出国の公的機関等による証明書)
    2. 又は

    3. 農産物検査法による証明を受けていないものにあっては、
      1. どのような種苗を用いて生産されたかが分かる資料(種苗の購入記録等)
      2. 及び

      3. 全体の作付状況に対する品種ごとの作付状況が分かる資料(水稲共済細目 書異動申告書、営農計画書、営農日誌等)

    などが考えられます。

  2. また、上記2.の01.又は02.に加え、流通段階の資料として流通実態に応じて、
    1. 原料米穀について、産地、品種又は産年が記載されている規格書、送り状、 納品書、通関証明書(輸入品の場合)等
    2. 及び

    3. 原料米穀を当該製品に使用した実績が分かるもの(調製、精米及び小分けした米についての指示書、原料受払簿、精米記録、とう精台帳、仕様書等)

    などが考えられます。

  3. いずれにしても、製品に使用されている原料米穀について、原料米穀と製品の相互の関係が明らかとなる資料を保管することが必要であり、確実に当該原料米穀についてトレースができない場合は、根拠を示す資料を保管しているとはみなされません。

 これらの表示の根拠を示す資料の保管は、消費者に販売される製品の表示内容に責任を有する者が調製年月日、精米年月日又は輸入年月日から3年間保管する必要がありますが、根拠を示す一部の資料を生産者等が保管しても問題ない場合もありますので、食品表示基準Q&Aをご参照ください。

 また、今回の食品表示基準の一部改正では、「消費者の選択に資する適切な表示事項」の一括表示枠内への表示が可能となりました。こちらは消費者の選択に資する情報であれば、生産者や販売者が創意工夫し、付加価値として消費者に訴求したい情報を一括表示欄に記載できるものです。具体的には、生産者名、保存方法、分つき米である旨、食味を表す分析データ、品評会等での受賞歴など、消費者が商品を選択する上で参考になる情報が考えられます。

 玄米・精米を扱う事業者の方にとって大きな改正と思われますが、表示可能な内容・要件等をご確認いただき、今後の表示についてご検討いただく機会となればと思います。


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特別用途食品について

 昨年の話となりますが、令和2年11月17日に「特別用途食品の表示許可等について」が一部改正されました。こちらの改正により、書面によらず提出が可能な手続については、書面での提出に代え、オンラインでの提出(電子メールでの提出)が可能となりました。特別用途食品とは、右記のマークが表示されている食品のことです。現在の表示許可件数は68件ですが、過去2年間(平成31年~令和2年)に許可されたものが18件ですので、目にする機会の増えた食品だと言えるでしょう。
 ご自身が扱われる食品カテゴリーではない場合でも、どのような許可表示があるのかを知ることは今後の参考にもなるかもしれませんので、改めて特別用途食品がどのようなものであるか振り返ってみたいと思います。

「特別用途食品」とは(消費者庁 特別用途食品に関するリーフレットより)

  • 乳児の発育や、妊産婦、授乳婦、えん下困難者、病者などの健康の保持・回復などに適するという特別の用途について表示を行うもの(特別用途表示)。
  • 特別用途食品として食品を販売するには、その表示について消費者庁長官の許可を受けなければならない(健康増進法第43条第1項)。
  • 表示の許可に当たっては、規格又は要件への適合性について、国の審査を受ける必要がある。

 また、消費者庁ホームページに掲載されている資料から、特別用途食品の許可件数の内訳とともにどのような食品群があるか見てみましょう。

《特別用途食品※1 表示許可件数内訳》 令和2年12月18日現在

食品群 表示許可件数
病者用食品 許可基準型 低たんぱく質食品 12
アレルゲン除去食品 5※2
無乳糖食品 4※3
総合栄養食品 4
糖尿病用組合せ食品 0
腎臓病用組合せ食品 0
個別評価型 12
妊産婦、授乳婦用粉乳 0
乳児用調製乳 乳児用調製粉乳 13
乳児用調製液状乳 3
えん下困難者用食品 えん下困難者用食品 17
とろみ調整用食品 1
合計 71※4

※1 特定保健用食品を除く
※2 無乳糖食品としても許可しているもの3件含む
※3 アレルゲン除去食品としても許可しているもの3件含む
※4 アレルゲン除去食品及び無乳糖食品として許可しているもの3件については、それぞれの食品群で計上しているため、許可品数は68件

