外食メニューと不当表示について

By | 2015年11月2日

不当表示

今回のコラムテーマは、「外食」のメニュー名と、不当表示についてです。

2年前の2013年秋にメニュー名の不当表示問題が起きた後、消費者庁は表示適正化に向けた会議、意見交換会を行い、翌2014年春には「メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方について」を発表しました。別の流れではありますが、同じく2014年春から外食のアレルゲン表示に関する検討会が消費者庁で開かれ、同2014年末には「外食等におけるアレルゲン情報の提供の在り方検討会中間報告」が発表されています。 その後2015年4月に食品表示基準が施行されました。

外食の食品表示に対する関心が高まっているのは、ここ2年間の背景があるからではと思いますので、まずは適正化のきっかけとなったと思われる、外食と食品表示、とりわけ不当表示についてまとめてみたいと思います。

不当表示の基本


みなさんもご存じのとおり、次のような表示が不適切とされていたと思います。

  「牛の成形肉のメニューに『ステーキ』と表示すること」
  「有機野菜を一部使用したメニューに(一部使用とは表示せず)『有機野菜』と表示すること」

「実際よりも著しく優良と誤認させる表示である」として不当表示とされるのですが、詳細な事例については消費者庁が「メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方について」にまとめてあります。ここでは、その基本的な考え方をお伝えしようと、まとめてみました。

1: 表示と実際とが異なること。
2: 表示と実際とが異なることを一般消費者が知っていれば、そのメニューに惹きつけられないこと。

そして「1: 表示と実際とが異なること」は、「モノが異なる」「量が異なる」の2つに分けて考えることができます。先ほどの例でいえば、次のようになります。

・牛の成形肉は、ステーキではない(モノが異なる)
・有機野菜は、そのメニューの一部にしか使われていない(量が異なる)

食品表示の仕事をすると、その表示方法は正しいかといった視点も必要なのですが、「表示と実際とが適切に対応しているか」といった視点がより大切であると言えます。

ここでは「表示と実際とが適切に対応しているか」の視点に対し、モノと量の2種類の考え方をあげましたが、次に外食メニューの不当表示問題で出てきたキーワードに当てはめてみます。

モノの視点「それは○○と呼べるものか?」
 ・ 定義や規格があるもの(例:銘柄、産地、契約農家、海老、ステーキ、生クリーム、地鶏、有機等)
 ・ 客観的な根拠が必要なもの(例:フレッシュ、手作り、自家製、朝獲り等)

量の視点「それはどの程度であるか?」
 ・ 使用したメニューの割合(例:表示した産地、有機等の原材料を使用したメニューが一部である)
 ・ 原材料中の使用割合(例:同種類の原材料のうち、表示した産地、有機等の原材料が一部である)

といった具合です。加工食品の場合には、「メニュー」を「製品」と置き換えて読んでみてください。

不当表示を起こさないために


最後に、不当表示を起こさないため、予防するために3つのポイントにまとめてみました。

 1.必要性を認識すること
 2.ルールを知ること
 3.実態を把握すること

最も難しいのは、継続性が重要になる3番目の「実態を把握すること」です。それには、1番目で必要性を認識する、といった指導者レベルからの取り組みが必要となります。

基本的な対策は食品表示のそれと同じですが、やはり自社業務にとって「仕入原材料のチェックに必要な視点」を設定することかと思います。その対策などで、不当表示を起こさない仕組みはある程度できあがると思われますので、まだ取り組んでいない方はご検討ください。

なお、外食でのアレルゲン表示は、不当表示対策と比較にならないほど高い管理レベルを求められます。メニュー別に原材料規格書を集めて管理すること、そして最終メニューの規格書(配合表)を管理することは加工食品と同じなのですが、計画生産である加工食品と異なり、注文生産である外食ならではの管理(実態を把握すること)の難しさがあります。

とはいえ、外食は店舗の雰囲気そのものを楽しめるなど、娯楽の1つでもあると言えるでしょう。その店舗も規模も大小様々ですし、不当表示は起こさないことは大前提として、アレルゲン表示などそれ以上の利便性の提供については、できることから始めるといった考え方からでよいのでは、と思います。

参考:メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方について
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/140328premiums_5.pdf


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川合 裕之

川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2023年12月『食品と開発』(健康メディア.com)「海外の栄養プロファイリングシステムと栄養表示制度」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

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