Author Archives: 川合 裕之

川合 裕之

About 川合 裕之

食品表示検査業をしています。国内と海外向けに、食品表示検査と原材料調査サービスを提供している経験をもとに、食品表示実務に関する講演をしています。

■職歴・経歴
1974年 岡山県生まれ
食品メーカー勤務後、2003年に食品安全研究所(現株式会社ラベルバンク)を設立。
「分かりやすい食品表示」をテーマとし、「食品表示検査・原材料調査」などの品質情報管理サービスを国内から海外まで提供しています。また、定期的に講演活動も行っています。

■主な著作物・寄稿ほか
【共著】
『新訂2版 基礎からわかる食品表示の法律・実務ガイドブック』 (第一法規株式会社, 2023)

【寄稿】
・2023年12月『食品と開発』(健康メディア.com)「海外の栄養プロファイリングシステムと栄養表示制度」
・2021年10月『Wellness Monthly Report』(Wellness Daily News)40号
「食品表示関連規則の改正状況 今後の『食品表示』実務上のポイント」
・2020年2月『月刊 HACCP』(株式会社鶏卵肉情報センター)「アレルゲン表示の現状と留意点」
・2017年~2018年連載 『食品と開発』(UBMジャパン)「表示ミスを防ぐための食品表示実務の大切なポイント~」

>> 寄稿の詳細はこちら

【講義】
・2009~2014年 東京農業大学生物産業学部 特別講師

■最近の講演・セミナー実績
・2023年12月21日 輸出食品における各国基準(添加物および食品表示等)調査と実務上のポイント
 一般財団法人食品産業センター様主催。
・2023年11月9日 食品表示基準と実務上の大切なポイント~保健事項、衛生事項を中心に~
 千代田保健所様主催。
・2023年11月8日 添加物の不使用表示について
 株式会社インフォマート様主催。
・2023年10月12日~13日 海外輸出向け食品の表示(添加物、栄養成分等)について
 公益社団法人日本食品衛生学会様主催。
・2023年6月15日 添加物の不使用表示について
 株式会社インフォマート様主催。

>> 講演・セミナーの詳細はこちら

添加物および食品表示などの輸出食品における各国基準調査と実務上のポイント

 
 今回のニュースレターでは、輸出食品における、主に添加物および食品表示等の各国基準調査と実務上のポイントについてお伝えします。(食品安全シンポジウム(2023年3月9日開催)講演内容をもとに一部編集したものです)

各国の基準調査の手順


 調査の際は、まずは体系的な概要から把握します。自力で探す、ツールを使う、外部に依頼する、等の方法がありますが、初めての方には日本語で整理されている「各国の食品・添加物等の規格基準(農水省)」が分かりやすいでしょう。
 以下、シンガポールを例に参照リンクを用意してみます。まずは「法的枠組」を確認しましょう。基準の概要は、主に以下の視点で確認します。なお、規則は1つに集約されているとは限らないので、関連する規則はないかを確認します。

a. 食品規格(定義や要件)を定めている規則は何か (PartⅣ
b. 添加物の使用基準を定めている規則は何か (PartⅢ 15~28
c. 表示基準を定めている規則は何か (PartⅢ 5~14

  各規則の詳細を探していくと、法令、基準、通知等の様々な種類の文書が見つかります。まず「事業者向けガイド」を探し、その参照情報から、根拠となる規則を確認するとよいでしょう。なお英語圏以外の国の場合、英語版はあくまで概要である場合が多いため、その後に必ず現地語版を確認することが大切といえます。(PR:英語版の調査に慣れてきたら、gComply(各国基準検索システム)などのツール活用が便利です。)

周辺基準との関連性を把握する


 添加物使用基準の調査では、「日本では添加物に該当するが対象国では添加物に該当しない」もしくは「日本では添加物に該当しないが対象国では添加物に該当する」(例:韓国EUにおけるMaltitol、Erythritol等)といった事例も多々あります。また、加工助剤などの定義自体は同様であっても、使用できる添加物に制限がある場合(例:台湾)もあります。その他、添加物使用基準に記載されているものであっても、用途により別の基準が適用される場合(例:中国の添加物栄養強化剤)もあります。
 特に「食品分類」によって添加物使用基準、表示基準は変わることから、これらの関連に注意しながら確認します。例えば使用できる添加物の用途や量などの規制は、「添加物使用基準」という規則にすべて掲載されていればよいのですが、対象国によっては食品規格や表示基準など周辺の規則にも記載されている場合(例:カナダの強化小麦粉、米国カリフォリニア州のProp65)もあるためです。
 基準調査にあたっては、特に表形式になっている文書(添加物使用基準等)を発見した場合、その他の基準の存在にも注意を払うことが大切といえます。なお、表示に関する規則にも届出・許可制度や広告規制などの調査が必要な場合もありますし、表示以外では安全性規制や容器包装(食品接触材料)など多岐にわたる確認が必要です。

実務上の課題


 さらに、これら確認すべき規則や文書を特定したあとであっても、 「添加物に該当しない原材料は情報が少なく判断が難しい」「用語の基準がないものは、翻訳が適切であるかを確認しにくい」のほか、「使用基準の確認に必要な情報が揃わない場合がある」「表示に必要な情報を事前に定義するのが難しい」など実務においては様々な課題があります。
 対象国数と食品数が増えると、必要な情報を事前に定義することが難しくなります。すべての情報を収集するか、必要な情報に絞り込んで収集するか等、自社の状況に適した「ちょうどよいバランス」の模索が課題といえるでしょう。


メールマガジン配信登録

こちらのブログに毎月投稿している食品表示に関するニュースやセミナー情報を、ご登録されたメールアドレス宛に送付させていただきます。

関連サービス

【海外輸出】原材料調査&食品表示調査:配合表、原材料規格書をもとに、原材料及び添加物の使用基準との適合性を検証します。また配合表、製品規格書等をもとに、原材料名や栄養成分等の食品表示案との適合性を検証します。輸出対象国の基準情報整理と確認業務の構築などにご利用いただいております。

「食品表示基準」「食品表示基準について」「食品表示基準Q&A」が改正されました~くるみのアレルゲン表示義務化、その他~


 2023年3月9日、消費者庁は「食品表示基準」「食品表示基準について」「食品表示基準Q&A」の改正を発表しました。主な改正内容としては、くるみのアレルゲン表示義務化、特定遺伝子組換え農産物の対象EPA・DHA産生なたねの追加、が挙げられます。今回は、くるみのアレルゲン表示義務化について、詳細を以下に整理してみたいと思います。
(※特定遺伝子組換え農産物の対象EPA・DHA産生なたねの追加については、過去のコラムを参照ください。)

「食品表示基準」の主な改正点


 別表第十四にくるみが追加され、特定原材料が7品目から8品目へと変更されました。

改正前(旧) 改正後(新)
えび
かに
小麦
そば


落花生
えび
かに
くるみ
小麦
そば


落花生

「食品表示基準について」の主な改正点


 “特定原材料に準ずるもの“からくるみが削除され、21品目から20品目へと変更されました。

改正前(旧) 改正後(新)
アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン

別表1(特定原材料等の範囲)は、変更はありません。ただしQ&A(後述)に「範囲」が追加されています。

特定原材料等 分類番号(1) 分類番号(2) 大分類 中分類 小分類
くるみ 69 8591 殻果類 その他の殻果類 くるみ

別表2(特定原材料等由来の添加物についての表示例)への、表示例の追加はありません(改正前と同じ)。

特定原材料の名称 区分 添加物名 特定原材料の表示 備考
くるみ

別表3(特定原材料等の代替表記等方法リスト)への、表記例の追加はありません(改正前と同じ)。

特定原材料(食品表示基準で定められた品目) 代替表記 拡大表記(表記例)
表記方法や言葉が違うが、特定原材料と同一であるということが理解できる表記 特定原材料名又は代替表記を含んでいるため、これらを用いた食品であると理解できる表記例
くるみ クルミ くるみパン くるみケーキ