 特別用途食品は、消費者庁長官の許可を受けた上で表示が可能となります。そのため特別用途食品ではない食品に同様の表示をするのは誤認を与える表示となります。例えば、「特別用途食品の表示許可等について」の中では、留意が必要なものとして下記の記載があります。

3 病者用食品について、特別の用途に適する旨の表示とは、次の各項目のいずれかに該当するものであること。したがって、これらの表示がなされた食品が無許可で販売されることのないよう留意すること。

  1.  単に病者に適する旨を表示するもの。例えば、「病者用」、「病人食」等。
  2.  特定の疾病に適する旨を表示するもの。例えば、「糖尿病者用」、「腎臓病食」、「高血圧患者に適する」等。
     なお、具体的な疾病名を表示した場合のみに限られるものでなく、その表現がある特定の疾病名を表示したものと同程度の効果を消費者に与えると考えられる場合を含むものとする。例えば、「血糖値に影響がありません。」、「浮腫のある人に適する。」等。
  3.  許可対象食品群名に類似の表示をすることによって、病者用の食品であるとの印象を与えるもの。例えば、「低たんぱく食品」、「低アレルゲン食品」等。
     ただし、たんぱく質含有量が低い旨の表示を行う食品については、「本品は、消費者庁許可の特別用途食品(病者用食品)ではありません。」との文言を記載して、「低たんぱく質(通常の○○(食品名)の○%)」又は「低たんぱく質(通常の○○(食品名)に比べて○%少ない)」との表示を行ったものについては、病者等が特別用途食品と誤認するおそれがないことから、この限りではない。

 上記より、「特別用途食品ではない食品」」において、「この表示は特別用途食品の許可を受けたものではありません」等の表示をしたとしても、結果的に消費者が誤認すれば、誇大表示に該当することとなりますので、やはり誤認を与えない表示となるように検討されることが大切と思われます。「特別用途食品と誤認されるおそれのある表示について(周知)」との資料も掲載されていますので一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。


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リサイクルマークについて

 食品表示は容器包装されているものに必要ですが、同様に、対象となる素材の容器包装を使用の場合は、「識別マーク」いわゆるリサイクルマークの表示が必要になります。「容器包装」とは「容器」(ボトルや缶や袋のように商品を入れるもの)と「包装」(包装紙やラップのように商品を包むもの)であって商品が消費されたり取り出されたあと不要となるものです。

 識別マークは資源有効利用促進法により表示が定められており、下記が食品に関わる識別マークとその表示が必要となる容器となります。

識別マーク 素材/形状 用途
プラスチック製容器包装 プラスチック製容器包装 飲料、酒類、特定調味料用のPETボトルを除く
紙製容器包装 紙製容器包装
(飲料、酒類用紙パックでアルミ使用のものを含む)
飲料、酒類用紙パックでアルミ不使用のもの及び段ボール製容器包装を除く
PETボトル PETボトル 飲料、酒類、特定調味料用
スチール缶 スチール缶 飲料、酒類用
アルミ缶 アルミ缶 飲料、酒類用

 識別表示は原則として、分離できる個々の容器包装に対して直接表示する必要があり、「カップ」と「ふた」などから成る、多重容器包装等においては、分離可能なそれぞれをひとつの容器包装とみなしますので、表示対象の容器包装毎に直接識別マークを表示するのが原則となります。
ただし、ほぼ同時に捨てられる複数の容器包装がある場合には、まとめていずれかの容器包装に一括して表示をすることができ、その際、各容器包装の「カップ」、「ふた」などの役割名をその識別マークに併記することが必要となります。

 使用されているものが容器包装に該当するかは「容器包装に関する基本的な考え方」の資料が参考となりますので、こちらをご確認いただけますと幸いです。
例えば、飲料パックに添付されているストロー自体は容器包装には該当しないため識別表示は不要ですが、ストローの袋については、ストローが商品の一部と解され、商品を包むものとして識別表示が必要となります。

 扱われる商品によって容器包装はさまざまと思われますが、「容器包装の識別表示Q&A」よりよく参照する内容についていくつかご紹介できればと思います。

プラマークに付されている「PP, PE」などの材質表示ついて

(Q76) 材質表示とはどのようなものですか?
<回答>
材質表示とは、プラスチック製容器包装において、使用されているプラスチック等の種類を表す表示のことです。材質表示には、識別表示とは異なり、法的義務はありませんが、望ましいこととされています。

