新しい食品表示制度に向けての準備について

By | 2014年6月3日

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2014年5月30日現在、消費者委員会食品表示部会と消費者庁では、食品表示の制度に関する調査会、検討会を重ねているところです。

消費者委員会での調査会では「食品表示基準(加工食品、生鮮食品)」「栄養成分表示」について議論されており、消費者庁での検討会では「機能性表示」について議論されています。前者である調査会は食品表示現行制度の見直し議論であり、後者の機能性表示制度については新規構築の議論となっていますが、どちらも今後の食品事業者における食品表示の実務フローに与える影響がありますので、まとめてみます。

規格書の管理運用に影響のあるもの


以下は、原材料配合率や添加物使用基準の確認フローなど、食品表示の実務上で要になる「規格書(原材料配合、添加物用途、アレルギー情報、遺伝子組み換え食品について等がまとめられた書類)」に与える影響の度合いについてです。

特に食品表示基準(加工食品、生鮮食品)は、用語の整理や個別規則の統合方法に関する議論だけでなく、アレルギー情報の表示方法など各論にまで及んでいることに注意が必要です。食品表示を組み立てるうえでの重要書類である規格書の管理運用に変更が必要になる可能性について、とりわけ「記載方法を変える必要性」「規格書の仕様を変える必要性」と「規格書を再回収する必要性」について、これらを事前に把握しておくことは今後のスムーズな業務のためにも大切なことであると思います。

記載方法の変更が想定されるもの


記載方法の変更とは、書類の中の情報を一部修正することを指しています。新しい制度によっては、食品表示になる前の規格書管理の段階から修正対応が必要になる可能性を想定しておくことは、食品表示のミスを回避するためにも大切なことだと思います。

・複合原材料を個々に分割して表記する記載方法の検討 (第4回資料:「加工食品における表示基準の統合について(各論)」より)
・特定原材料または代替表記を含まない特定加工食品、卵黄卵白の代替表記の廃止を検討 (第5回資料:「食品表示基準におけるアレルゲンを含む食品の表示について」より)

詳細は先の調査会資料を参照していただきたいのですが、1点目の「複合原材料の分割表記」を選択する際は、規格書内の原材料配合情報への記載方法まで変更する可能性もあるでしょう。また「代替表記を含まない特定加工食品の廃止」は、規格書内のアレルギー物質情報欄への記載の徹底につながると想定されます(原材料欄に「マヨネーズ」と記載されていても、アレルギー物質欄に「卵」の記載がなければ食品表示ミスを生む可能性があります)。

また調査会では「用語の整理(例:「油脂」「食肉」等)」もされていますので、自社製品に関係する用語が議論にあがっていないか、確認しておかれるとよいと思います。

規格書の仕様変更が想定されるもの


仕様変更とは、書類の中の記入項目が変わるなどのことを指しています。昨年の「ごま」「カシューナッツ」の追加は1つの例ですが、これは従来からある「アレルギー物質」の管理項目の行列を追加するといった仕様変更が必要になるタイプです。同じようなものとしては、栄養表示の対象栄養成分が拡大することなどが該当するでしょう。

・栄養成分表示の推奨項目としての「飽和脂肪酸、食物繊維」の追加(資料:栄養表示に関する調査会中間報告)

こちらも行や列を追加する対応となるかと思います。現段階での調査会での議論を見る限り、そのほかに「糖類、トランス脂肪酸、コレステロール」等も記載場所の確保がされた規格書仕様への変更が求められる可能性がありますので、栄養成分の項目はできるだけ余裕をもっておかれるとよいと思います。また行や列の追加といった仕様変更ではなく、管理項目そのものの新規設置を検討する可能性がある議論もあります。

・無添加強調表示の規定の新設(第4回資料:「栄養強調表示等について」より)
・安全性確保を目的とした製品分析の結果等の情報開示(機能性食品)(第3回:「食品の新たな機能性表示制度における安全性の確保について」より)
・最終製品を用いたヒト試験による実証、適切な研究レビューによる実証の情報開示(機能性食品)(第6回:「食品の新たな機能性表示制度における安全性の確保について」より)

規格書の再回収が想定されるもの


最後に、レシピ自体が変更になるなどの影響から、規格書そのものを仕入れ業者から再度回収する可能性がある議論についてです。

・原則として製造所の所在地及び製造者氏名の表示(製造所固有記号の例外化)の検討(第5回資料:「食品表示基準における製造所固有記号制度について」より)

見直し案では、「原則、2以上の製造所において同一商品を製造・販売する場合のみ固有記号の利用を認める」「新固有記号データーベースを構築し、消費者からの検索が可能」といった議論が進められています。これは、製造所そのものが変わる可能性も含んでいますので、まずは「販売者+製造所固有記号」を使用されている製品のうち、製造所が1箇所のみである製品を特定しておく準備が必要になると思われます。

このように現在の調査会、検討会での議論の途中でありますが、対応には時間のかかるものも多くあります。原材料情報などの規格書仕様、管理フロー、品質管理ポリシーなどは事業者それぞれにあると思いますので、まずはそうした視点からこれら新制度の議論について確認されてみるとよいと思います。


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川合 裕之

川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2023年12月『食品と開発』(健康メディア.com)「海外の栄養プロファイリングシステムと栄養表示制度」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
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