 なお「2.2定性検査法」に、リアルタイムPCR法とPCR-核酸クロマト法に関する追加がなされています。

改正前(旧) 改正後(新)
定性検査法には、ウエスタンブロット法やPCR法がある。一般に、卵、乳については、ウエスタンブロット法が用いられる。一方、小麦、そば、えび、かに、落花生については、一般にPCR法が用いられる。
なお、ウエスタンブロット法、PCR法以外の定性検査法を用いることは妨げないが、この場合には、これらの検査法と同等あるいは同等以上の性能を持っていること。
(略)
定性検査法には、ウエスタンブロット法、PCR法、リアルタイムPCR法やPCR-核酸クロマト法がある。一般的に、卵、乳については、ウエスタンブロット法が用いられる。一方、えび、かにについては一般的にPCR法、小麦、そば、落花生については一般的にPCR法又はリアルタイム PCR法、くるみについては一般的にリアルタイムPCR 法又はPCR-核酸クロマト法が用いられる。
なお、ウエスタンブロット法、PCR法、リアルタイムPCR 法、PCR-核酸クロマト法以外の定性検査法を用いることは妨げないが、この場合には、これらの検査法と同等又は同等以上の性能を持っていること。
(略)

 この追加に関連して、「定性検査法」の詳細の追加および「判断樹について」の変更がなされていますので、検査方法について確認をされたい場合は一度目を通しておかれるとよいでしょう。

「食品表示基準Q&A」の主な改正点


 くるみの範囲に関するQ&A(D-3)が追加されました。

(D-3)特定原材料の「くるみ」の範囲を教えてください。
(答)
「くるみ」とは、日本標準商品分類番号 698591 のくるみであり、主に流通している海外産(チャンドラー種やハワード種など)に加えて、国産(オニグルミ、カシグルミやヒメグルミなど)も表示の対象としています。また、くるみオイル、くるみバター等もアレルゲンとなるので、注意が必要です。

 なお本稿には含めておりませんが、「特定遺伝子組換え農産物の対象EPA・DHA産生なたねの追加(別表第十八への追加)」に関連して、Q&Aも一部追加および変更がなされています。またその他の改正点として、「セットで販売され、通常一緒に食される食品」の栄養成分表示の方法について、Q&Aの追加がなされていますので、関連する食品を取り扱いされる方はご確認ください。

経過措置期間と今後について


 以下のとおり、令和7年3月末までとされています。

この府令の施行の日から令和七年三月三十一日までに製造され、加工され、又は輸入される加工食品(業務用加工食品を除く。)及び同日までに販売される業務用加工食品の表示については、この府令による改正後の食品表示基準別表第十四の規定にかかわらず、なお従前の例によることができる。

 くるみのアレルゲン表示義務化は、平成30年度食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書において、くるみを筆頭に木の実類の即時型アレルギーの健康被害が大幅に増加していると報告されたこと等を受け、改正に至った経緯があります。

 また、その後の令和3年度の調査においてもさらに症例数が増えている実態がありますので、経過措置期間であっても、消費者からの問い合わせには対応できるよう、原材料規格書などの情報管理について改めて確認することが大切だといえるでしょう。

参照:
食品表示法等(法令及び一元化情報)
新旧対照条文 (食品表示基準 令和5年3月9日内閣府令第15号)
新旧対照表 (食品表示基準について 第28次改正)
新旧対照表 (食品表示基準Q&A 第15次改正)


メールマガジン配信登録

こちらのブログに毎月投稿している食品表示に関するニュースやセミナー情報を、ご登録されたメールアドレス宛に送付させていただきます。

関連サービス

【国産食品(国内流通)】食品表示調査:配合表、製品規格書等をもとに、原材料名や栄養成分等の食品表示案との適合性を検証します。各方面からの原材料詳細や表示内容の確認などの対応業務をサポートします。新商品や改版の確認業務、膨大な規格書情報の確認業務にご利用いただいております。

【輸入食品】原材料調査&食品表示調査:配合表、原材料規格書をもとに、原材料及び添加物の使用基準との適合性を検証します。また配合表、製品規格書等をもとに、原材料名や栄養成分等の食品表示案との適合性を検証します。様々な国から輸入される場合の確認業務効率化などにご利用いただいております。

景品表示法検討会報告書が公表されました


 2023年1月13日、消費者庁は「景品表示法検討会報告書」を公表しました。2022年3月より10回の検討を経て報告書としてとりまとめたものですが、「事業者が是正の計画を申請できる確約手続の導入」「繰り返しの違反行為に対する課徴金の割増」など、今後の検討課題などが整理されています。今回は、これらの検討の背景や課題の概要などについてお伝えしたいと思います。

検討の背景


 2022年3月の検討会開催趣旨は以下のとおりです。

一般消費者が商品やサービスを自主的かつ合理的に選択できる環境を確保することを目的とする景品表示法については、平成 26 年に法改正が行われたところ、改正法の施行から一定の期間が経過したこと及びデジタル化の進展等の景品表示法を取り巻く社会環境の変化等を踏まえ、消費者利益の確保を図る観点から必要な措置について検討するため、景品表示法検討会を開催する。

 社会環境の変化としては、「デジタル化の進展により、電子商取引が盛んとなった」「その広告表示もインターネットによるものが主流になった」「国際的な取引も盛んに行われている」などが挙げられています。

 また最近の景品表示法の運用では、「課徴金制度が導入されたことにより事件処理に要する期間が長期化」しており、「端緒件数が増加傾向」にあるが「措置件数を増加させることができていない」状況であるとされています。その一方で「繰り返し違反行為を行う事業者」等の存在を、検討の背景として挙げています。なお、悪質な違反行為の例として以下の事例等が掲載されています。

<事例1:優良誤認>
当該事業者は、サプリメントを一般消費者に販売するに当たり、SNS内のアカウントの投稿において、あたかも、本件サプリメントを摂取することで、一定の効果が得られるかのように示す表示をしていたが、調査をしたところ、当該事業者は当該表示の裏付けとなる根拠を示す資料を全く有していなかった。

検討すべき課題


 報告書では検討すべき課題を早期に対応すべきものと中長期的に対応すべきものとに分け、以下のようにとりまとめています。

1 早期に対応すべき課題
(1) 事業者の自主的な取組の促進(確約手続の導入)
(2) 課徴金制度における返金措置の促進(電子マネー等の活用など)
(3) 違反行為に対する抑止力の強化
(課徴金の割増算定率の適用、課徴金の算定基礎となる売上額の推計等)
(4) 刑事罰の活用
(5) 国際化への対応(海外等に所在する事業者への執行の在り方など)
(6) 買取りサービスに係る考え方の整理
(7) 適格消費者団体との連携
(8) 法執行における他の制度との連携
(9) 都道府県との連携
(10) 不実証広告に関する民事訴訟における立証責任等

2 中長期的に検討すべき課題
(1) 課徴金の対象の拡大
(2) デジタルの表示の保存義務
(3) 供給要件(「自己の供給する商品又は役務」)を満たさない者への規制対象の拡大
(4) ダークパターン