(Q77) 材質表示の表記方法について教えてください。
<回答>
プラスチック製容器包装の材質表示は、JIS K 6899-12000(ISO 1043-11997)で定められている記号を用いて行うことを推奨します。また、複合材質及び複合素材については、主要な構成材料を含め、2つ以上を表記し、主要な材料に下線を付すことを推奨します。(後略)

ラベルの識別表示について

(Q16) 容器包装にラベルを付けている場合、ラベル自身の識別表示を入れる必要がありますか?
<回答>
ラベルは、それが付けられている容器包装の一部とみなされますので、ラベルが紙製やプラスチック製であっても、基本的には識別表示は必要ありません。
ただし、下記2つの条件を両方満たしている場合は、ラベルが「包んでいるもの」となるため、ラベルそのものに対する識別表示が必要となります。

  • 容器包装の1/2を超える
  • ラベルを付けられた容器包装から、ラベルを容易に分離して廃棄することができる
    例)ペットボトルに付けられたプラスチック製のラベル、板状チョコレートの胴巻き(アルミ箔の上に巻く紙) 等

業務用の商品について

(Q87) 業務用の容器包装へも識別マークを表示する必要があるのですか?
<回答>
業務用の容器包装へは識別マークは必要ありません。
事業者が専らその事業活動で消費する商品の容器包装については再商品化義務の対象外であり、かつ表示義務の対象外となります。対象外の製品にマークがあることは混乱の元となるため、表示しないようにしてください。

 既製品の容器包装を仕入れて使用されている場合などは、すでに識別マークが表示されているものもあると思われます。現在使用されている容器包装の再確認や、これから作成されようとされるパッケージについてご参考となりましたら幸いです。


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指定成分等含有食品に係る表示が6月1日に施行されました。

 「指定成分等含有食品」とは、特別の注意を必要とする成分等として、厚生労働大臣が指定する成分等を含有する食品を指します。

 平成30年6月13日、食品衛生法の一部を改正する法律が公布され、改正の概要の1つに「特別の注意を必要とする成分等を含む食品による健康被害情報の収集:健康被害の発生を未然に防止する見地から、特別の注意を必要とする成分等を含む食品について、事業者から行政への健康被害情報の届出を求める。」があり、背景について次に引用いたします。

 いわゆる「健康食品」の中には、使用方法によっては人体に有害な作用を生じさせることもある成分(アルカロイド、ホルモン等)を含有しているものもある。その中で、それらの製造管理が適切でなく含有量が均一でないこと、摂取目安量が科学的根拠に基づいていないこと等から多くの健康影響が生じた事例が発生したことから、今後、これに類した事例を未然に防ぐために本制度が創設されている。

 指定成分等含有食品に係る表示は、食品衛生の観点からは、指定成分含有食品による健康被害情報の届出制度の目的を補完できること、消費者への情報提供の観点からは、消費者の安全及び自主的かつ合理的な選択の機会の確保につながることから、食品表示基準が一部改正され、指定成分等含有食品に係る表示が規定されました。

 現在、特別の注意を必要とする成分等として指定されている成分は以下の4つです。

 「コレウス・フォルスコリー」、「ドオウレン」、「プエラリア・ミリフィカ」、「ブラックコホシュ」

 「食品衛生法等の一部を改正する法律による改正後の食品衛生法第8条の施行に伴う関係法令等の整備について」の中で、指定成分等の別名の代表例が示されていましたので引用します。

(1) コレウス・フォルスコリー Coleus、Forskolin、Coleus forskohlii
(2) ドオウレン クサノオウ、ハックツサイ、ヨウシュクサノオウ、グレーターセランディン、Celandine、Greater celandine、Swallow-wort、Chelidonium majus
(3) プエラリア・ミリフィカ 白ガウクルア、White Kwao Krua、Pueraria mirifica
(4) ブラックコホシュ ラケモサ、Black cohosh、Black snakeroot、Actaea racemosa

 次に、指定成分等含有食品に係る表示についての具体的な表示事項、表示の方式を食品表示基準から確認してみましょう。

◆ 第三条 第2項

指定成分等含有食品(食品衛生法第八条第一項に規定する指定成分等含有食品をいう。以下同じ。)

