新しい食品表示基準の動向について(1)

By | 2014年4月9日

平成25年6月に「食品表示法」が公布され、昨年11月から「食品表示基準」の内容について検討が行われています。その中間報告が3月28日にされましたので、一部動向をご紹介したいと思います。

1 表示責任を有する者について


現行、加工食品については、JAS法では、商品内容を把握しているとして、「表示内容に責任を有する者」の住所と氏名、食品衛生法では、食品衛生上の問題が発生した際に迅速に対応するため、衛生上のリスクが生じる製造や加工を行なう者の氏名と住所を記載していました。

食品表示基準においても、その必要性に変わりはなく、「表示内容に責任を有する者」の氏名及び住所を記載することとしています。
しかしながら、商品の様々な流通実態(NB商品など)に対応することと、表示の内容に責任を持つものを明らかにするため、今後、流通形態によっては、製造業者や販売業者とは限らず、「当該食品の内容を最も把握しているもの」を表示責任者として「製造者」「販売者」「加工者」「輸入者」として記載することになるようです。

よって、販売者が表示責任者となった場合、製造者は商品の表示は行ないますが、食品の内容を最も把握するものではないので、「販売者」と記載します。そして、実際に製造した場所を「製造所」として記載が必要となります。

「製造者」「加工者」「輸入者」「製造所」「加工所」「輸入所の営業所在地」等の用語について整理されていますが、「製造」「加工」について改めて定義づけされる見通しです。その一方で、製造所固有記号の記載で製造所の所在地などを表示に代えることができる制度については表示可能面積の制約等もありますが、更に審議される見通しです。

2 食品表示基準における加工食品の表示方法等の作成方針について


現行、加工食品は「名称、原材料名・添加物・アレルギー、内容量、消費期限又は賞味期限、保存方法、原産国名(輸入品)、製造者、原料原産地名、遺伝子組換え食品」を記載。さらに個別の品質表示基準で義務表示事項となっているものを記載してきました。

食品表示基準でも、ほぼ変わりはなく、「名称、アレルゲン、保存の方法、消費期限又は賞味期限、原材料名、添加物、栄養成分の量及び熱量、原産国名(輸入品)、内容量、食品関連事業者の氏名又は名称及び住所、原料原産地名、遺伝子組換え食品等」を記載します。栄養成分の量及び熱量の記載が増え、前述で記載した食品関連事業者の記載が変更となる見通しですが、記載項目はほとんど変わりません。

個別の品質表示基準での義務表示事項については、消費者の選択の際に有用な表示であることから、そのまま採用となります。

しかしながら、名称の定義は、現状と実態があっていないものもあるため、一部修正、削除が行なわれる予定です。また、表示禁止事項も基準を検索しやすくするため、改めて、品目ごと、もしくは表示事項ごとに整理され、一覧化される見通しです。

3 食品表示基準における販売形態ごとの適用範囲について


現行、「JAS法」では容器包装の有無や製造・生産場所と販売場所の違いから、「食品衛生法」では、一部では容器包装の有無から表示の必要性が決められていました。食品表示基準では、販売形態によって、適用範囲が決められる模様ですが、今までの「JAS法」、「食品衛生法」両方の法律を守らなければならなかったことが合わせられて、ほぼ現行と変わりはないように思われます。

更に今年の夏までにこちらについても検討が行なわれます。
・レイアウト、文字の大きさの検討
・アレルギー表示(代替表記等の見直し、表示方法(個別表示、一括表示など) の整理)
・加工食品関係の用語の統一

総括として、思っていたほどの変更はなく、よりわかりやすいものになっていくのだろうと感じています。
しかしながら、定義が少しずつ変わっている部分もあるので、一つずつ変更ポイントをおさえて従事していく必要があると、まだ案の段階ですが実感しています。


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川合 裕之

川合 裕之

代表取締役社長株式会社ラベルバンク
食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2023年12月『食品と開発』(健康メディア.com)「海外の栄養プロファイリングシステムと栄養表示制度」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

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【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

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