 上記のうち、事業者側が注目すべきポイントとして「事業者が是正の計画を申請できる確約手続の導入」「繰り返しの違反行為に対する課徴金の割増」の2点を取り上げてみたいと思います。報告書でのとりまとめは、以下のとおりです。

(1) 事業者の自主的な取組の促進(確約手続の導入)

“現行景品表示法においては、(中略)意図せずに結果的に不当表示を行った事業者であり、表示の改善等自主的な取組を積極的に行おうとする場合であっても、違反行為が認められれば、措置命令等の対象となる。”

“これまで、不当表示事案に対する法的措置としては、措置命令又は課徴金納付命令によって対処されてきたが、例えば、自主的に十分な内容の取組を確実に実施できると見込まれる事業者については、これらの命令を行うよりも、事業者の自主的な取組を促した方がより早期に是正が図られると考えられる。”

 なお、確約が履行されなかった場合の対応等については、「ガイドライン等で明確化を図るべき」としています。

(3) 違反行為に対する抑止力の強化(課徴金の割増算定率の適用、課徴金の算定基礎となる売上額の推計等)

”景品表示法違反行為を行った事業者の中には、一度措置命令又は課徴金納付命令を受けたにもかかわらず、繰り返し違反行為を行う事業者がいる。このような事業者に対しては現行の制度では十分な抑止力が働いているとはいい難いことから、そのような事案に即した抑止力を強化する必要がある。”

”景品表示法においても、抑止力を高めるため、(中略)繰り返し違反行為を行う事業者に対しては割り増した算定率を適用すべきである。”

 また「違反事業者が公正取引委員会の調査において資料を提出しないなど」による課徴金の算定の課題については、「課徴金対象行為に係る売上額等を合理的な方法により推計できるとする規定を整備すべき」としています。

今後について


 報告書の提言を受け、今後は消費者庁が景品表示法の改正案の検討作業を進めることになります。食品表示に関する業務を担当される方のうち、とりわけ健康食品など健康や機能性についての表示のある商品をお取り扱いの方は、報告書の内容を一度読んでおかれるとよいと思います。また広告表示の確認業務まで担当される方は、昨年12月28日に公表された「ステルスマーケティングに関する検討会報告書」もあわせて読んでおかれるとよいでしょう。

参照:
景品表示法検討会(消費者庁)


メールマガジン配信登録

こちらのブログに毎月投稿している食品表示に関するニュースやセミナー情報を、ご登録されたメールアドレス宛に送付させていただきます。

関連サービス

【国産食品(国内流通)】食品表示調査:配合表、製品規格書等をもとに、原材料名や栄養成分等の食品表示案との適合性を検証します。各方面からの原材料詳細や表示内容の確認などの対応業務をサポートします。新商品や改版の確認業務、膨大な規格書情報の確認業務にご利用いただいております。

くるみ義務化の答申、経過措置期間は令和7年3月31日まで~その他、今後の改正情報と経過措置期間まとめ~


 食品表示基準の一部改正(くるみの義務化等)について諮問されていた改正案に対し、2022年12月13日付で改正案のとおりとする答申がされました。答申書によると、くるみの義務化の経過措置期間は令和7年(2025年)3月31日とされています。一部改正は近く公布、施行される見込みですが、今回の改正を機に、今年を含む数年間の食品表示制度改正と経過措置期間について整理してみたいと思います。

各改正の経過措置期間について


 食品表示制度に関する主な改正と経過措置期間について、前後数年のものをまとめると以下のようになります。既に経過措置期間が終了しているもの、経過措置期間終了までわずかなものもありますので、あらためて確認していただければと思います。

主な改正 経過措置期間
新たな原料原産地表示 2022年3月末に経過措置期間終了(済)
添加物表示(人工・合成の削除) 2022年3月末に経過措置期間終了(済)
“遺伝子組換えでない”表示 2023年3月末に経過措置期間終了
添加物不使用表示ガイドライン 2024年3月末に経過措置期間終了
くるみのアレルゲン表示義務化 2025年3月末に経過措置期間終了

 なお、2022年12月13日付で答申された食品表示基準一部改正には、「特定遺伝子組換え農産物へのEPA・DHA産生なたねの追加」も含まれます。その他、2022年12月に「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項改定」がありました。

“遺伝子組換えでない”表示


 2019年4月に、主に以下の2点について改正されたものです。

  • “遺伝子組換えでない”表示が認められる条件を現行制度の「(大豆及びとうもろこしについて意図せざる混入率)5%以下」から「不検出」に厳格化する。
  • 5%以下の場合、分別生産流通管理が適切に行われている旨の表示を任意で行うことができる。

 最大5%混入しているにもかかわらず、“遺伝子組換えでない“表示を可能としていることは誤認を招く等の意見をもとに、誤認防止等の観点により改正された経緯があります。

 改正による主な注意点は、2023年4月1日以降、「遺伝子組換えでない」旨の表示は、適切に分別流通管理を行った上で、遺伝子組換え農産物の混入がないと認められる大豆・とうもろこし及びこれらを原材料とする加工食品に限り、表示することができるようになる点です。

 例えばこれまで「大豆(遺伝子組換えでない)」と表示していたところ、遺伝子組換え大豆が混入しないように、適切に分別生産流通管理が行われた大豆を原材料としている場合は、「大豆(分別生産流通管理済み)」や「大豆(遺伝子組換え混入防止管理済)」などの「分別生産流通管理が適切に行われている旨」の表示に変更しているケースがみられます。

添加物不使用表示ガイドライン


 2022年3月に、注意すべき食品添加物の不使用表示として10の類型が公表されたものです。

類型1:単なる「無添加」の表示
類型2:食品表示基準に規定されていない用語を使用した表示
類型3:食品添加物の使用が法令で認められていない食品への表示
類型4:同一機能・類似機能を持つ食品添加物を使用した食品への表示
類型5:同一機能・類似機能を持つ原材料を使用した食品への表示
類型6:健康、安全と関連付ける表示
類型7:健康、安全以外と関連付ける表示
類型8:食品添加物の使用が予期されていない食品への表示
類型9:加工助剤、キャリーオーバーとして使用されている(又は使用されていないことが確認できない)食品への表示
類型 10:過度に強調された表示

 現状の曖昧な食品表示基準Q&Aを基に「無添加」等の表示を事業者が任意で行っていることが、消費者意向調査において一部の消費者が「無添加」等の表示を理解していない結果が得られた理由の一つとも考えられる等の意見をもとに、ガイドラインの策定に至った経緯があります。

 ガイドラインによる主な注意点は、各類型の例に当てはまることだけではなく、商品の性質等などを基にケースバイケースで全体として、表示禁止事項に該当すると判断される場合がある点といえます。

 ガイドラインを補足する情報として、2022年6月に消費者庁より「啓発チラシ・ポスター」(途中修正あり)と「10類型イラスト」が公表されていますので、あわせて参考にされるとよいと思います。

くるみのアレルゲン表示義務化


 2022年12月13日付で答申された食品表示基準の一部改正により、別表第十四にくるみが追加されるものです。

別表第十四(改正前) 別表第十四(改正後)
えび
かに
小麦
そば


落花生
えび
かに
くるみ
小麦
そば


落花生

 平成30年度食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書において、くるみを筆頭に木の実類の即時型アレルギーの健康被害が大幅に増加していると報告されたこと等を受け、改正に至った経緯があります。