表示事項 表示の方法
指定成分等含有食品である旨 「指定成分等含有食品(○○)」と表示する(○○は、指定成分等(食品衛生法第八条第一項に規定する指定成分等をいう。以下この項及び別表第二十の指定成分等含有食品の項において同じ。)の名称とする。)。
食品関連事業者の連絡先 食品関連事業者のうち表示内容に責任を有する者の電話番号を表示する。
指定成分等について食品衛生上の危害の発生を防止する見地から特別の注意を必要とする成分又は物である旨 「指定成分等とは、食品衛生上の危害の発生を防止する見地から特別の注意を必要とする成分又は物です。」と表示する。
体調に異変を感じた際は速やかに摂取を中止し医師に相談すべき旨及び食品関連事業者に連絡すべき旨 「体調に異変を感じた際は、速やかに摂取を中止し、医師に相談してください。加えて、体調に異変を感じた旨を表示された連絡先に連絡してください。」と表示する。

◆ 別表第二十(第八条関係)

様式 表示の方式
別記様式一の規定による。 第八条各号(第三号を除く。)の規定によるほか、指定成分等含有食品である旨及び指定成分等について食品衛生上の危害の発生を防止する見地から特別の注意を必要とする成分又は物である旨は、JISZ八三〇五に定める十四ポイントの活字以上の大きさの統一のとれた文字で表示する。

 これらの他、第5条第1項の表(義務表示の特例)、第10条第1項(義務表示)、第11条第1項の表(義務表示の特例)、第15条(義務表示)、別表第23に「指定成分等含有食品」の文言が追記されています。

 また、指定成分等含有食品を取り扱われる方にあっては上記の表示の他、健康被害の情報を消費者等から受け付け、適切に評価し、都道府県知事等に届け出ることのできる体制を整えることが必要となります。

 現在の指定されている成分は、主に健康食品を扱われる方にとって関係のあるものと思われますが、商品に含有する成分によって、必要となる表示事項があることを一度目を通されてみてはいかがでしょうか。


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食品表示法第六条第八項に規定するアレルゲン、消費期限、食品を安全に摂取するために加熱を要するかどうかの別その他の食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼす事項等を定める内閣府令

 今回は食品安全に重大な影響のある事項として、上記内閣府令をテーマとして取り上げたいと思います。“食品表示法第六条第八項に規定…”とありますので、食品表示法第六条第八項を確認してみたいと思います。

内閣総理大臣は、食品関連事業者等が、アレルゲン、消費期限、食品を安全に摂取するために加熱を要するかどうかの別その他の食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼす事項として内閣府令で定めるものについて食品表示基準に従った表示がされていない食品の販売をし、又は販売をしようとする場合において、消費者の生命又は身体に対する危害の発生又は拡大の防止を図るため緊急の必要があると認めるときは、当該食品関連事業者等に対し、食品の回収その他必要な措置をとるべきことを命じ、又は期間を定めてその業務の全部若しくは一部を停止すべきことを命ずることができる。

 食品表示では名称、原材料名、添加物、原料原産地名と食品の種類によってもいろいろな表示事項がありますが、こちらの文章からも内閣府令で定められる事項が食品を安全に摂取するため重要な表示事項であることがわかると思います。消費者にとって食品表示はその商品についての大切な情報源ですので、食品表示の業務に携わる方は日々気を遣われていることと思います。

 内閣府令の具体的な内容を見ていきたいと思います。内閣府令で食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼす事項と定めるものは、次に掲げる事項及びこれを表示する際に食品関連事業者等が遵守すべき事項とされています。

