【2022年3月17日:食品表示改正情報 ミニセミナー(Zoomウェビナー)開催のお知らせ】
こちらの記事の内容についてミニセミナーを開催いたします。食品表示基準などの公開資料等をもとに、確認しておくべきポイントなどを整理してお伝えします。 |
2022年1月17日に内閣府消費者委員会にて第66回食品表示部会が開催され、食品表示基準の一部改正に関する審議が行われました。栄養成分、遺伝子組換え等に関する改正案の意見募集(2021年10月27日~11月26日)を終え、2022年3月末までに一部改正の公布と同日施行が予定されていますので、食品表示部会資料「食品表示基準の一部改正(消費者庁)」をもとに、主な改正点について整理してみたいと思います。
<ポイント>
- 脂質の分析方法を統合整理、クロム、セレン、ヨウ素の新たな分析方法を追加
- 遺伝子組換え表示対象農産物に「からしな」を追加
- 特定遺伝子組換え農産物の表示対象から「高オレイン酸」を削除
栄養成分について
2020年12月に文部科学省より公表された「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」における分析方法等の改訂が、直接的な背景であるといえます。以下、資料「食品表示基準の一部改正について」より引用します。
栄養成分等に係る公定法については、基準別表第9及び「食品表示基準について」別添栄養成分等の分析方法等(以下「分析等通知」という。)に規定されている。分析等通知に記載されている方法以外の方が、より定量に適している場合があるなど、従前より分析等通知における運用上の課題が指摘されていた。
これに加え、文部科学省の日本食品標準成分表2020年版(八訂)が公表され、新たな栄養成分等の分析方法等が追加。これらを踏まえ、事業者の実行可能性や都道府県等における検証可能性も踏まえつつ、消費者庁において「食品表示基準における栄養成分等の分析方法等に係る調査検討事業」を実施し、関係法令等の改正の要否等を議論。
そして上記の調査検討事業における議論の結果をもとに、今回の改正案が示されたことになります。
「食品表示基準における栄養成分等の分析方法等に係る調査検討事業」における議論を踏まえ、栄養成分、栄養機能食品の表示、栄養強調表示に係る分析方法等を定めた基準別表第9を改正し、新たな分析方法の追加を行う。
現行の基準別表第9に規定されているゲルベル法以外の測定及び算出の方法並びに「食品表示基準における栄養成分等の分析方法等に係る調査検討事業」において追加することが妥当と判断された酸・アンモニア分解法は「溶媒抽出-重量法」と整理し、具体的な分析方法等は引き続き分析等通知に規定。
改正箇所は、食品表示基準別表第9です。以下に別表第9の「栄養成分及び熱量」「測定及び算出の方法」のみを抜粋し、現行と改正案を整理してみます。
栄養成分及び熱量 | 測定及び算出の方法 | |
---|---|---|
脂質 | 現行 | エーテル抽出法、クロロホルム・メタノール混液抽出法、ゲルベル法、酸分解法又はレーゼゴットリーブ法 |
改正案 | ゲルベル法又は溶媒抽出-重量法 | |
クロム | 現行 | 原子吸光光度法又は誘導結合プラズマ発光分析法 |
改正案 | 原子吸光光度法、誘導結合プラズマ発光分析法又は誘導結合プラズマ質量法 | |
セレン | 現行 | 蛍光光度法又は原子吸光光度法 |
改正案 | 蛍光光度法、原子吸光光度法又は誘導結合プラズマ質量法 | |
ヨウ素 | 現行 | 滴定法又はガスクロマトグラフ法 |
改正案 | 滴定法、ガスクロマトグラフ法又は誘導結合プラズマ質量法 |
その他、別表第12の「ビタミンK」の「高い旨の表示の基準値」の100kcal当たりが、30㎍から15㎍に変更されます。
なお、「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」では熱量の算出方法が変更(アミノ酸組成によるたんぱく質、脂肪酸のトリアシルグリセロール当量で表した脂質、利用可能炭水化物(単糖当量)、糖アルコール、食物繊維、有機酸及びアルコールに各成分のエネルギー換算係数を乗じて算出)されましたが、調査検討事業の検討結果、熱量については引き続き「修正アトウォーター法」により算出することになりました。
遺伝子組換えについて
「からしな」の追加と、「高オレイン酸」の削除の大きく2つの改正が予定されていますが、それぞれ資料「食品表示基準の一部改正について」より背景と改正概要について引用します。
遺伝子組換えからしな(以下「GMからしな」という)について、厚生労働省による安全性審査を経て、GMからしな由来の食品の国内流通が見込まれる。
このため、基準別表第16及び第17に掲げる対象農産物に「からしな」を加える。
今回、安全性審査が行われているGMからしなは油糧用の品種であり、食用油としての流通のみが想定されることから、別表第17のからしなに係る加工食品は規定しないこととする。
高オレイン酸遺伝子組換え大豆は、組換えDNA技術を用いて生産されたことにより、組成、栄養価等が通常の農産物と著しく異なる「特定遺伝子組換え農産物」とされている。
今般、高オレイン酸の形質を有する大豆について、従来育種により生産可能となったことにより、高オレイン酸遺伝子組換え大豆は、「特定遺伝子組換え農産物」の定義に該当しなくなった。
このため、「特定遺伝子組換え農産物」として義務表示の対象を規定している基準別表第18の上欄から、「高オレイン酸」を削除する。
改正箇所は、食品表示基準別表第16、17、18です。
別表第16(第2条関係)
[1~8 略] 9 からしな 【追加】 |
別表第17(第3条、第9条関係)
対象農産物 | 加工食品 |
(略) | |
からしな 【追加】 |
別表第18(第3条、第18条関係)
形質 | 加工食品 | 対象農産物 | |
現行 | 高オレイン酸 | 1 大豆を主な原材料とするもの(脱脂されたことにより、上欄に掲げる形質を有しなくなったものを除く。) 2 1に掲げるものを主な原材料とするもの |
大豆 |
ステアリドン酸産生 | |||
改正案 | 【削除】 ステアリドン酸産生 |
なお、今回の基準改正は「高オレイン酸」形質に係る表示を妨げるものではないため、基準改正後においても高オレイン酸形質を付加価値として事業者が訴求したい場合は、引き続き、根拠に基づき任意でその表示をすることが可能とされています。また、「高オレイン酸大豆」の使用の旨を強調する場合は「特色のある原材料等に関する事項」に従って表示することが必要です。
その他、食品表示基準別表第22(表示禁止事項)の「しょうゆ」「食用植物油脂」について、日本農林規格(JAS)の改正に伴い、引用箇所の表現が変更されています。
今後の予定
2022年3月末までに同日での公布と施行が予定されています。すぐに表示の修正対応が必要になる改正ではありませんが、該当する表示がされている商品を取り扱いの場合は、あらためて確認されておくとよいと思います。
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川合 裕之
■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。
■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)
【寄稿】
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」
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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師
■最近の講演・セミナー実績
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