 なお、その後の令和3年度の調査においてもさらに症例数が増えている背景があります。

原因食物 区分 平成24年度 平成27年度 平成30年度 令和3年度
くるみ 即時型症例数 40 74 251 463
ショック症例数 4 7 42 58

 以上、現状でいくつかある食品表示制度改正とその経過措置期間について整理をしてみました。とりわけアレルゲンの“くるみ“については、上記のような背景があることから、これまでの義務表示7品目のみを表示している商品のうち、アレルゲンとして“くるみ”を含むものについては、できるだけ早く対応することが必要といえるでしょう。
 また今後、食品表示に関する新しい改正情報などがあれば、こちらで取り上げるようにしたいと思います。

参照:
答申書(食品表示基準の一部改正について)


メールマガジン配信登録

こちらのブログに毎月投稿している食品表示に関するニュースやセミナー情報を、ご登録されたメールアドレス宛に送付させていただきます。

関連サービス

【国産食品(国内流通)】食品表示調査:配合表、製品規格書等をもとに、原材料名や栄養成分等の食品表示案との適合性を検証します。各方面からの原材料詳細や表示内容の確認などの対応業務をサポートします。新商品や改版の確認業務、膨大な規格書情報の確認業務にご利用いただいております。

地理的表示保護制度の運用見直しについて


 2022年11月1日、農林水産省より「地理的表示保護制度の運用見直し」が公表されました。地理的表示(GI:Geographical Indication)保護制度とは、その地域ならではの自然的、人文的、社会的な要因・環境の中で育まれてきた品質、社会的評価等の特性を有する産品の名称を、地域の知的財産として保護する制度です。世界では既に100ヶ国以上で導入されており、日本では2015年から導入されました。

地理的表示とは


 市田柿を例にすると、「産品(生産地、特性)」と表示の関係は以下のようになります。

産品 地理的表示
生産地 特性
・下伊那郡高森町(旧市田村)が発祥の「市田柿」のみを使用
・昼夜の寒暖差が大きいため、高糖度の原料柿ができる
・晩秋から初冬にかけて川霧が発生し干柿の生産に絶好の温度と湿度が整う
・じっくりとした「干し上げ」、しっかりとした揉み込み
・「市田柿」は特別に糖度が高い
・もっちりとした食感
・きれいな飴色
・小ぶりで食べやすい
・表面を覆うキメ細かな白い粉化粧
市田柿

 地理的表示(GI)は、生産者団体が産品について登録を受け、構成員が使用する形式をとります。登録内容は明細書に記載され、構成員が行う生産が適合して行われるよう指導等が実施されます。また登録された地理的表示が不正使用された場合には、行政が取り締るのも特徴の1つです。

 例えばスペインのレストランにおいて、南米産牛肉のメニューに、「TROPICAL KOBE BEEF」と表示している例や、ドイツのスーパーにおいて、NZ産和牛に「Wagyu “Kobe-Style”」と表示している事例等を確認した場合、欧州との相互保護の枠組の下、EU当局等に適切な措置を執るよう要請し、当局からの指導の上、削除されます。

 これまで他産品よりも優位な品質、厳しい生産行程管理を重視する運用と、模倣品排除を通じた産品のブランド強化等に貢献してきた反面、こうした運用が徐々に厳格化していった結果、GI産品は他産品との品質差を証明し易く、地域でまとまり易い小規模・地場の伝統野菜等に偏った経緯があります。

運用見直しの概要について


 そこで2022年11月1日より、GI制度の運用を見直すことになりました。これまでの地域の伝統野菜だけでなく、加工品、海外志向の産品まで、多様な産品の登録につながるよう間口を広げ、輸出促進を更に後押しする狙いがあります。

 運用見直しの概要は以下のとおりです。

1 審査基準の見直し ・差別化された品質がなくとも、地域における自然的・人文的・社会的な要因・環境の中で育まれてきた品質、製法、評判、ものがたり等のその産品独自の多彩な特性を評価する審査を推進
・知名度なども考慮し、生産実績が25年に満たなくとも、登録の可否を弾力的に判断
2 登録前後における手続の見直し ・GI産品と信頼して購入した需要者の利益を毀損しない、GI真正品について、名称の統一が申請への合意形成の支障とならないよう、登録名称を分断する名称の継続使用を可能に(「霞ヶ関りんご」が登録された場合の「霞ヶ関○○りんご」)
・生産者の遵守事項の簡素化を推進。生産行程管理業務も、年1回の実績報告書を廃止し、最終製品ではなく、生産の手順・体制をチェックする方法へ
3 GIの市場における露出の拡大 ・GIマークを、GI産品の加工品に使用する場合のルールを明確化
・GIマークも効果的に活用し、外食、食品、観光などの他業種とのコラボ商品・コラボサービスの開発・提供を推進

 加工品が過半を占め、輸出も多い欧州のGI制度では、他産品との優劣ではなく、地域と結び付いたその産品独自の魅力や強みが評価されます。こうした海外の制度を参考に審査基準を見直しつつ、手続きの簡素化等を推進することにより制度利用の拡大を図る考えです。

食品表示と今後について


 今回の運用見直しは、食品表示実務そのものには大きな影響はありません。日本の登録GI(120産品)と、日本で保護される外国GI(109産品)に注意する点は、これまで同様です。
(※農林水産省「日本における海外のGI保護」→「指定産品一覧」より確認できます。例:Grana Padanoグラナ パダーノ(ナチュラルチーズ))
 一方で、日本から海外へ食品を輸出される方には、まずはGI制度自体について、改めて確認する機会にしていただければと思います。なおEUにおいても「持続可能性」をGI表示の要件とするなどの見直し案が検討されていますので、こうした現在の動向と合わせて確認されておかれるとよいと思います。

参照:
地理的表示保護制度の運用見直し(農林水産省)
指定産品一覧(日本における海外のGI保護)(農林水産省)
Commission strengthens geographical indications to preserve high quality and reinforce protection(EU)


メールマガジン配信登録

こちらのブログに毎月投稿している食品表示に関するニュースやセミナー情報を、ご登録されたメールアドレス宛に送付させていただきます。

関連サービス

【海外輸出】原材料調査&食品表示調査:配合表、原材料規格書をもとに、原材料及び添加物の使用基準との適合性を検証します。また配合表、製品規格書等をもとに、原材料名や栄養成分等の食品表示案との適合性を検証します。輸出対象国の基準情報整理と確認業務の構築などにご利用いただいております。

【輸入食品】原材料調査&食品表示調査:配合表、原材料規格書をもとに、原材料及び添加物の使用基準との適合性を検証します。また配合表、製品規格書等をもとに、原材料名や栄養成分等の食品表示案との適合性を検証します。様々な国から輸入される場合の確認業務効率化などにご利用いただいております。

食品表示基準の一部改正案に関する意見募集が始まりました~くるみの特定原材料追加と特定遺伝子組換え農産物へのEPA・DHA産生なたねの追加~

 2022年10月13日、消費者庁は「食品表示基準の一部改正案」に関する意見募集(パブリックコメント)の開始を公表しました。意見募集の受付締切は11月12日です。

改正の概要


 意見募集要領によると、改正案の概要は以下のとおりです。

  1. アレルギー原因物質を含む食品である「くるみ」については、現在、表示を推奨する品目としているが、即時型食物アレルギーによる健康被害に関する全国実態調査の結果等から表示が必要との方針を得たため、アレルギー表示の対象品目である特定原材料として「くるみ」を追加することとする。
  2. 今後、厚生労働省による安全性審査を経て、エイコサペンタエン酸(EPA)及びドコサヘキサエン酸(DHA)を産生させるために遺伝子組換えが行われたなたねに由来する食品が国内に流通することが見込まれることから、遺伝子組換え表示制度における特定遺伝子組換え農産物としての表示の対象に当該なたねを追加することとする。