一 名称
二 保存の方法
三 消費期限又は賞味期限
四 アレルゲン
五 L―フェニルアラニン化合物を含む旨
六 指定成分等含有食品に関する事項
七 特定保健用食品を摂取をする上での注意事項
八 機能性表示食品を摂取をする上での注意事項
九 次に掲げる食品にあっては、食品表示基準別表第十九の当該食品の項の中欄に掲げる表示事項のうちそれぞれ次に定めるもの
イ 食肉 処理を行った旨、飲食に供する際にその全体について十分な加熱を要する旨、一般的に食肉の生食は食中毒のリスクがある旨及び子供、高齢者その他食中毒に対する抵抗力の弱い者は食肉の生食を控えるべき旨
ロ 食肉製品 非加熱食肉製品である旨
ハ 乳製品 飲食に供する際に加熱する旨
ニ 乳又は乳製品を主要原料とする食品 乳若しくは乳製品を原材料として含む旨、乳成分を原材料として含む旨又は主要原料である乳若しくは乳製品の種類別のうち少なくとも一つを含む旨
ホ 鶏の液卵 未殺菌である旨及び飲食に供する際に加熱殺菌を要する旨
ヘ 生かき 生食用であるかないかの別
ト ふぐを原材料とするふぐ加工品 生食用であるかないかの別
チ 冷凍食品 飲食に供する際に加熱を要するかどうかの別及び生食用であるかないかの別
十 次に掲げる食品にあっては、食品表示基準別表第十九の当該食品の項の中欄に掲げる表示事項
イ ゆでがに
ロ 容器包装に密封された常温で流通する食品のうち、水素イオン指数が四・六を超え、かつ、水分活性が〇・九四を超え、かつ、その中心部の温度を摂氏百二十度で四分間に満たない条件で加熱殺菌されたものであって、ボツリヌス菌を原因とする食中毒の発生を防止するために摂氏十度以下での保存を要するもの
十一 栄養機能食品を摂取をする上での注意事項
十二 次に掲げる食品にあっては、食品表示基準別表第二十四の当該食品の項の中欄に掲げる表示事項のうちそれぞれ次に定めるもの
イ シアン化合物を含有する豆類 アレルゲン及び使用の方法
ロ アボカド、あんず、おうとう、かんきつ類、キウィー、ざくろ、すもも、西洋なし、ネクタリン、パイナップル、バナナ、パパイヤ、ばれいしょ、びわ、マルメロ、マンゴー、もも及びりんご アレルゲン、保存の方法及び消費期限又は賞味期限
ハ 食肉 アレルゲン、保存の方法、消費期限又は賞味期限、処理を行った旨、飲食に供する際にその全体について十分な加熱を要する旨、一般的に食肉の生食は食中毒のリスクがある旨及び子供、高齢者その他食中毒に対する抵抗力の弱い者は食肉の生食を控えるべき旨
ニ 鶏の殻付き卵 アレルゲン、保存の方法、賞味期限、使用の方法、摂氏十度以下で保存することが望ましい旨、賞味期限を経過した後は飲食に供する際に加熱殺菌を要する旨、加熱加工用である旨及び飲食に供する際に加熱殺菌を要する旨
ホ 切り身又はむき身にした魚介類であって、生食用のもの アレルゲン、保存の方法及び消費期限又は賞味期限
ヘ 切り身にしたふぐ、ふぐの精巣及びふぐの皮であって、生食用のもの アレルゲン、保存の方法、消費期限又は賞味期限及び生食用であるかないかの別
ト 冷凍食品のうち、切り身又はむき身にした魚介類を凍結させたもの アレルゲン、保存の方法、消費期限又は賞味期限及び生食用であるかないかの別
チ 生かき アレルゲン、保存の方法、消費期限又は賞味期限及び生食用であるかないかの別
十三 生乳、生山羊乳及び生めん羊乳にあっては、食品表示基準別表第二十四の生乳、生山羊乳及び生めん羊乳の項の中欄に掲げる表示事項
十四 容器包装に入れられた添加物にあっては、使用の方法及びL―フェニルアラニン化合物である旨又はこれを含む旨
十五 食品表示基準第四十条に規定する生食用牛肉の注意喚起表示に関する事項

※記載を一部省略していますので、取り扱われる製品に関連すると思われる事項については内閣府令よりご確認ください。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/food_labeling_cms101_200327_29.pdf

 また、食品表示法の一部を改正する法律が施行されることに伴い、内閣府令で定める事項について食品表示基準に従った表示がされていない食品の販売をした場合において、当該食品を回収するときは行政機関への届け出が義務化されその情報は消費者に公表されることとなります。施行日は令和3年6月1日となっておりますので、原料原産地や栄養成分の強調表示など消費者の商品選択に資する情報も重要ですが、食品を安全に摂取するために重量な事項についても今一度確認されてはいかがでしょうか。


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添加物の表示方法について


 今回は原材料名としての添加物の表示方法について取り上げたいと思います。下記の表示を例にして、食品表示基準とともに確認していきたいと思います。

原材料名:小麦粉、砂糖、全卵、植物油脂、カシューナッツ、水あめ、くるみ、アーモンドパウダー、メープルシロップ、牛乳、食塩/膨張剤、トレハロース、増粘剤(キサンタン)、香料、着色料(カラメル)

