機能性表示食品のガイドライン概要について

By | 2015年2月2日

機能性表示食品とは、生鮮食品から加工食品、サプリメントなど食品全般に、科学的根拠を届出すれば「機能性」を表示できるという新しい制度のものです。

昨年夏に検討会報告書が公表されてからの流れとしては、12月に検討会で条件付きの答申が出され、今年1月にワーキンググループでガイドライン概要が公表され、今はガイドライン全容の公表を待っている、といった状況です。(また関連するものとして昨年11月頃に「特定保健用食品申請に係る申請書作成上の留意事項」の文書についての改定が発表されました。臨床試験の方法の考え方など再確認できます。)

今回の「概要」版では、食経験について「当該食品と類似する食品」での評価も認める記載、また臨床試験の参加者について「疾病に罹患していない者」の考え方の記載などもありましたが、より分かりやすくなったものとして「可能な機能性表示の範囲」が改めてまとめてあることが特徴かと思います。

1. 容易に測定可能な体調の指標の維持に適する又は改善に役立つ旨
2. 身体の生理機能、組織機能の良好な維持に適する又は改善に役立つ旨
3. 身体の状態を本人が自覚でき、一時的であって継続的、慢性的でない体調の変化の改善に役立つ旨

 ※ 身体の特定の部位に言及した表現は可能
 ※ 特定保健用食品で認められている範囲内の表現は可能(疾病リスク低減表示を除く)

概要では上記の内容までですが、ガイドライン全容がでてくるときには、もう少し具体的な例の記載があるかもしれません。

「特定部位」の表現、「特定保健用食品で認められている」表現ができるといった点では、規制緩和として大きな変化であることが改めて認識できます。反対に認められない表現についても記載がありましたが、ここは従来どおりの理解(疾病の治療・予防や意図的な健康の増強などの表現の禁止)と同じで大丈夫です。

また答申書の付帯条件にも「科学的根拠の無い製品群が市場から淘汰されることを強く期待」「科学的根拠の無いイメージ広告等に対する行政処分をより強化すべき」といった記載がありますので、機能性表示食品の制度を利用しない場合でも、科学的根拠を整備したうえで表示と広告を自主点検していく流れになるのではと思います。

科学的根拠が必要とはいえ、自社でもつとなればそれなりに費用と時間がかかるものですが、これを支援する動きもあります。今年1月に農水省より、農産物のシステマティックレビューを実施し、生産現場が活用できるようするという報道発表がありました。

対象は米(γ-アミノ酪酸)、温州ミカン(β-クリプトキサンチン)、緑茶(メチル化カテキン)、鶏肉(イミダゾールジペプチド)の4品目4成分です。生鮮食品、加工食品、サプリメントと扱う商品形態の違いにもよりますが、こうした施策もうまく活用できるようになっていくでしょう。

また制度の特徴として、届出された科学的根拠が情報公開されることが大きなポイントですので、メディアも取材と検証がしやすくなる分、消費者に対する分かりやすい情報発信が進むのではと思います。購入側の立場で考えると、売場にトクホ商品が増えるような印象になるのかもしれないですね。今後も話題になりそうな制度ですので、また機会があればまとめてみたいと思います。

参照資料:
12月9日 消費者委員会答申書
機能性表示食品に係る届出に関するガイドライン(案)の概要
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/wg3/kenko/150114/item2.pdf


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川合 裕之

川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2023年12月『食品と開発』(健康メディア.com)「海外の栄養プロファイリングシステムと栄養表示制度」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

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