アレルゲンの義務表示品目の改正


 アレルゲンの表示事項は、「特定原材料を原材料とする加工食品(当該加工食品を原材料とするものを含み、抗原性が認められないものを除く)及び特定原材料に由来する添加物(抗原性が認められないもの及び香料を除く)を含む食品」において必要となりますが、この特定原材料を定めている別表第十四が改正されます。(改正箇所は下線赤文字

別表第十四(改正前) 別表第十四(改正後)
えび
かに
小麦
そば


落花生
えび
かに
くるみ
小麦
そば


落花生

 くるみはこれまで「特定原材料に準ずるもの」として表示を推奨する品目とされていましたが、表示を義務とする品目に移行する形となります。

EPA・DHA産生なたねの追加について


 遺伝子組換え食品に関する事項は、「別表第十七(対象農産物と加工食品)及び別表第十八(対象形質と加工食品)」の対象において必要となりますが、そのうちの形質を定めている別表第十八が改正されます。(改正箇所は下線赤文字

別表第十八(改正前)

形質 加工食品 対象農産物
ステアリドン酸産生 1 大豆を主な原材料とするもの(脱脂されたことにより、上欄(左)に掲げる形質を有しなくなったものを除く。)
2 1に掲げるものを主な原材料とするもの
大豆
高リシン 1 とうもろこしを主な原材料とするもの(上欄(左)に掲げる形質を有しなくなったものを除く。)
2 1に掲げるものを主な原材料とするもの
とうもろこし

別表第十八(改正後)

形質 加工食品 対象農産物
ステアリドン酸産生 1 大豆を主な原材料とするもの(脱脂されたことにより、上欄(左)に掲げる形質を有しなくなったものを除く。)
2 1に掲げるものを主な原材料とするもの
大豆
高リシン 1 とうもろこしを主な原材料とするもの(上欄(左)に掲げる形質を有しなくなったものを除く。)
2 1に掲げるものを主な原材料とするもの
とうもろこし
エイコサペンタエン酸(EPA)産生 1 なたねを主な原材料とするもの(上欄(左)に掲げる形質を有しなくなったものを除く。)
2 1に掲げるものを主な原材料とするもの
なたね
ドコサヘキサエン酸(DHA)産生

 なたねは別表第十七に対象農産物として掲げられているものの、加工食品については設定がされていません。今回の改正により、「なたねを主な原材料とするもの(及び、これを主な原材料とするもの)」に該当するものについては、形質(EPA・DHA産生)の確認が必要になります。

今後について


 意見募集の改正案では、別表第十四(アレルゲン表示)に関する施行期日と経過措置期間は未定となっております。

(施行期日)
第一条 この府令は、公布の日から施行する。ただし、別表第十四の改正規定は、令和○年○月○日から施行する。
(経過措置)
第二条 前条ただし書に規定する改正規定の施行の日から令和○年○月○日までに製造され、加工され、又は輸入される加工食品(業務用加工食品を除く。)及び同日までに販売される業務用加工食品の表示については、当該改正規定による改正後の食品表示基準別表第十四の規定にかかわらず、なお従前の例によることができる。

 

2022年12月13日、改正案に対する答申が公表されました。経過措置期間は2025年3月31日までです。

(施行期日)第一条 この府令は、公布の日から施行する。
(経過措置)第二条 この府令の施行の日から令和七年三月三十一日までに製造され、加工され、又は輸入される加工食品(業務用加工食品を除く。)及び同日までに販売される業務用加工食品の表示については、この府令による改正後の食品表示基準別表第十四の規定にかかわらず、なお従前の例によることができる。

 現状でアレルゲン表示が7品目のみを対象としている場合は、新たに表示を追加するために原材料規格書の段階から確認が必要になると思います。とりわけ、輸入食品や輸入原材料を取り扱っている場合は、くるみが含まれるかどうかを慎重に確認する必要がある(多くの国では「ナッツ」と一括で管理しているため)といえます。

 くるみは、症例数の増加といった背景を受けての改正です。経過措置期間であっても、消費者からの問い合わせには対応できるよう、原材料規格書などの情報管理について改めて確認することが大切だといえるでしょう。


メールマガジン配信登録

こちらのブログに毎月投稿している食品表示に関するニュースやセミナー情報を、ご登録されたメールアドレス宛に送付させていただきます。

関連サービス

【国産食品(国内流通)】食品表示調査:配合表、製品規格書等をもとに、原材料名や栄養成分等の食品表示案との適合性を検証します。各方面からの原材料詳細や表示内容の確認などの対応業務をサポートします。新商品や改版の確認業務、膨大な規格書情報の確認業務にご利用いただいております。

【輸入食品】原材料調査&食品表示調査:配合表、原材料規格書をもとに、原材料及び添加物の使用基準との適合性を検証します。また配合表、製品規格書等をもとに、原材料名や栄養成分等の食品表示案との適合性を検証します。様々な国から輸入される場合の確認業務効率化などにご利用いただいております。

「ベジタリアン又はヴィーガンに適した加工食品」の日本農林規格が制定されました

【2022年11月10日:食品表示改正情報 ミニセミナー(Zoomウェビナー)開催のお知らせ】

2022年9月6日に公表された「ベジタリアン又はヴィーガンに適した加工食品」JAS規格をはじめ、「プラントベース食品(代替肉、代替乳等)」の表示とこれに関連する「クリーンラベル(天然、添加物不使用、遺伝子組換え不使用等)」について日本の関連基準を整理のうえ、海外各国の動向についてお伝えします。

 2022年9月6日、ベジタリアン又はヴィーガンに適した加工食品の日本農林規格(以下「JAS規格」)が制定されました。同日に農林水産省ホームページのJAS一覧に追加されていますので、以下に概要と表示上のポイントを整理してみたいと思います。

背景と概要


 2021年5月頃にJAS規格化に向けた検討(検討主体:認定特定非営利活動法人 日本ベジタリアン協会)を開始し、その後2022年6月のJAS規格案の意見募集を経て、現在の制定に至ります。ベジタリアン又はヴィーガンに適した加工食品の「規格」の制定に合わせて、「認証の技術的基準」「検査方法」が示されています。規格には、「卵及び乳製品を摂食するベジタリアンに適した加工食品」「卵を摂食するベジタリアンに適した加工食品」「乳製品を摂食するベジタリアンに適した加工食品」「ヴィーガンに適した加工食品」の4食品の要件が定義されています。

各食品の基準(箇条4)


 同規格より、各食品の定義を整理すると以下のようになります。

  卵及び乳製品を摂食するベジタリアンに適した加工食品 卵を摂食するベジタリアンに適した加工食品 乳製品を摂食するベジタリアンに適した加工食品 ヴィーガンに適した加工食品
4a)   ・動物由来の 1 次原料及び2 次原料(2 次原料における加工助剤については、動物の骨炭及び甲殻類から得られるキトサンに限る。)を用いてはならない。
・ただし、1 次原料及び 2 次原料に限らず、いかなる段階における原材料及び添加物について、動物由来であることが当該原材料及び添加物の名称等から容易に判断される場合にあっては、当該原材料及び添加物を用いてはならない。
動物由来のうち、用いることのできる原材料 動物の卵又はその加工食品

×

×

動物の乳又はその加工食品

×

×

蜂蜜又は蜜蜂製品(蜜ろう、プロポリス等)

×

ラノリンを含む羊毛脂

×

4b)

