新しい食品表示基準、施行から半年が経ちました

By | 2015年10月1日

2015年4月1日に新しい食品表示基準が施行されてから、ちょうど半年が経ちました。今回のコラムは、業務を通じて感じたこの半年間の印象について書いてみたいと思います。

新基準への切り替えの時期


この半年の間に、新基準での表示にさっそく切り替えるケースは想定より多くあったと思います。その多くは、自社で製造工場をもち、なおかつ栄養成分表示をされてきた方が中心です。取り扱う食品の種類がある程度限られており、改版計画をコントロールしやすいことも、切り替え時期の早さに関係があるのではと思います。栄養成分表示は、これまで表示がなかった場合は準備に時間がかかるため、1つのハードルになっていると感じます。

次いで、取り扱う食品の種類が多い場合ですが、やはり情報管理の問題で社内での表示確認マニュアル等の改版が必要となるなど、半年間はその整備にかけているといったケースもよく見られます。また同一商品を複数の製造工場で製造されている場合は、来年4月以降に新しい製造所固有記号を申請し、その後の夏?秋口から切り替え開始、という計画を予定されているケースも多いと思います。

そして、5年間の猶予期間のどこで切り替えるか、現時点で計画が立てられていないケースもあります。ひとつの原因は先と同じく製造所固有記号ですが、事情は異なり、新基準のもとでは製造所固有記号を使用できなくなる場合などがそうです。また、新基準のもとでは「糖類無添加」等の強調表示や、栄養機能表示ができなくなる、といった基準変更の影響を受ける商品についても同様に、切り替え時期未定のケースが多いと感じます。

添加物やアレルギーの表示方法


新基準では、添加物は事項欄を設ける方式と、原材料名欄の中で区分する方式と大きく2種類の表示方法が認められるようになりましたが、いろいろな商品を見ていると多いのは後者の方式(特に「/」等記号での区分)です。これは、文字数を減らせるメリットもあるほか、「添加物」という文字が与えるマイナスイメージを心配する事業者と、また添加物そのものに対してよい印象をもっていない消費者と、双方の考え方も背景にあるからでは、と思います。後者の方法でも、記号以降は添加物であることが一目でわかりますので、添加物不使用を過度に強調するなどして、本来必要な添加物まで使用せず健康被害を拡大してしまうことにならないよう、事業者側は慎重に考える必要があると思います。

アレルギーの表示方法については、一括表示の方式では繰り返しの省略ができなくなったことから、原材料数の少ない食品を中心に、以前よりも個別表示の方式が増えているように感じています。ただ、原材料数の多い食品でよく使用される一括表示をみてみると、繰り返しの省略ができなくなったことで、かえって一覧性が高まって見えることがよくあります。原則は個別表示とのことなのですが、商品によってどちらの方式がより分かりやすいかを考えることも大切なのではないかと思います。

今後について


この半年間でいくつか講演などで話す機会がありましたが、話題に上りやすいテーマは「製造所固有記号」と「機能性表示」ではないかと思います。食品表示の実務担当者よりは、商品開発や事業計画に携わる人にとって、大きな影響があると感じています。どちらも不明確な段階にあるといった共通点がありますが、今後の事業者、消費者の反応次第で、よい結果になっていくことができれば、と思います。


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川合 裕之

川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2023年12月『食品と開発』(健康メディア.com)「海外の栄養プロファイリングシステムと栄養表示制度」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
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