1次に掲げるものを除き、添加物に占める重量の割合の高いものから順に、
(1)別表第六の上欄に掲げるものとして使用される添加物を含む食品にあっては当該添加物の物質名及び同表の下欄に掲げる用途の表示を、
(2)それ以外の添加物を含む食品にあっては当該添加物の物質名を表示する。

食品表示基準(P.13 添加物)

(1):別表第六の上欄に掲げられている使用用途は下記の8つの用途です。

「甘味料」「着色料」「保存料」「増粘剤、安定剤、ゲル化剤又は糊料」「酸化防止剤」「発色剤」「漂白剤」「防かび剤又は防ばい剤」

 これらの用途で使用された添加物は、別表第六の下欄に掲げられている用途名に添加物の物質名を併記して表示することとなり、上記の表示例では「増粘剤(キサンタン)」「着色料(カラメル)」が該当します。

(2):別表第六の上欄に掲げる用途でない添加物の場合は、物質名で表示されています。上記の表示例では「トレハロース」が該当しますが、「膨張剤」「香料」は、(1)と(2)に該当しません。

 添加物の表示方法については項目3の内容として次の記載もあり、「膨張剤」「香料」はこちらによる表示となります。

1の規定にかかわらず、添加物の物質名の表示は、一般に広く使用されている名称を有する添加物にあっては、その名称をもって、
(3)別表第七の上欄に掲げるものとして使用される添加物を含む食品にあっては同表の下欄に掲げる表示をもって、これに代えることができる。

食品表示基準(P.14 添加物)

(3):別表第七の上欄に掲げられているものは下記の通りです。

「イーストフード」「ガムベース」「かんすい」「酵素」「光沢剤」「香料」「酸味料」「チューインガム軟化剤」「調味料(甘味料及び酸味料に該当するものを除く。)」「豆腐用凝固剤」「苦味料」「乳化剤」「水素イオン濃度調整剤」「膨張剤」

 こちらは”食品表示基準について 別添 添加物1-4”を参照されるとわかりやすいかもしれません。
それぞれに定義、一括名、添加物の範囲が定められており、使用用途と添加物によって、上記の表示例のように一括名で表示されるものもあります。このように、添加物の表示方法は(1)、(2)、(3)の大きく3つあることが分かります。

 今回(1)で取り上げた用途名と添加物の物質名を併記する表示について、添加物の物質名に「色」、「増粘」の文字を含む場合に「着色料」、「増粘剤」または「糊料」の用途を省略する表示、添加物の物質名でも一般に広く使用されている名称として簡略名での表示も可能とされており、仮に同じ添加物を同じ用途で使用した商品であっても、表示作成にあたられる方や企業毎の自社ルール等によって、表示方法は違ってくるものと思います。

 また(3)の一括名による表示は、表示スペースが限られる場合に表示の文字数を減らすことができること、添加物の物質名のみの表示よりも使用目的がわかりやすい面もありますが、表示を見る側からすると使用されている添加物が表示からはわからないといった面もあります。こちらについては現在行われている、食品添加物表示制度に関する検討会において論点の一つとされております。

 一般的に「添加物」というとあまり良いイメージをもたれてない印象がまだありますが、商品を作る上で必要となるからこそ使用される添加物と思いますので、表示方法の基準に準じた上で見やすさ、わかりやすさが考慮された表示にして頂ければと思います。


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ビールの表示について


 近年クラフトビールが盛り上がりを感じますね。大手メーカー様の商品と比較すると割高に感じられることもありますが、それぞれの醸造所独自の商品に魅力を感じる方も多いと思います。そこでクラフトビールとはそもそも何なのか、地ビールとは違うものなのかについても触れながら、今回はビールの表示について取り上げたいと思います。
 
 まず、「地ビール」については国税庁のHPに次のように記載されています。

一つの製造場でのビールの年間の製造見込数量が2,000キロリットル以下の小口醸造ビールを地ビールといいます。平成6年4月の酒税法改正により、ビールの製造免許を取得する際の要件である最低製造数量基準が、2,000キロリットルから60キロリットルに引き下げられたことから、小規模なビールの製造が可能となりました。

 また、「クラフトビール」については日本では明確な定義はないようでしたが、現在のところ「クラフトビール=地ビール」との認知が多いのではと感じられます。
 一方アメリカでは、こういう醸造者が地ビール醸造者と考えられているというおおまかな概念は存在しているようでしたので、興味を持たれた方はこちらをご覧いただければと思います。