上記食品に関するいかなる動物試験も製造業者等によって実施されていてはならない。
※「〇」の箇所は、その成分又はその派生物を含む

原料受入及び保管、製造について(箇条5)


 同規格より、生産行程管理に関する基準を整理すると以下のようになります。

 

卵及び乳製品を摂食するベジタリアンに適した加工食品 卵を摂食するベジタリアンに適した加工食品 乳製品を摂食するベジタリアンに適した加工食品 ヴィーガンに適した加工食品
1次原料の受入れ及び保管 調達した1次原料の受入れ時に、各食品の4a)を満たしていることの根拠を入手し、4a)を満たしていない原材料及び添加物と混合しないよう区分して管理されなければならない。
製造 ・各食品に適さない原材料及び添加物の意図せざる混入を防止するため、適切な予防処置が講じられていなければならない。
・各食品に適さない原材料又はこれを使用した加工食品を揚げた油が使用されていてはならない。
・各食品に適した加工食品の製造ラインが、各食品に適さない加工食品の製造と共用である場合は、各食品に適した加工食品の製造開始前に十分な洗浄が行われていなければならない。これは、関連する機械、機器、用具及び原材料が接触するあらゆる表面にも適用される。

表示について(箇条6)


 同規格より、表示に関する基準を整理すると以下のようになります。

用語

“卵・乳製品摂食ベジタリアン”

“卵摂食ベジタリアン”

“乳製品摂食ベジタリアン”

“ヴィーガン”
“ベジタリアン”
表示事項 ・上記の用語を表示する場合は、箇条4(ベジタリアン又はヴィーガンに適した加工食品に関する基準)及び箇条5(ベジタリアン又はヴィーガンに適した加工食品の生産行程管理に関する基準)の該当する要求事項を満たさなければならない。
・各食品に適さない原材料及び添加物の意図せざる混入の可能性がある場合であっても、適切な予防処置が講じられた場合には、上記の用語を表示してよい。
・各食品に適さない原材料及び添加物の意図せざる混入の可能性に基づくアレルゲンの注意喚起を表示する場合であっても、上記の用語を表示してよい。
表示方法 上記の用語を表示する場合は、動物由来の類似の加工食品との区別を容易にするため、加工食品の商品名と同じ視野に入るように表示しなければならない。
表示の方式等 -(設定なし)
表示禁止事項 -(設定なし)
※これらに類似する意味の用語を含む

今後の国際的な動向にも注視


 なお、2021年3月にベジタリアン又はヴィーガンに適した食品の国際規格(ISO 23662:Definitions and technical criteria for foods and food ingredients suitable for vegetarians or vegans and for labelling and claims)が発行されており、今回のJAS規格制定の参考となっています。
 一方で「プラントベース」、「プラントベースドフード」などの用語については、パブリックコメントの結果において、「国内にも国際的にも定義が存在しておらず、今後の国際的な動向も注視し対応する」とされています。ベジタリアン又はヴィーガンに適した食品に関する用語はもとより、プラントベース(植物由来)など関連する用語の表示を検討する際にも、まずは今回のJAS規格から確認されるとよいでしょう。

現時点での参考情報として、「プラントベース食品等の表示に関するQ&A(消費者庁)」では、「本Q&Aでいう「プラントベース(植物由来)食品」とは、主に植物由来の原材料(畜産物や水産物を含まない。)で肉などの畜産物や魚などの水産物に似せて作った商品をいいます。動物由来の添加物が含まれている場合でも、主な原材料が植物由来である場合は、「プラントベース(植物由来)食品」に含めることとします。」とされています。

【2022年11月10日:食品表示改正情報 ミニセミナー(Zoomウェビナー)開催のお知らせ】

2022年9月6日に公表された「ベジタリアン又はヴィーガンに適した加工食品」JAS規格をはじめ、「プラントベース食品(代替肉、代替乳等)」の表示とこれに関連する「クリーンラベル(天然、添加物不使用、遺伝子組換え不使用等)」について日本の関連基準を整理のうえ、海外各国の動向についてお伝えします。


メールマガジン配信登録

こちらのブログに毎月投稿している食品表示に関するニュースやセミナー情報を、ご登録されたメールアドレス宛に送付させていただきます。

関連サービス

食品表示コンサルティング:原材料及び添加物の適合性検証、容器包装への食品表示案の適合性検証
配合表等の規格書をもとに、原材料及び添加物の国内または海外各国における使用基準との適合性を検証します。また原材料名やアレルゲン、栄養成分等の表示案と表示基準との適合性を検証します。

「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」の一部改定(案)の意見募集が開始されました。


 2022年8月9日、消費者庁は「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」の一部改定(案)を作成し公表しました。また同日より9月7日まで、パブリックコメントにて意見を募集しています。一部改定の目的は、「本留意事項の全部改定から年数が経過し、景品表示法及び健康増進法上問題となるおそれの表示への考え方について、より明示的に示すことにより、事業者の適正な広告活動に資するものとする」とされています。以下に、主な改定内容の部分について引用してみたいと思います。

主な改定について(新旧対照表より)


1) 改正により修正または補足されたもの(一部を抜粋)(赤文字下線が改定箇所)

◆明らか食品について、本留意事項の対象となる旨の追記
健康増進法第65条第1項は、錠剤やカプセル形状の食品のみならず、野菜、果物、調理品等その外観、形状等から明らかに一般の食品と認識される物を含め、食品として販売に供する物1に関し、健康保持増進効果等について虚偽誇大な表示をすることを禁止している。

◆「表示」の該当性に係る留意点を補足
・特定の食品や成分の健康保持増進効果等に関する広告等に記載された問合せ先に連絡した一般消費者に対し、特定の食品や成分の健康保持増進効果等に関する情報が掲載された冊子とともに、特定の商品に関する情報が掲載された冊子や当該商品の無料サンプルが提供されるなど、それら複数の広告等が一体となって当該商品自体の購入を誘引していると認められるとき、
・ 特定の食品や成分の名称を商品名やブランド名とすることなどにより、特定の食品や成分の健康保持増進効果等に関する広告等に接した一般消費者に特定の商品を想起させるような事情が認められるとき

◆アフィリエイト広告の表示主体性に係る留意点を補足
このようなアフィリエイトサイト上の表示について、広告主がその表示内容を具体的に認識していない場合であっても、広告主自らが表示内容を決定することができるにもかかわらず他の者であるアフィリエイターに表示内容の決定を委ねている場合など、表示内容の決定に関与したと評価される場合には、広告主は景品表示法及び健康増進法上の措置を受けるべき事業者に当たる。(中略)必要がある。

2) 改正により新規に追加されたもの(一部を抜粋)

◆健康の保持増進効果に係る例示の追加
(1) 「健康の保持増進の効果」
ア 疾病の治療又は予防を目的とする効果:「コロナウイルスの予防に」、「認知症予防」の追加
イ 身体の組織機能の一般的増強、増進を主たる目的とする効果:「アンチエイジング」、「細胞の活性化」、等の追加
ウ 特定の保健の用途に適する旨の効果:「体脂肪を減らすのを助ける」等の追加
エ 栄養成分の効果:「ビタミンDは、腸管でのカルシウムの吸収を促進し、骨の形成を助ける栄養素です」の追加
(3) 「健康保持増進効果等」を暗示的又は間接的に表現するもの
ア 名称又はキャッチフレーズにより表示するもの
「妊活」、「腸活」、「スリム○○」、「減脂〇〇」、「デトックス○○」、「カラダにたまった余分なものをスッキリ」の追加
エ 身体の組織機能等に係る不安や悩みなどの問題事項を例示して表示するもの
「最近、体力の衰えを感じるのは、○○が不足しているせいかもしれません。」、等の追加

