今回のニュースレターでは、輸出食品における、主に添加物および食品表示等の各国基準調査と実務上のポイントについてお伝えします。(食品安全シンポジウム(2023年3月9日開催)講演内容をもとに一部編集したものです)
各国の基準調査の手順
調査の際は、まずは体系的な概要から把握します。自力で探す、ツールを使う、外部に依頼する、等の方法がありますが、初めての方には日本語で整理されている「各国の食品・添加物等の規格基準(農水省)」が分かりやすいでしょう。
以下、シンガポールを例に参照リンクを用意してみます。まずは「法的枠組」を確認しましょう。基準の概要は、主に以下の視点で確認します。なお、規則は1つに集約されているとは限らないので、関連する規則はないかを確認します。
a. 食品規格(定義や要件)を定めている規則は何か (PartⅣ)
b. 添加物の使用基準を定めている規則は何か (PartⅢ 15~28)
c. 表示基準を定めている規則は何か (PartⅢ 5~14)
各規則の詳細を探していくと、法令、基準、通知等の様々な種類の文書が見つかります。まず「事業者向けガイド」を探し、その参照情報から、根拠となる規則を確認するとよいでしょう。なお英語圏以外の国の場合、英語版はあくまで概要である場合が多いため、その後に必ず現地語版を確認することが大切といえます。(PR:英語版の調査に慣れてきたら、gComply(各国基準検索システム)などのツール活用が便利です。)
周辺基準との関連性を把握する
添加物使用基準の調査では、「日本では添加物に該当するが対象国では添加物に該当しない」もしくは「日本では添加物に該当しないが対象国では添加物に該当する」(例:韓国、EUにおけるMaltitol、Erythritol等)といった事例も多々あります。また、加工助剤などの定義自体は同様であっても、使用できる添加物に制限がある場合(例:台湾)もあります。その他、添加物使用基準に記載されているものであっても、用途により別の基準が適用される場合(例:中国の添加物、栄養強化剤)もあります。
特に「食品分類」によって添加物使用基準、表示基準は変わることから、これらの関連に注意しながら確認します。例えば使用できる添加物の用途や量などの規制は、「添加物使用基準」という規則にすべて掲載されていればよいのですが、対象国によっては食品規格や表示基準など周辺の規則にも記載されている場合(例:カナダの強化小麦粉、米国カリフォリニア州のProp65)もあるためです。
基準調査にあたっては、特に表形式になっている文書(添加物使用基準等)を発見した場合、その他の基準の存在にも注意を払うことが大切といえます。なお、表示に関する規則にも届出・許可制度や広告規制などの調査が必要な場合もありますし、表示以外では安全性規制や容器包装(食品接触材料)など多岐にわたる確認が必要です。
実務上の課題
さらに、これら確認すべき規則や文書を特定したあとであっても、 「添加物に該当しない原材料は情報が少なく判断が難しい」「用語の基準がないものは、翻訳が適切であるかを確認しにくい」のほか、「使用基準の確認に必要な情報が揃わない場合がある」「表示に必要な情報を事前に定義するのが難しい」など実務においては様々な課題があります。
対象国数と食品数が増えると、必要な情報を事前に定義することが難しくなります。すべての情報を収集するか、必要な情報に絞り込んで収集するか等、自社の状況に適した「ちょうどよいバランス」の模索が課題といえるでしょう。
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【海外輸出】原材料調査&食品表示調査:配合表、原材料規格書をもとに、原材料及び添加物の使用基準との適合性を検証します。また配合表、製品規格書等をもとに、原材料名や栄養成分等の食品表示案との適合性を検証します。輸出対象国の基準情報整理と確認業務の構築などにご利用いただいております。