Craft Brewer Definition

 いずれのビールであっても表示が必要となる点に変わりはありません。酒類の表示については、食品表示基準や公正競争規約の他、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律等から表示事項を確認していくこととなります。表示は、それぞれに基づく表示内容が満たされている必要があり、どれかの基準に基づく表示のみをし、他の基準の表示を省略することはできません。食品表示基準において酒類に定められている表示は次の通りです。

「名称」、「添加物」、「内容量」、「食品関連事業者の氏名又は名称及び住所」、「製造所又は加工所の所在地及び製造者又は加工者の氏名又は名称」、「L-フェニルアラニン化合物を含む旨」、「遺伝子組換え食品に関する事項」、「原料原産地名」(輸入品を除く。)
(食品表示基準第3条第1項、同条第2項)

※ 食品表示基準においては、酒類は「原材料名」、「アレルゲン」、「原産国名」の表示を要しないこととされており、表示義務は課されていません。(食品表示基準第5条)

(参照:食品表示法における酒類の表示のQ&A問8 一部引用)

 また、食品表示基準では「保存の方法」、「消費期限又は賞味期限」、「栄養成分の量及び熱量」についても表示の省略が可能となります。

 次に酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律についてですが、普段酒類を取り扱われない方にとってはほとんど接点のないものかと思います。こちらでも食品表示基準などと同様に表示すべき事項が定められており、例としては酒類の品目、アルコール分、20歳未満の者の飲酒防止に関する表示等となります。

 今回はビールをテーマとしていますので、こちらのコラムでは「ビールの表示に関する公正競争規約」をメインに表示事項を確認していきたいと思います。まずは”必要な表示事項”についてです。こちらについては義務表示になりますので問題ないかと思います。

(1) ビールである旨
(2) 原材料名
(3) 賞味期限
(4) 保存方法
(5) 内容量
(6) アルコール分
(7) 事業者の名称及び所在地
(8) 取扱上の注意等

 次に”特定用語の表示基準”です。ビールについて次の用語を使用の場合はそれぞれ基準に従う必要があります。これは日本語以外での表示であっても同様となります。

(1) ラガービール
貯蔵工程で熟成させたビールでなければラガービールと表示してはならない。

(2) 生ビール及びドラフトビール
熱による処理(パストリゼーション)をしないビールでなければ、生ビール又はドラフトビールと表示してはならない。この文言を容器又は包装に表示する場合は、「熱処理していない」旨を併記して表示しなければなりません。

(3) 黒ビール及びブラックビール
濃色の麦芽を原料の一部に用いた色の濃いビールでなければ、黒ビール又はブラックビールと表示してはならない。

(4) スタウト
濃色の麦芽を原料の一部に用い、色が濃く、香味の特に強いビールでなければ、スタウトと表示してはならない。

※(1)~(3)までの文言は、ビールである旨が明瞭である場合には、当該文言中のビールの文字を省略し、単に「ラガー」、「生」などと表示することができる。

  • 「特製」、「吟醸」等製造方法に関する文言は、施行規則で定めるところにより表示することができる。
  • 「高濃度」、「高純度」、「高アルコール」等品質、成分に関する文言は、施行規則で定めるところにより表示することができる。

 最後に”不当表示の禁止”についてです。表示してはならないとされている表示ですので、こちらも確認されることをおすすめします。主に商品の内容や品質などに誤認をあたえる表示が禁止されており、「原産国、産地等について誤認されるおそれがある表示」、「原材料の原産国について、あたかもその原産国のもののみを用いているかのように誤認されるおそれがある表示」等があげられています。不当表示の禁止については、公正競争規約施行規則に具体的に記載されていますので、そちらもご確認いただければと思います。

 今回は地ビールということで「ビールの表示に関する公正競争規約」より確認いたしましたが、輸入品のビールについては「輸入ビールの表示に関する公正競争規約」がございますので、輸入品についてはそちらをご確認ください。

 ビールについては平成29年度の税制改正により定義が拡大されたことによってこれからさらにクラフトビール(今回は地ビールと同意といたします。)が賑わいを見せるのではと思います。アルコールですので適度に楽しみながら、その地域や醸造所ならではのビールを飲み比べつつ各々の好きなビールを見つけてみてはいかがでしょうか。


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