◆表示された効果と実証された内容が適切に対応していない例示を追記
例:痩身効果を標ぼうする商品に関し、商品を用いたヒト試験の報告書が提出されたが、内臓脂肪や体重の減少について、実証された内容と表示された効果が著しく乖離していた。
例:特段の運動や食事制限をすることなく摂取するだけで痩身効果が得られることを標ぼうする商品に関し、商品を用いたヒト試験の報告書が提出されたが、ヒト試験の被験者に対して運動や食事制限の介入指導が行われていた。等の追加

◆機能性表示食品事後チェック指針の広告パートの考え方を追記
(2) 機能性表示食品
ア 届出内容を超える表示
例:届出表示の内容が「肥満気味の方の内臓脂肪を減らすのを助ける機能性がある。」であるにもかかわらず、表示全体から、あたかも、特段の運動や食事制限をすることなく、誰でも容易に腹部の痩身効果が得られるかのように表示すること
エ 表示の裏付けとなる科学的根拠が合理性を欠いている場合
なお、機能性表示食品については、「機能性表示食品に対する食品表示等関係法令に基づく事後的規制(事後チェック)の透明性の確保等に関する指針」に景品表示法上問題となるおそれのある広告その他の表示として虚偽誇大表示等に当たるおそれのある考え方が詳細に示されているので、参照されたい。

◆「健康保持増進効果等」の例示を追記
2 保健機能食品以外の健康食品(いわゆる健康食品)において問題となる表示例
(1) 解消に至らない身体の組織機能等に係る不安や悩みなどの問題事項等の例示
健康食品が有する健康保持増進効果等では解消に至らない疾病症状のような身体の組織機能等に係る不安や悩みなどの問題事項を例示して表示すること(中略)。また、健康食品が有する健康保持増進効果等ではおよそ得られない身体の組織機能等の変化をイラストや写真を用いることなどにより表示すること(中略)。
(4) 最上級又はこれに類する表現を用いている場合
(中略)例えば「ダイエット部門売上No.1」、「顧客満足度ランキング第1位」などと強調する表示(いわゆる「No.1表示」)が行われることがあるが、その商品等の内容の優良性又は取引条件の有利性を表すNo.1表示が合理的な根拠に基づかないなど、事実と異なる場合(中略)。
(5) 体験談の使用方法が不適切な表示(赤文字下線部分の追加)
また、「個人の感想です」、「効果を保証するものではありません」、「軽い運動を併用した結果です」等の表示をしたとしても、虚偽誇大表示等に当たるか否かの判断に影響を与えるものではなく、本件商品に含まれる成分の効果を強調する表示や、体験談等を含む表示内容全体から、当該商品に健康保持増進効果等があるものと一般消費者に認識されるにもかかわらず、実際にはそのような効果がない場合(中略)。

◆打消し表示に係る留意点を補足
体験談において健康食品の効果に言及されている場合において、一般消費者の誤認を招かないようにするためには、当該体験談を表示するに当たり事業者が行った調査における①体験者の数及びその属性、②そのうち体験談と同じような効果が得られた者が占める割合、③体験者と同じような効果が得られなかった者が占める割合等を明瞭に表示することが推奨される。

今後の予定について


 2022年9月7日までの意見募集期間ののち、結果の公示を経て、12月1日には公表される予定です。健康や機能性に関する強調表示をされている食品を取り扱いの方には重要な改定になると思われます。まずは意見募集の一部改定案について、事前に確認しておかれるとよいと思います。


メールマガジン配信登録

こちらのブログに毎月投稿している食品表示に関するニュースやセミナー情報を、ご登録されたメールアドレス宛に送付させていただきます。

関連サービス

食品表示コンサルティング:原材料及び添加物の適合性検証、容器包装への食品表示案の適合性検証
配合表等の規格書をもとに、原材料及び添加物の国内または海外各国における使用基準との適合性を検証します。また原材料名やアレルゲン、栄養成分等の表示案と表示基準との適合性を検証します。

「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」の啓発チラシ・ポスターが発表されました


 先月のことではありますが、消費者庁が「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」の啓発チラシ・ポスターを同庁ウェブサイト上で発表しています。合わせて「10類型イラスト」も掲載されていますので、今回のコラムはこれらを取り上げてみたいと思います。

 啓発チラシ・ポスターは、2022年6月22日に発表されています。消費者向けに作成されたものではありますが、具体的な表示例もあることから、食品を製造する方にとっても同ガイドラインの理解に役立つと言えると思います。ただし、この啓発チラシ・ポスターには「片面」版と「両面」版の2種類があり、使用されているイラストの内容に少し違いがあります。まずは記載された3つの例より分かることを整理したいと思います。

啓発チラシ・ポスター(片面)

啓発チラシ・ポスター(片面)


啓発チラシ・ポスター(両面)

啓発チラシ・ポスター(両面)

  1. いちごジュースの例
    • 何を添加していないのかが不明確な場合は、ガイドラインに抵触するおそれがある。
    • 例1として、着色料や着色料と類似機能をもつ原材料・添加物を使用していない場合は、「着色料無添加」等と表示できる。(ただし、クランベリー抽出エキスなどは「着色料と類似機能をもつ原材料」に該当する。)
    • 例2として、『ジュースの赤色はいちごそのものの色です』等と表示できる。
  2. ドーナツの例
    • 人工甘味料不使用の表示は、ガイドラインに抵触するおそれがある。
    • 例1として、甘味料や甘味料と類似機能をもつ原材料・添加物を使用していない場合は、『甘味料不使用』等と表示できる。(ただし、カンゾウ抽出物などは「甘味料と類似機能をもつ添加物」に該当する。)
    • 例2として、『ラカンカという植物から抽出した甘みを使っています』等と表示できる。
  3. おにぎりの例
    • 酸化防止剤を使用した食品に「保存料無添加」の表示は、ガイドラインに抵触するおそれがある。
    • 例1として、保存料や保存料と類似機能をもつ原材料・添加物を使用していない場合は、『保存料無添加』等と表示できる。(ただし、酸化防止剤やpH調整剤などは「保存料と類似機能をもつ添加物」に該当する。)
    • 例2として、『保存効果を持たせるため、酸化防止剤を使用しています』等と表示できる。

 なお、この啓発チラシ・ポスター内では、例1(不使用表示)と例2(同一機能・類似機能を有する原材料又は食品添加物)が共に明示される可能性までは言及されていません。

 2022年11月頃、啓発チラシ・ポシターの内容に修正がありました。主な修正点は、以下のとおりです。

  • いちごジュース 例2『ジュースの赤色はいちごそのものの色です』を削除
  • ドーナツ 例2『ラカンカという植物から抽出した甘みを使っています』を削除
  • おにぎりから「※酸化防止剤やpH調整剤など」を削除

 次に、「10類型イラスト」の資料にも具体例が掲載されているものがありますので、こちらに抜粋してみたいと思います。


 おにぎりの例では、「日持ち向上効果が期待されるグリシンが使用されている」食品に、「保存料無添加」と表示することは、類型4(同一機能・類似機能を持つ食品添加物を使用した食品への表示)に該当するとされています。ガイドラインの説明では『日持ち向上目的で保存料以外の食品添加物を使用した食品に、「保存料不使用」と表示』のみであったことから、具体的な例としてグリシンについては注意が必要である(保存料と類似機能をもつ添加物に該当する)ことが分かります。

 また白だしの例では、「アミノ酸が主成分である酵母エキスが使用されている」食品に、「調味料(アミノ酸等)無添加」と表示することは、類型5(同一機能・類似機能を持つ原材料を使用した食品への表示)に該当することが分かります。ガイドラインの説明では『原材料として、アミノ酸を含有する抽出物を使用した食品に、添加物としての調味料を使用していない旨を表示』のみであったことから、具体的な例として酵母エキスについては注意が必要である(調味料(アミノ酸等)と類似機能をもつ添加物に該当する)ことが分かります。

 啓発チラシ・ポスターや「10類型イラスト」より、添加物不使用に関する表示をしようとする際に注意すべきポイントは「何が無添加なのか、何が使われているのかを明確にする」ことであるといえます。今後の表示の見直しに向け、以下の参照URLより一度確認されておかれるとよいと思います。


メールマガジン配信登録

こちらのブログに毎月投稿している食品表示に関するニュースやセミナー情報を、ご登録されたメールアドレス宛に送付させていただきます。

関連サービス

食品表示コンサルティング:原材料及び添加物の適合性検証、容器包装への食品表示案の適合性検証
配合表等の規格書をもとに、原材料及び添加物の国内または海外各国における使用基準との適合性を検証します。また原材料名やアレルゲン、栄養成分等の表示案と表示基準との適合性を検証します。

“くるみ”のアレルゲン表示、推奨から義務化への動きについて(その2)~令和3年度即時型食物アレルギーによる健康被害に関する全国実態調査報告書~


 2022年6月6日に開催された第67回消費者委員会食品表示部会において、”くるみ”のアレルゲン表示の義務化についての見通しが発表されました。また、その背景となった「令和3年度即時型食物アレルギーによる健康被害に関する全国実態調査報告書」について、あわせて取り上げてみたいと思います。

ポイント

  • 今回調査(2020年)より、木の実類が小麦を抜いて主要3大原因食物の1つとなった
  • 木の実類の中でもくるみの増加が著しく、次いでカシューナッツが増加している
  • くるみを義務表示対象品目へ指定する改正案は、今年度内に諮問される見通し

これまでの経緯について


 消費者庁が「くるみの義務表示対象品目への指定」の方針を公表したのは、2019年7月5日に開催された第56回消費者委員会食品表示部会においてです。当時の調査(「2018年度即時型食物アレルギーによる健康被害の全国実態調査」)の結果をとりまとめた報告書において、過去2回と比較して、アーモンドとくるみの症例数が増加していたことが背景にあります。
 その後、アーモンドは同年(2019年)9月に推奨表示品目に追加され、くるみについては「今回の症例数が一過性のものでないかの確認が必要」「義務表示対象品目に指定する場合、実行担保の観点から、試験方法の開発と妥当性評価が必要」と検討課題が整理されました。また、その後2021年2月より始まった「食物アレルギー表示に関するアドバイザー会議」において、調査などの準備と検討が進められました。
 そして調査の結果を受け、くるみの義務表示対象品目への指定時期について、具体的な目標(今年度内の諮問を目指す)が示されたという経緯です。

今回調査について


 第67回食品表示部会資料「アレルギー物質を含む食品の表示について」において、今回の調査の概要が以下のとおり整理されていますので、その一部をこちらに抜粋します。

調査方法

  • 調査対象は“食物を摂取後60分以内に何らかの反応を認め、医療機関を受診した患者”とし、食物経口負荷試験や経口免疫療法(OIT)により症状が誘発された症例は調査対象としていない。
  • 調査期間は令和2年1月から12月で、3か月毎にはがきを郵送する方法で行い、はがきでの報告又は要望に応じてメールでも報告を受けた。

調査対象
合計6,677例 ※なお、報告のあった症例のうち、原因物質が特定されていない414例、原因物質が食物以外のもの83例(アニサキス70例、ダニ13例)、年齢性別や治療・転帰、初発/誤食が不明な症例やOIT時の症例100例を除外し、6,080例を解析対象とした。

原因食物
鶏卵2,028例(33.4%)、牛乳1,131例(18.6%)、木の実類819例(13.5%)であった。前回の調査まで原因食物の上位3品目は鶏卵・牛乳・小麦であったが、今回の調査では木の実類の割合が増加し、第3位となった(前回8.2%、第4位)。木の実類の内訳は、くるみが463例で最も多く、以下、カシューナッツが174例、マカダミアナッツが45例であった。

ショック症状
ショック症状を引き起こした原因食物の上位3品目は、これまで鶏卵・牛乳・小麦であったが、木の実類の割合が増加し、第3位となった(前回12.8%、第4位)。木の実類の内訳としては、くるみが58例で最も多く、単独では落花生46例より上位であった。次いで、カシューナッツが30例であった。

考察と結論


 同じく、第67回食品表示部会資料「アレルギー物質を含む食品の表示について」において、考察と結論が以下のとおり整理されています。

木の実類の増加傾向について2005年以降の傾向をみると、上位品目の鶏卵・牛乳・小麦がほぼ横ばいであるのに対して2014年以降、木の実類は増加している。

木の実類の増加傾向について2005年以降の傾向をみると、上位品目の鶏卵・牛乳・小麦がほぼ横ばいであるのに対して2014年以降、木の実類は増加している。

木の実類の内訳をみると、クルミの増加が著しい。

木の実類の内訳をみると、クルミの増加が著しい。

  1. 今回の調査件数は6,080例であり、前回(4,851例)に引き続き増加傾向であった。
  2. 前回調査(2017年)まで原因食物の上位3品目は鶏卵・牛乳・小麦であったが、今回の調査では木の実類の割合が増加し、小麦を抜いて主要3大原因食物の一つとなった。
  3. 木の実類の中でもくるみの増加が著しく、次いでカシューナッツが増加している。
  4. 初発例の原因食物では、0歳群は鶏卵、牛乳、小麦の順であったが、幼児期、学童期では上位3位以内に木の実類が入っていた。
  5. 即時型食物アレルギーの原因食物としての木の実類の増加は一時的な現象ではない。

 以上より、くるみについて「今回の症例数が一過性のものでないかの確認が必要」とされていたところ、「くるみの増加が著しく、また一時的な現象ではない」と考えられることから、義務表示となる特定原材料に追加される方針になりました。

今後の予定について


  消費者庁は、少なくとも今年度内を目標に、消費者委員会に対し食品表示基準の改正にかかる諮問を行う予定としています。また以前に検討課題とされていた「試験方法の開発と妥当性評価」については、来年度には完成する目標で現在開発を進めているとされていることから、2023年3月末までにくるみの表示義務対象品目へ指定する食品表示基準改正がなされる予定であると推測することができるかと思います。
 食品表示の業務に関わる方には、それまでの間に今回の調査結果報告書に目を通しておかれることをお勧めしたいと思います。くるみ以外にも、カシューナッツの増加についても再確認することができるほか、初発と誤食のケースの割合や、誤食のうち食品表示ミスのケースの割合についても再確認することができます。今後の確認業務に活用していただければと思います。


メールマガジン配信登録

こちらのブログに毎月投稿している食品表示に関するニュースやセミナー情報を、ご登録されたメールアドレス宛に送付させていただきます。

関連サービス

食品表示コンサルティング:原材料及び添加物の適合性検証、容器包装への食品表示案の適合性検証
配合表等の規格書をもとに、原材料及び添加物の国内または海外各国における使用基準との適合性を検証します。また原材料名やアレルゲン、栄養成分等の表示案と表示基準との適合性を検証します。